ザリガニの鳴くところのレビュー・感想・評価
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サスペンスとしても、ラブストーリーとしても面白みに欠ける
湿地で生きる少女に殺人の容疑がかけられた後に描かれるのは、主として、過去の、少女と2人のボーイフレンドとの恋模様なのだが、これが、どこにでもあるようなありきたりな話で、面白くないし、テンポも悪い。
少女の生き様が描かれる過程で、差別や暴力についての問題提起も、あるにはあるのだが、残念ながら、それほど心に響かない。
ラストで、ようやく、ことの真相が明らかになるが、もともと死んで当然のクズ野郎の案件だったので、納得はしこそすれ、驚きや衝撃は感じなかった。
真相の鍵となる証拠の物件が、なぜ後生大事にしまわれていたのか、その理由も、良く分からない。
それまで、湿地の自然の美しさが散々映し出されていただけに、捕食される側が捕食する側を殺すところもちゃんと描かれていたならば、オチの伏線になって、説得力も増したのではないかと惜しまれる。
美しい映画ではあるが、サスペンスとしても、ラブストーリーとしても、社会派としても、裁判ものとしても、今一つ引き込まれるものがなかった。
家族全員から打ち捨てられた少女
湿地のさまざまな動植物が、目の前に生き生きとして存在する。原作を読んでいる時は、頭の中で想像していたが、その想像を上回る映像がスクリーンに映し出される。生物多様性の宝庫となっている湿地の美しい風景を余すことなく堪能できる。
法廷シーンでは、デヴィッド・ストラザーンが演じるトム弁護士が、検察側の証人が持つ偏見と印象だけの曖昧な記憶を、巧みに反証して法廷の流れを変えていく。そして、最終弁論では、陪審員に向かって滔々と語る。
「湿地の少女という偏見は捨てて、法廷で示された事実だけを基に公平に判断をお願いしたい」
原作を読んでいて、真相がわかった時、呆然としてしまって、その箇所を何度も読み返したり、伏線の張られた箇所を遡って探したりした。映像化されても、衝撃は変わらない。観客の意識はある方向に巧みに誘導されるし、あのタイミングで聞かされるとは夢にも思わない。
湿地に家族全員から打ち捨てられた少女を全力で応援したくなる。そんな物語でございます。
補足
オスを食べるホタルは、北米に生息するフォトゥリス属のメスで、他の種の蛍の明滅を擬態しておびき寄せるらしい。
もしかすると人間は自然界で一番歪な生き物かもしれない。だから“ザリガニの鳴くところ”では生きられないのかも。映画版のキーワードは『ホタル』『自然に善悪はない』。
(原作既読)①映画版には期待していたが、あの豊穣でかつ不思議な小説のダイジェスト版にとどまってしまい、やや期待外れ。
②原作は一言では形容出来ない小説である。一応ミステリーの体裁は取っているが、エコロジー小説のようでもあり、自然の中の人間を描いているようでもあり、自然と人間とを対比しているようでもあり、人間の世界の歪さをそれとなく描き出しているようでもある。このような小説がアメリカだけでなく世界的ベストセラーとなったことにある意味驚く。
③ただ、残念ながら舞台であるノースカロライナ州の湿地帯がどんな処なのか、行ってみない限りは文章ではなかなかイメージしにくい。それで映画版ではそれを目で見せてくれると期待していたが、確かに美しい映像ではあったけれども、それ程感銘を受けなかった。ラストクレジットを見ていると撮影場所は主にルイジアナ州ニューオリンズ辺りのよう。ノースカロライナとルイジアナとでは植生やそこに生きる動物相も違うだろうから残念。でもノースカロライナの海岸部の湿地帯は開発が進んで昔の面影は無いのかな。
④原作では感じ取れるカイヤの圧倒的な孤独感と疎外感とが映画ではそれ程伝わって来なかった。それが想像できれば物語の後半もより理解できるのだが。
人間の世界から孤立させられたカイヤは自然の中で生き、自然界の実相を知る中で彼女なりの生き方、考え方を持つようになる。それが人間の社会の通念と少々異なっていても…
⑤セックスシーンがやたらと多い。チェイスとのモーテルでのシーンは必要だったけれども、それ以外は他に描くことがあったように思う。
⑥カイヤは具象化するのが難しいキャラクターである。そういう意味ではデイジー・エドガー=ジョーンズは頑張っていたと思う。
⑦ハリス・ディキンソンのチェイスは少しイギリス的で上品だったと思う。原作のチェイスはもっと典型的な魅力的かつマッチョのオールアメリカンボーイでかつ甘やかされて傲慢なイメージだったから。
⑧ジャンピンとメイベルはほぼ原作通りのイメージの配役。原作と同じく映画でもカイヤを囲む苛烈な環境の中でほぼ唯一の“温もり”となっている。
