宮松と山下のレビュー・感想・評価
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二度目の鑑賞で理解できました
WOWOWでの放送の録画を一度目に観た時は集中して観ることが出来ず星1かなーと思っていたのですが、他の方の感想を観て翌日もう一度観たら理解出来ました。主公が餃子包んでる時の「自分を捨てて作業出来るのが良いですね。」のセリフが好きです。途中途中で現実なのか、お芝居なのか分からなくなる場面がありました。
本編。
記憶を無くした男の記憶をなくしてからの生き様とその理由。
ストーリーと言うよりも、今ここのシーンはエキストラとしての仕事なのか本編のお話なのかをうまーく覆して来るあたりに面白さを感じました。
とても面白かったです。
かなりマニアックな映画・・・
映像作品としては素晴らしいと思うし、香川照之の演技力の凄さが際立った映画。諸々あった中での作品で不運だったが、社会性での問題と作品の中での存在感は別物で、映像の中の香川は際立っている。若干演技にフォーカスした分映画的時間での間に冗漫のそしりが入る余地が生まれてしまう危うさがあるのが残念。
面白さを見つけた喜び
映画が始まってしばらく経っても意味が解らない。これはいったい何を描いているのだろう?
「エキストラだけでは食べていけないからロープウェイの仕事もしている」主人公の「宮松」の目的とは何か?
様々なシーンが入り乱れるので、時代劇以外のシーンでは「現実」との区別が面倒くさい。
しかし、宮松を訪ねてきたかつてのタクシードライバー時代の同僚「谷」によって、宮松は山下であり、タクシー会社を失踪後の記憶がないことがわかる。
これは本人に記憶がないので、認識もないことになる。だから記憶がないことは本人にとっては、現時点で何か問題になることはないということだ。つまり彼にとっては目的など存在しない。物語は逆に、「失った記憶」に焦点が当てられることになる。
このあたりのリアルな描き方はなかなか素晴らしい。
谷は、12歳下の妹「愛」がいることを伝え、妹に連絡する。そして新横浜にやってきた「山下」を、実家傍まで送迎した。
妹を見ても、実家に戻っても記憶はよみがえってこない。
妹はそんな兄に、昔よく吸っていた煙草のことを話す。
兄は外に出かけタバコを買い、その場で吸う。
やがてじっくりと昔の出来事がよみがえってきた。
記憶を失った理由。
喧嘩の動機。
誰と喧嘩したのか。
彼が言った言葉。
実家に戻ってからもタバコを吸い続けながら、山下は過去をたどりながら自分自身どうあるべきか思案する。
その様子を帰宅した妹が見つめ、そしてベランダの隣に座る。
兄は相変わらず他人行儀な口調で話すが、妹には記憶がよみがえったことが、彼の眼つきから察知する。
兄は元の職場へと帰ってしまった。
「エキストラ」
記憶をなくした「宮松」が選択した職業がエキストラだったのは、彼が無意識ながらも「誰かの人生の良きエキストラになろうとしたからではないのか?」と、記憶が戻った「山下」は考えたのだろう。誰とは愛のこと。
そうであれば、それこそが「私」のいる場所だ。
この作品は、
両親の事故死によって、血のつながっていない12歳離れた妹の父親代わりと称しながらも妹を好きになってしまう兄。
そのことで近づく男をすべて蹴散らしてきた兄に、会社の同僚が「いつまで経っても愛ちゃんは幸せになれない」と突っかかってきたことで頭を打って記憶がなくなり、そのままどこかへ行ってしまった。
そして記憶をなくした男が無意識で始めたエキストラこそが、本当は愛に対してしなければならなかったことだったと気づく物語だ。
本心ではそれに気づかぬふりをしていた。いみじくも同僚にそれを言い当てられ、同時に頭を打ったことで記憶をなくした。
「本当はそうであってはならなかった」主人公は当時大きな悩みと葛藤していたのだろう。
記憶をなくしたからこそ、「それ」が行動に出たのだ。「エキストラ」
山下にとって、再開することになったエキストラの仕事は、きっと以前よりも素晴らしいパフォーマンスになるだろう。
タイトルには、記憶のあるなしが隠されている。同じエキストラ 山下にはきっと「夢」が芽生えたのではないだろうか?
