感想としては只見線の良さと地元の想いが表現された映画だなと思いました。副題は「只見線を300日撮る男」ですが、只見線にはそれだけの魅力があっても不思議はないな~と思いました。唐突な自分語りで恐縮ですが、私は自転車が趣味だったりします。関東近県ならほぼ走ったことがない場所はない程度には網羅しました。数ある走行遍歴の中でも、個人的にBest of the Bestで感動できたのが会津地方。大型車の往来がある日光街道さえ避ければ、どこを切り取っても絵になる上に楽しく、サイクリングするには天国のような場所でした。只見線沿いを走ったのはもう7〜8年前になりますが、走りながら(ここなら列車からの景色も最高だろうな…)と車窓からの景色を想像しながら走っていたのをよく覚えています。ただ途中で立ち寄った商店に「只見線に『笑顔で』手を振ろう」というポスターが貼ってあり、「なにこれ?」と違和感を覚えました。自宅に帰ってから調べてみると、只見線は2011年の豪雨被害で不通となったままであることを知りました。なぜ不通のままなのか?調べるとJR東日本が出した1通のプレスリリースに行き当たりました。興味のある方は「只見線について」あたりでググっていただけると、JRのpdf文章がヒットすると思うのでご覧ください。そこには只見線復旧にあたっての障壁が明確な数字となって表されています。曰く「復旧には4年、85億円」。それに対して「JR東日本67路線中、利用者数第66位」「全国のJR路線、利用者数ワースト9位」「これまで行ったコストダウンの取り組み」「収益アップのためのキャンペーンの取り組み」「鉄道を復旧させた場合と代替バスを運行させた場合の費用差」etc…。ぐうの音も出ないほどの非常に明快であり簡潔なレポート。心情的には復旧させてあげたいが、それが出来ない苦しい胸の内が見て取れるようです。つまりこれが地元住民の熱望に対するJRのせめてものアンサーなのでしょう。絶望的なデータの数々にいつか乗ってみたいなと思った鉄道でしたが、そのいつかは永遠にこないものと諦めざる得ないものと思っていました。そこから一転、只見線全線開通のニュースを聞かされた時は、単純に嬉しかったと同時に、これらの背景を知っていただけに「一体何があったんだろう」と思いました。この映画ではその疑問に対する一つの答えを観ることができます。それをこの映画では星賢孝氏を軸として、只見線に対する地元の熱意や愛を表現されています。ただ映画の中でも竣工式でJR幹部が、只見線の利用者の少なさに言及するシーンがありました。ドキュメンタリー映画であり、興味のない人は面白くないかもしれませんが、これらの背景を知っているととても楽しめると思います。あと私は縁もゆかりもありませんが、映画を観て「行ってみたいな~」と少しでも思った方いつ廃線になるか分からないので、今のうちに是非1度行ってみることをお勧めします(笑)