⑨パパ役が『Any Day Now』のギャレット・ディラハントだったのはちょっと嬉しい驚き。原作ではハンサムだったとあるのでまぁ順当なキャスティングだろう。また、原作ではママはよく描かれていたが、パパの人物像の輪郭がいまいち掴めなかったけれど、映画版では生身の人間が具体的に演じることで“ああ、こんな感じだったのか”と良く理解できた。
映像が綺麗
最後には心豊かな気持になれる
予告を観る限りでは、ホラーサスペンスだと思っていた。
ところが、犯人捜しの謎解きへの期待は、見事に裏切られる。
ノースカロライナの美しい湿地帯で、ひとりの青年の死体が発見された。
湿地帯でひとり暮らす、「湿地の娘」と呼ばれる女性が容疑者に。
そのセンセーショナルなプロローグで、見事に騙されてしまう。
描かれているのは殺人事件ではない。60年代前半のアメリカの格差社会だ。白人の差別の対象は黒人だけではなかったのだ。白人による白人への迫害。容疑者の女性が受けた人権蹂躙、女性蔑視。女性蔑視を裏付ける男のDV。町の金持ちたちの暴挙と空虚。マイノリティはいつの時代でもマイノリティ。
数々の理不尽と魂の救済が、作品の底にしっかりと流れる。
理不尽に立ちはだかる弁護士役は、『ノマドランド』のデビット・ストラザーン。彼の存在なしでは本作は到底語れない。そして湿地帯の大自然と、そこに育まれた容疑者のコラボが結実。その映像美に予想外に酔いしれる。
最初の期待は裏切られたが、最後には心豊かな気持ちになれる。それは絶対保証できる。
戦慄
原作未読
2時間飽きることなくあっという間の観賞
ミステリーはミステリーなんだけど、一人の少女の成長物語として描写する場面がほとんどなので見易かった。
カイアの逞しい生きざまやジャンピンと奥さんの気遣いに心揺さぶられ
(カイアがしばらく留守にする前に店に立ち寄ったジャンピンの店でのやり取りは、カイアの悲痛な胸の内やジャンピンが心から心配してる苦しさが痛いほど伝わって涙無しには見れなかった…)
かと思いきやチェイスの死の真相をめぐっての緊迫感は続くし目が離せない面白さ。
カイア役の子はアンハサウェイを彷彿とさせる美しさでこれから活躍するんだろうなぁと期待。チェイス役のハリスは今までイケメン好青年の印象が強かったけど、今回は危なっかしいヤバそうな感が滲み出てて最初キングスマンに出てた人とは思わなくてうまいなと思った。
虐待や差別、過酷な環境の中で育った彼女だけど、自然の美しさと愛に支えられて生涯を終えられたと終盤安堵感に包まれてましたが、最後の最後戦慄が走りました。
最後カイアの語りの「補食」という言葉と(自然の中で育ち動物的な本質を知り尽くしてる描写がここで活かされる)テイラー・スウィフトがこの映画のために書き下ろしたという曲がいつまでたっても余韻を残します。
テイトはあれを見つけた時にどんなことを思ったんだろう。
いろんな感情が後をひく面白い映画なのは間違いない!
読んでから観た。 多分、観てたら読まなかったかも・・・。 読んでい...
期待し過ぎたかな
原作は読んでいません。素直に観終わった感想は、”でしょうね”でした。
ドキドキ感や考察はありません。特異な少女との恋愛がメインで流れていきます。
裁判での闘いや判決もあっさりしており、えっ?!まさか・・・これで終わり?
この流れでは、犯人は二択でテイトかカイヤになります。
ラストに期待しましたが、やはり”でしょうね”となってしまいました。
鑑賞後、この映画のことばかり考えてしまいます。
彼女は湿地になった
とても面白い作品でした。
どこをとっても映像が綺麗で、きっと湿地に行きたくなる。
見る人によって解釈が変わってくるラストも良かった。
結局チェイスは誰に殺されたのか。
監督のオリヴァア・ニューマンは「自然の摂理も描いている。(カイアの考え方は)社会の法則と一致するとは限らない」とコメントしている。
きっと、彼女は生きてる間もうすでに、湿地の一部になっていたんだと思う。
そんな彼女の心情は描かれることはなかったけど、彼女の書いた小説の一部と、エンドロールで流れた【Carolina】という曲が、すべてを物語っていたのではないでしょうか。
とてもいい作品でした。
自然と生きる知恵
湿地の生態系についての説明と映像が沢山あるので、自然の中にいるような雰囲気の映画で良かったです。
湿地の中の緑と鳥たち、川の下流の綺麗な海がとても印象的でした👏🏻✨
主役の俳優さんの優しい眼差しと演技が素晴らしく、感情移入してしまうシーンが多かったです😭
主人公の湿地での生活と出来事が中心になって、裁判が行われるストーリー進行なので、理解しやすく観客が置いていかれない作品でした!
ラストは生きる為に選択した行動をして、愛してきた自然にかえっていった終わり方でスッキリして良かったです☺️✨
人は生き方によって様々な人間性が生まれると思いますが、人付き合いや支えてくれる人は本当に大切な存在だと実感しました!