しっかりと考えさせてくれるいい作品だった。
もう一捻りほしかった
予告編を見て面白そうだったため視聴。
着想が素晴らしいが、最後にもう一捻りあるかと思っていたため、やや唐突な終わり方だった気がする。そして、記憶を失った背景ももう少し深い内容だったらなぁと。
でも、安定の尾美としのりと、最後のタバコのシーンは良かった。
じっくり見て下さい。
Amazonプライムで何の先入観もなく見始めました。
冒頭でお寺の瓦を長回し。
この映画はじっくり見てくださいねってメッセージかな。
途中では実生活かと思いきや、映画の撮影であったりする。
観客を驚かす意図はなく、宮松の実像と虚像を織り交ぜて山下への下準備。
そして妹が現れ、宮松から徐々に山下へ移り変わっていく。
香川照之ってホントに上手い役者だと思う。
彼の佇まいや声色などの微妙な変化をしっかり楽しみました。
「お兄ちゃんは思い出したのよ」が切ない。
見ごたえ十分
いい作品です。
まず俳優陣がどなたもいい演技で見ていて満足します。
香川照之さんはTVでみるとなんて鬱陶しい俳優だろうと、好きではなかったのですがこの作品を見て少し見方が変わりました。
セリフや顔芸に頼らず、主役の人物の心の動きが丁寧に表現されており共感できました。
全体的にセリフは少ないのですが、その少ないセリフのやり取りの合間の表情や動きで物語が伝わって来る心地よさがありました。
フランス映画のような余韻もまた心地よくとても満足しました。
台詞の1つ1つに意味を感じた
静かな映画でしたが、途中途中の『あ、撮影か』が心地よく、またミステリー要素もあるので一気に見終わりました。
尾美としのりさんが出てくると、つい疑った目で見てしまう(笑)
味覚嗅覚って凄い刺激なんですね。吸いなが記憶が蘇ってくる様は、記憶障害でなくとも普段誰でも体感している事だから、観ていてその感覚が伝わった。
ラストの庭先での山下が宮松のふりしている様がせつなくて泣けた。
裏『PERFECT DAYS』
監督集団「5月」という関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦の3人の長編デビュー作だそうです。監督・脚本・編集を3人で共同でしているという珍しいタイプの映画作りですね。
面白いという噂は耳にしていたので、配信で放送されていたので早速鑑賞しました。
確かに面白かったです。私も大好きなタイプの作品でした。でも、かなりの映画好きが面白がる作品の様にも思えました。そして、面白い“だけ”の作品なのかも知れないとも思いました。
いや、否定している訳ではありません。映画は面白ければ“面白いだけ”でも十分なのです。テーマ性やらメッセージを大上段に振りかざされるよりも、なんとなく含みがある程度の方が鑑賞後感も良くあれやこれやと考える楽しみがありますしね。
私が思うに本作は基本的にはサスペンス・ミステリーのジャンル映画であるのですが、一見そんな風に感じない(もっとアート系人間ドラマ的な)雰囲気で始まり、独特のスタイルというか語り口であり、非常にトリッキーな作品作りで観客を映画内に引き込みます。それが非常に新しく巧みであり観客が惑わされる部分でもあります。
なにを言ってもネタバレになってしまうのですが簡単な粗筋を書いておくと、主人公は現在映画などの端役エキストラをしていて、他に生活の為にアルバイトもしている50代位の記憶をなくした男で、あるキッカケで過去が少しずつ明らかになって来るというのが大枠のストーリーです。なので、仕事と現実を非常に曖昧に描き観客を敢えて混乱させます。
作品の方向性としては、現在の主人公の姿を描きながら、記憶の喪失した過去に一体何があったのか?という事になるのですが、本作を見ながら私はつい最近見た『PERFECT DAYS』を思い出していました。全く目指す地平も方向性も違う作品なのに、妙に近似性を感じてしまいました。
