劇場公開日 2023年3月31日

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「エンターテイメントの誇り」ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エンターテイメントの誇り

2023年8月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

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楽しい

興奮

現在『MEG ザ・モンスターズ2』が公開しているとは言え、昨今頭空っぽにして楽しめる映画がすっかり減ったなぁ、と。
何かと言うと多様性やらユニバースやら、人気シリーズもシリアス&ハード路線を打ち出す。
勿論それらはあって悪くない事だし、本作だって全くの皆無って訳じゃない。異人種同士の結婚、パーティやキャラに様々な人種が混雑。
でもそれらをウリにしているのではなく、あくまで本作は王道も王道のエンタメ路線に徹し、その渇望をたっぷりと潤してくれる。
メッセージやテーマを打ち出した映画もいいけど、そうそう、たまにはこんな映画も見たかった!

RPGの元祖と言われる人気ゲーム。
2001年に一度映画化されているが、見た筈なのにまるで覚えちゃいねぇ。強いて言うなら、メチャつまんなかったような…。
昨今流行りのリブート。そのあるある。一度失敗した作品のリブートは今度は成功する場合が多い。
本作も然り。と言うか、大成功でしょう!
冒険、アクション、魔法、剣、モンスター、仲間、家族…。
RPGゲームと映画が見事に融合した胸踊る冒険ファンタジーへいざ!
もう一度。こんな映画が見たかった!

様々な種族やモンスターが共存する異世界、フォーゴトン・レルム。
エドガンは悪と戦う秘密組織“ハーパー”の一員で、妻と娘と幸せに暮らしていたが、邪悪な魔法族“レッド・ウィザード”に妻を殺されてしまう。遺された娘キーラと荒んだ暮らしを送るエドガンを救ったのは、女戦士のホルガ。良き相棒でキーラにとっても母親代わりとなり、生きる為に盗賊となる。やがて半人前の魔法使いサイモンや詐欺師のフォージも仲間に加わり、裕福や悪どい連中からのみ盗みを行っていた。
フォージの紹介で謎の魔法使いソフィーナからある仕事を持ち掛けられる。“よみがえりの石板”を盗む。それがあれば妻を甦らせる事が出来る…。
が、フォージとソフィーナに嵌められ、エドガンとホルガは投獄。2年後脱獄し、今は領主となったフォージの元にいる娘の取り返しと今度こそ妻を甦らせるべく石板探しの冒険が始まる…。

設定や名称や見始めはちとこんがらがるが、把握したら後はもう。とことん楽しく面白く、テンポも良くて退屈さとは一切無縁。
ゲーム原作ならではのCGを駆使した魔法やダイナミックなアクションも見せ場だが、最たる魅力は愉快なキャラたちだろう。
エドガンとホルガ、再び仲間に加わったサイモン。そこに変身能力を持つ人と人型種族の混種であるドリック。
4人のパーティ・メンバーのやり取りが最高!
お調子者、堅物、ヘタレ、不思議ちゃん。男二人のボケに対し、女二人がツッコミ。
演者もそれぞれの魅力や個性を発揮。クリス・パインは“スタトレ艦長”以来のハマり役で、ミシェル・ロドリゲスはやはり逞しい。『ジュラシック・ワールド』に続いて頼りなさげなジャスティス・スミスに、ソフィア・リリスは『IT/イット』の時とは違うキュートさ。
途中力を貸す聖騎士、ゼンク。超が付くほど真面目過ぎる性格で、皮肉や冗談も通じず、例え目の前に岩があろうとそれを乗り越えて。(←言葉通りの動作で)
娘キーラもキュートで、ホルガの元夫役にアノ人が小サイズながらびっくりビッグゲスト!
敵も一癖ないと務まらない。
裏切り者のフォージ。本来ならメチャ憎たらしいが、ヒュー・グラントが演じた事により絶妙なコミカルさと小憎たらしさ。ひょっとして素ですか…?
凶敵はフォージの相談役として仕えているソフィーナ。演じたデイジー・ヘッドが特殊メイクを施して怪しさとインパクト充分。
私は字幕派だが、本作は吹替で見るとより楽しいと聞き、吹替で鑑賞。人気声優らによる掛け合いや言い回しは終始楽しい。
特に魔法で蘇った死体たちに贅沢な主役級の面々。字幕派のあなたもこのシーンだけは吹替で見て! 私ゃ大笑いしたよ。質問はくれぐれも気を付けて5つ。

CGやアクションの醍醐味は言うまでもなく。
ミシェル・ロドリゲスのさすがのアクション。
サイモンとソフィーナは魔法使いだが、それぞれ善と悪。呪文を唱えて発せられる魔法は、これぞRPG! なかなか真の力を発揮出来ないサイモンの魔法に対し、ソフィーナの魔法は超強力!
個人的にお気に入りのシーンの一つが、ドリックが侵入した城から変身を駆使して脱出するシーン。虫→ネズミ→鳥→鹿と姿を変えて、彼女を追うようなカメラワークと躍動感たっぷりの演出で。
監督のジョン・フランシス・デイリーとジョナサン・ゴールドスタインは『スパイダーマン:ホームカミング』の脚本を手掛けた注目コンビ。このシーンだけでもこのコンビの才とセンスを感じた。

元々ゲームの大ファンだという監督コンビ。その時感じた楽しさが隅々に。
“アンダーダーク”と呼ばれる地下洞窟と、フォージが復活させた“ハイサン・ゲーム”。それぞれ危険な仕掛けがいっぱいのダンジョン。
目的の石板のみならず、冒険クリアの為に手に入れたい“魔法破りの兜”や途中手に入れた“ここ・そこの杖”。魔法アイテムの効力や“手に入れた!”は本当にRPGゲームをプレイしているかのよう。
異世界ファンタジーなので、クリーチャーも沢山。“鳥人間”や“猫人間”などの住人もいれば、行く手を阻むモンスターも。中でも、アンダーダークのドラゴン。空飛び火吹く王道ドラゴンかと思いきや、丸々と太ってゴロゴロ転がる珍しい(?)タイプ。見た目はちょっと可愛らしいけど、結構しつこい…。

キャラやアクションやRPGな魅力満載だけど、何より面白かったのは話や展開。
冒険を続ける過程で、幾つものトラブルや障害にぶち当たる。兜の入手、アンダーダークからの脱出、城への侵入、ハイサン・ゲームの攻略、そして壮大な危機と陰謀渦巻くラストバトル…。
それらを一つ一つクリアしていく。エドガンの頭脳、ホルガの力、サイモンの魔法、ドリックの変身能力を駆使して。
皆の力が一つになった時、最強の魔法となる。
当初はお決まりのようにバラバラ。また一人一人、落ちこぼれだったり劣等感を抱えている。
触発し合って、自分自身を乗り越えて、レベルアップ。
各々の成長と仲間の絆が、コミカルで楽しいだけじゃなく、エモーショナルで熱い。
ネタバレになるので書けないが(別にネタバレチェック付けて書いてもいいんだけど)、石板の使われ方が胸アツ。独り善がりの失われたものより、今の絆。

スカッと痛快。面白かった、楽しかったという言葉以外見つからない。
エンターテイメントの誇り!
このパーティの冒険がこれ一回だけじゃあ勿体無さ過ぎる。
次の冒険の出発はいつ?

近大