移りゆく自然と変わらない彼女。
変わるもの、去るものにとって捨てるのは簡単で、殻を閉じたもの、変化を受け入れないものは忘れられさられる。
二人の男が対象的に描かれているのがとても印象的だった。端々に本当に愛しているものとそうでないものの態度が出ている。それでもチェイスを許してしまうのは彼女がどうしようもない孤独を抱えているからだ。
自然を1番に愛し、湿地を愛しているからこそ孤立していくこのジレンマがなんとも言えないものです。
映像も綺麗でとても良かったです。
ラスト驚愕!
湿地と周縁に生きる人の伝説
「正義」「善悪」とは何か?!
湿地帯で逞しく生き抜く女性の半生とともに描かれる重厚で美しいミステリー
「ザリガニが鳴く」と言われる湿地帯で青年が遺体となって発見される。
殺人容疑にかけられたのは、町の人から疎まれ、嫌われる湿地帯の1人逞しく育った美しい少女・カイア。暴力を振るう父によって、家族がバラバラになり、6歳の時から学校へも通わずに、湿地の自然とともに生き抜いてきた。
法廷で語られる彼女の半生と、事件の真相、そして、ある青年との恋…少しずつ事件の真相が紐解かれていくが…。
ラスト、まさかの展開で最後の最後まで目が離せない。前のめりになって物語に引き込まれていく、あっという間の時間だった。
本作は、マイノリティに対する集団差別が大きなテーマとなっている。全体的には1人の女性の人生を通して描かれるミステリー作品ではあるものの、その中に法廷劇、ラブストーリーなどが掛け合わせた重厚な作品となっている。
ストーリー的にどうしても悲しみや怒りが込み上げてくる場面があるが、何度も映し出される湿地帯や海、浜辺の美しい景色がその感情をリセットしてくれたので、暗さより美しさのほうが大きい。
そして彼女に手を差し伸べる人たちも優しさにも救われる。
美しさの中には、絵になるキャストたちも含まれている。カイア演じたデイジー・ジョーンズ、テイト役のティラー・ジョン・スミス、チェイス演じたハリス・ディキソンが目の保養になる。
(湿地帯で暮らす世捨て人があんな美女なら誰だって恋に落ちるわな…)と、カイアが美人だからこのような展開になったんでしょーが。と、突っ込みどころはあるものの、映画としては満点でした。素晴らしい作品に出会えてよかった。オススメです!
本格文芸ミステリ映画を堪能
1969年米国ノースカロライナの田舎町。
町はずれの湿地帯で、若い男性の墜落死体が発見される。
チェイスという名の彼は金持ちの息子で、町での人気者。
容疑者として逮捕されたのは、湿地帯にひとりで暮らす若い娘カイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)。
幼いころに家族から見放され、湿地で暮らしてきた彼女は「マーシュ・ガール(湿地の娘)」と町のひとびとから蔑まれていた・・・
といったところからはじまる物語で、映画は50年代、幼い頃のカイアの家族の物語にとぶ。
町から離れた湿地畔で暮らすカイアの一家は子だくさんの一家で、軍隊還りの父親は暴力的。
何かなく母親を殴りつけている。
ある日、母は何も言わずに去り、カイアの姉兄たちも順々に去ってしまう。
テイトという貧しい家の少年と湿地で出逢ったカイアだったが、父親から会うこと禁じられる。
しかし、その父もカイアのもとを去り、ひとりで生きざるを得なくなってしまう。
それから数年・・・
ハイティーンになったカイアは、成長したテイトと再会し、彼から読み書きを教えてもらう。
昵懇となったふたりであったが、テイトは貧しさから抜け出すべく、大学に進学し、カイアのもとから去ってしまう・・・
といったことが、裁判前後の様子を挟みながら進行します。
この前半が秀逸。
久々の本格文芸映画の雰囲気があり、米国湿地帯の風景の美しさも存分に、アメリカ映画の浪漫を感じます。
で、テイトが去った後、カイアが出遭うのがチェイスで、金持ちのボンボン。
「みてくれ」はいいが、中身はペラいのがすぐわかるという代物ですが、世間知らずのカイアにはまぶしい・・・
と、やはり!な展開。
以降は、風景の美しさを排除し、若いふたりの人物接写中心の演出で、少々、飽きが。
さてさて、そんなこんなで、映画を観ている方としても、カイア怪しい・・・と思うのですが、幼い頃から書き溜めた湿地の生物の絵が出版社に売れ、本となり、事件当日の夜には彼女は遠方にいたことが判明。
裁判は、「マーシュ・ガール」と蔑まれてきた彼女への偏見を払い去ることができるのか、というあたりに焦点が移っていくが・・・
と、ここから先は書きません。
ですが、この映画を観て思い起こした映画をいくつか挙げると、『アラバマ物語』『きみに読む物語』『黙秘』など。
最後に挙げた一編は、カイアに寄り添う弁護士役をデイヴィッド・ストラザーンが演じているせいかもしれません。
ストラザーン、この手の米国片田舎映画には欠かせない存在ですね。
久々に、本格文芸ミステリ映画を堪能しました。
ということで、評価は★★★☆(3つ半)としておきます。
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