特に『PERFECT~』と本作の主人公性格というよりも性分として、病的に几帳面で規則正しく自分の世界観を崩したくない性質が見受けられて、そこにこそ幸福や安らぎを感じるタイプの人間であり、それを崩されることを何よりも嫌うタイプであり、それは一見(建前的には)社会的にも見えるが、現実の人間社会に対しては全く適応していない種類の人間でもあり、そういう人間を表現するのに『PERFECT~』でのラストの役所広司の表情と、本作での香川照之の表情の差を見比べてみると、人間の複雑さや深遠さが垣間見れる様な気がしました。
なので、好き嫌いはあれど『PERFECT DAYS』の綺麗ごと(理想論)にも一理あるし、本作の辛辣さ(現実論)にも一理あるし、どちらにも共感できる。だからこそ映画は面白いのでしょうね。
87分間釘付け
Netflix新作。
この映画ほど、「言わぬが華」
「秘するが華」という言葉が
似合う作品はない。
だからストーリーは一切書かない。
緊張感がずっと続く脚本、映像、
主役を演じる香川照之の無言の饒舌。
以前僕の脚本で主人公を演じてもらった
津田寛治のクールな怖さ。
クリエイター3人からなる監督集団「5月」の
デビュー作だそうだが、オムニバスではなく
3人でひとつの映画を作るなど、今まで
あまり聞いたことがない。
海外の映画祭で評判なので、その評だけご紹介。
「独創的で楽しく、興味深い発見が散りばめら
れている。香川照之が、ある種カリスマ的な
主人公を演じて見事。
この映画祭で最も驚かされた作品の一つ」
――No es cine todo lo que reluce
「視覚的な驚きを与えながら、感情や哲学的な考察を
引き起こすようなアイデアにあふれている」
――El Contraplano
「今年のサンセバスチャン国際映画祭において、
もっとも驚かされた作品だった。
主演の香川照之は非常に素晴らしい俳優だと思った。
なかなかお目にかかれない独特な作品だ」
――ホセ=ルイス・レボルディノス
(サンセバスチャン国際映画祭ディレクター)
いち俳優の演技だけでここまで魅せるか。
もともと香川照之さんは好きでしたが、この作品での演技は群を抜いている。
まさに香川さんの表情一つ、一挙手一投足に見入ってしまい、それだけでこの作品が完成されていると言っても過言ではない。
また、映画やドラマでわりと使い古されたパターンの物語を、演出の仕方一つでこんなにも意外性に富んだ映像作品にできるというのは驚いたし、思いがけず良い作品に出会えて幸運だった。
明から陰に
ロープウェーの運転係とエキストラ俳優を仕事にしてる宮松は、記憶喪失で自身の本名もわからなかった。ある日撮影所に、かつての同僚だったという谷が訪れる。12年前タクシー運転手だった山下は、義理の妹と暮らしていて。
序盤は、そこも映画だったのか、とだまされるところがコミカル。しかし後半は、真相が明るみになり物語に陰を落とす展開。後味はあまりよくはないです。
俳優陣の何気ない演技が、みんな良かった。津田寛治がああいうメガネをするとちょっと怖いです。
演出と伏線回収が秀逸
2022年劇場鑑賞93本目 優秀作 71点
限られた演技派でしか演じることが出来ない様な、一人二役且つ役者役×記憶喪失の困難な状況も、巧みに魅せた香川照之を堪能する作品
どうしても映画なのでいくらエキストラ役でもスポットが当たってしまうので待遇としてはエキストラ以上の出番な気もするが、よくこのテーマを最後まで描けていました
前半にロープウェイがすれ違うカットをいれたり、間を使う描写を何個か用いていて、こちらの想像力で解釈を委ねている作りが当方癖なのでポイント高い
劇場鑑賞から9ヶ月ほど経過してのレビューなので、あまり記憶に残っていないので、配信でまた観て他にも良かった点をまとめたいと思います
是非
上映時間は短いはずが長く感じられた
上映時間は87分とかなり短い作品ですが長く感じられました。
最初の瓦屋根を写すシーンが無駄に長くてその時点で駄目です。監督さんは冒頭の掴みの重要性を理解していないのでしょうか。
主演の香川照之さんが端役専門の役者さんを演じていますが、やはり上手です。
物語は地味と言うか起伏に乏しいというか、そんなに面白い話ではないです。
どこから宮松どこまで山下?
