「一定の法律の知識は要求されるので注意(映画内で触れられていない結末等、補足入れています、ネタバレあり扱い)」サントメール ある被告 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
一定の法律の知識は要求されるので注意(映画内で触れられていない結末等、補足入れています、ネタバレあり扱い)
今年240本目(合計891本目/今月(2023年7月度)26本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。
※ おことわり: 本映画の趣旨として、「描写が中途半端で終わる」という事情があるため、大阪市立図書館等で調べた内容を追記しているものであり、個人攻撃(特に、被告の女性に対するもの)を意図したものではない点は書いておきます。
さて、こちらの映画です。
ほぼほぼ9割裁判所での話になりますし、そこで交わされる内容は、ある罪に問われた(この点、あとで補足)女性との第一審を描いた映画です。
その結果、一定程度(日本の刑事ドラマ等を超える程度)の法律の知識(ほぼ、刑法と刑事訴訟法)の知識が要求されるのが厳しいです。映画内では明確に法律ワードこそバンバン飛んできませんが、暗黙のうちに出てきたり前提にされている部分もあります。ただこれを学習する機会があるのは司法試験(予備)だけで、そこまでの知識があるリアル視聴者は超レアで、どういっても行政書士資格持ち(行政事件訴訟法のみ学習。要は、裁判所の手続きに関するルールの一類型を把握している、というもの)が事実上上限になるんじゃないかなぁ…といったところです。ただ、「深い理解」をするならそれが必要であるだけで、法律ワード「それ自体」はほとんど飛んでこないので、理解うんぬんを別にすれば、一応にも「みやすい」映画ではあります(これが「極端に」厳しかったのが「シャイロックの子供たち」で、抵当権抹消だの何だのマニアすぎる語が飛んできてビビった…)
映画の描写としては、どうしても存命している人物である以上、あまり深くあれこれあることないことかけず、妙なところで終わる事情もあり、その事情を知らないと、本当に珍妙なところで終わるので???な展開になりかねず、ここはうーむといったところです。最低限必要な知識だけは後に入れておきます。
採点対象として気になったのは以下の通りです。
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(減点0.3/タイトルがやや不正確)
・ 「日本でみる場合」、民事訴訟の相手方は「被告」、刑事訴訟の相手方は「被告人」であり、この2つは違います(「人」のありなし)。本当に細かい点なのですが、日本で見る場合、刑事訴訟法を想定してみるしかないため、この違いは民事で争うのか刑事で争うのかの理解のハマりにつながるので(ただ、展開的に民事でないことは明らか)、少し工夫が欲しかったです。
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(減点なし/参考/映画のそのあとのお話) ※ 情報ソースは大阪市立図書館ほか
映画内ではおそらく個人の尊厳を尊重して結末がぼかされていますが、当時のニュース報道、新聞報道(日本ではほとんど放映されていない)によると、2016年6月に「心理プログラム受講を義務付ける懲役20年」の判決となっています(海外の新聞ほか)。
※ 日本では、同じ類型の事件は、主に保護責任者遺棄致死になりますが、この類型で無期懲役になることが考えられず(ただ、フランスでは無期懲役がありえたとのこと。当時の刑法)、そこは日仏の違いなのかな、とは思えます。
判決文(第一審で確定?)は読もうと思えば読めるようですがフランス語なので当然厳しいです。ただ海外でも注目を集めた事案で、「アフリカからの渡仏者で、支援を得ることができなかった」「被告人の発言に多少なりとも不自然な点があり、弁護士が主張するように何らかの教育的プログラムを受けさせるのが適切」という点が判決に考慮されたようです。
また、第一審の裁判所等の判断によれば、「渡仏した事情があり、会話において、会話で使う語彙とレポート等で使用する語彙の区別がついておらず、裁判官も一般市民(いわゆる、日本でいう裁判員制度のそれ)も理解が困難だった」(このことは、渡仏に限らず、日本語学習者でも生じえます)といった「裁判において正常な主張ができなかった可能性がある」点が考慮された一方、「フランスの地域ごとの潮の満ち欠けの表(日本では、理科年表等が該当)を所持していた」点が認定されていて、上記のような判決になったようです。
なお、映画と実際の裁判では当然登場人物が異なり、映画内では女性の方が妙なまでに多いのですが、この点は「たまたまであり、何らかの意図があるものではない」ようです(仏版公式サイト等に言及あり)。