時代劇のシーンは撮影風景だと分かるけど、焼き鳥屋以降、何度も騙された。もしかしたら、全編が宮松劇場なのかもしれない。
過去に何があったのか、兄妹の関係もはっきりとはさせずに、視線や会話から察してくれという、投げっぱなし感は嫌いじゃない。
映画音楽は、そのシーンを表現するのに必要不可欠だと思うけど、暗く不安定なBGMが、この不穏な作品をより引き立ててザワザワする。
その日、彼は宮松となる
なるほど。地方映画祭のインディーズ作品にありそうな内容で自分は好きでしたが、そういう性質上やっぱ長い、かな苦笑
それを除けば虚実紛々な展開と香川照之の芸達者振りを眺める良い作品になっております。しかも、中越典子・津田寛治・尾美としのり(最近良く会う)の3人の素晴らしさ。特に中越さんは久々に拝見しましたが、すっぴんメイクでのあの何とも言えない魅力はゾクゾクしました。
思い返す程に好きになってきそうな不思議な映画なので、劇場で記憶に留めて置くのは「吉」だと思われます。
映画は名もなき人々のたゆまない努力によって作られている。
望みは、希望にも絶望にも成り代わる
この映画、めちゃくちゃ面白い。香川照之が主演ということで、なんの情報も入れずに見たのだが、すごく良かった。こういう物静かで余白が多い映画、苦手どころか嫌いだったんだけど、何故だか本作は違った。
やはり、日本の映像業界には香川照之が必要だ。
「半沢直樹」「99.9」「七つの会議」などの作品で、主人公を支えたり、悪役として立ちはだかったりしてきた香川。ものすごいインパクトを残すがあまり今まで感じてこなかったが、彼の映画主演作って見たことないかも。どうやら、14年ぶりらしい。さすがの演技力なのだけど、脇役として活躍してきた今までとは、一風変わった立ち振る舞い。あの強烈な香川照之はどこかに消えてしまった、と思うほどにエキストラの役を好演。言葉の運び方、手足や顔の震え、ぎこちない笑顔など、改めて凄い役者なのだと思い知らされる。唯一無二の表現力。彼にしか出せない味。今回のことで表舞台から姿を消すなんて、そんなのたまらなく悔しい。大打撃だ。本当に素晴らしい俳優です。。。
エキストラに焦点を当てた映画なわけだけど、演出の仕方が巧みすぎて、感情が色んな方向に揺さぶられる。最初は単純に「エキストラの裏側ってこんな感じなんだー」という楽しみ方をしていたのだけど、現実と映画の壁が分からなくなった時、すごく驚いてクスッと笑える。しかし、更にその壁が高くなると、今度は途端に悲しくなる。12年前以前の記憶を失っている宮松が、役者として演技をする時、誰だかわからない〈自分〉を演じる時の喪失感の表現力がこりゃまた巧み。やっぱり語りたくなるんだけど、香川照之あってこそだなという思いでいっぱい。心動かす演出の秀逸さもすごい。
セリフが少なく、音楽すらも流れないシーンが多くあるんだけど、宮松が頭の中で抱える空虚な気持ちを観客にも分からせているのだと思う。香川照之の演技力と共にこのような手法で宮松という不思議なキャラを描く。物語としてもより一層深化していくし、こういうところから只者じゃないぞこの映画は、ってのを感じさせる。空白の時間、周りは何してたんだよ!なんで名前変えれてるんだよ!とは思っちゃうけど、それ以上にこの人物が面白くて仕方ない。
色んなエピソードやキーアイテム、記憶喪失でエキストラ。これらを完璧に活かした着地点。88分という短尺ながらに非常に考え深く見応えのある作品であり、ラスト15分の鳥肌は経験したことの無いものだった。こんな煙草の撮り方があるのか。煙草1つでこんなにも色んな考察ができるのか。誰かに語りたいとかではなく、自分の心の中に残しておきたい物語。
エキストラが主人公の作品であるため、シンプルにこれから映画を見る時の視点が変わるなというのが1つ。そして、もう1つは人は常に役者であるということ。誰しもが自分を演じている。この2つがこの作品で強く感じたことかな...。ちょっと言葉にするのは難しい。とにかく、見てくれとしか笑
すごくすごく不思議な映画体験だった。
間違いなく、今年一考察が面白い作品。人生の糧となるワードや要素がたくさんある。人におすすめするにしてはハードルが高いけど、個人的には大満足でした。香川照之も、監督3人も、表現力にあっぱれ!
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