遠いところのレビュー・感想・評価
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あおいと同じところで育ちました。 別段辛い事だと思ってはなかったの...
あおいと同じところで育ちました。 別段辛い事だと思ってはなかったのですが、数年本土で暮らしてみて色々気づきました。 そして映画を見て少し楽になりました。 とても良い映画でした。ありがとうございました。
物凄く胸糞悪い気分になる映画です。 それは主役の演技があってこその...
物凄く胸糞悪い気分になる映画です。 それは主役の演技があってこそのもの。 今後沢山の作品に使われるであろう彼女は、賞を貰って当然の演技だと思う。 次の作品が早く見てみたい。 次はいい環境の役で。
It's a Small World
17歳にして2歳の子供を持ちキャバクラで働く女性が、まともに仕事をしないDVダンナの転落に巻き込まれる話。 仕事に行ってもまともに働く様子もないし、平気で仕事をサボるクソダンナが、嫁の金を勝手に持ち出し音信不通になる中で、嫁の働くキャバクラが未成年者を雇用していたことで摘発されて仕事もなくなり…。 被害届け出して離婚しちゃえば良いのに、共依存に近い感覚でしょうかね。 父親とダンナに関してはかわいそうではあるけれど、それでもダンナと縁を切らなかったり行政に頼らないのは無知が故か、どうも自分からそういう選択をしているようにもみえるし、必死に何とかしようとするより安直なところに向かおうとしている感じもしてあまり同情出来ない感じもする。 それでも哀しくやり切れない重苦しくさはなかなかなもので、掬いのなさは堪らないものがあった。 そういえば、特にオバアとか時々字幕が欲しかった。
貧困と女性差別に真正面から向き合う大事な作品
沖縄の貧困や女性差別を題材とした映画でした。沖縄というと、第2次世界大戦時の壮絶な地上戦や、アメリカによる20年以上に及ぶ占領、そして占領が終わってからも全県下に展開される在日米軍基地や、米軍人が起こすレイプ事件などにスポットが当たることが多く、本作が取り上げた貧困やミソジニーの問題はあまり注目されて来ませんでした。そういった意味で非常に意義深い作品だったと思います。 内容的にも、工藤監督が現地で取材を重ねた結果を作品にしており、刮目せざるを得ない衝撃的なものでした。主人公は17歳で既に2歳の子供がいるアオイ(花瀬琴音)。夫のマサヤ(佐久間祥朗)が働かないので自分がキャバクラで働いています。18歳未満でキャバ嬢なんて、ホントかいなと思いましたが、ちょっとググるとキャバクラどころがいわゆる風俗でも18歳未満が働いているケースが多いようだし、またキャバクラなどの「風俗1号営業」の店舗数が、人口当たりで全国トップという記事もありました。 劇中では、「金がないならキャバクラで働けばいい」と父親や夫からも言われてしまう主人公アオイ。しかも夫婦喧嘩になると全治1週間以上の怪我を負わせるDVに及ぶ夫。さらに夫は酒場で喧嘩して人に怪我をさせたことから、アオイが示談金を用意せねばならなくなる羽目に。 これでもかと言うほどにクソ野郎が登場する本作ですが、アオイが単純な被害者という位置付けで描かれていないのもリアリティが感じられたところ。散々喧嘩しながらも、夫と相互依存関係にあるように描かれていた点は、単純なお涙頂戴物語ではなく、観る者にさらに深刻な問題を突き付けていたように感じたところです。 因みに実際の統計を見ると、沖縄の平均所得や最低賃金は全国最低水準だし、失業率もワースト1。人口当たりのDV件数は全国3位らしいです。従って、本作に描かれた沖縄の姿というのは、決して誇張されたものではないと言えるのではと思われます。 俳優陣ですが、主役の花瀬琴音は映画デビュー作にして初主演。東京出身ながらもうちなーぐちを使いこなして熱演していました。(まあ私には彼女のうちなーぐちがホントに上手なのかは判別が付きませんが。)夫役の佐久間祥朗も、ダメ夫ぶりを如何なく披露。アオイの祖母役を演じた吉田妙子は、正真正銘のうちなーんちゅ。沖縄のおばあが沖縄のおばあを演じたので、そりゃあリアリティありますわ。兎に角彼女の話すうちなーぐちが本物なので、少なくとも3分の1は聞き取れませんでした。ないちゃーが聞き取れないことなんて、工藤監督は百も承知だったと思いますが、敢えて字幕を出さないところがまた良かったです。何せ本作は、沖縄の問題であると当時に、我が国全体の問題でもある訳ですから。 そんな訳で、従来あまり注目されてこなかった問題を世に問うた本作の存在意義は非常に重かったので、高い評価を与えたいと思います。
遠いところへ行くしかないのでしょうか。
社会的弱者。 この言葉を使うこと自体が、上から目線的な傲慢さを表すようで少し抵抗があるのですが、ここでは、福祉や教育など一定の社会制度の枠からはみ出してしまった人、もしくは、不運にも始めから枠の外で生まれ育ってしまった人たちのこととして使います。 ※余談ですが、反対語として、社会的強者、という言葉が浮かびますが、実際は使われてません。これは、強者というニュアンスが独り歩きして、政治家や富裕層やマスコミを含めた有識者と言われるような方々が、世間から反感を持たれないためかもしれないですね。 社会的弱者を描く映画は、大きく3つに大別されると思います。 ①啓蒙啓発 ②その環境の中で強く逞しく生きていく人物を通して、逆転人生などのドラマ性により共感を得るもの ③そこに手を差し伸べる人もいる、ということを通して世の中、そう捨てたものではないのだ、という希望を描くもの この映画は、②や③のような情緒的な感情は不要である、とはっきり宣言する①でした。 どうにもならない現実を生々しく描くし、何かの救いとなるような出会いもない。鑑賞者目線では、もっと警察や児童相談所に頼ってもいいのでは?と思うのですが、主人公目線では、始めから外の世界の人たちに頼る気はないし、せっかく外のほうから関わってくれたところで、杓子定規で冷たい役人対応にしか見えてない。 福祉制度の現場の実相をよく知らないのですが、本当は未成年である主人公だって、なんらかの保護の対象ではないのか。子どもだけでなく、アオイにだって福祉の手が及ぶ状況にはならなかったのか。 結果的には、行政も福祉もこの親子の場合には、なにひとつ役に立てない。そういうメッセージにも見えてしまいました。 玉城デニー知事のコメント(誰も取り残さない)を報道するシーンも挿入されていたので、監督がこの映画で①の描き方を選んだのは、『現実の社会では、どこにも希望がないのだから諦めてね』ということだったのでしょうか。 実際に社会福祉に携わる方々がこの映画を見たときに、「なんだよ、これじゃあ、我々は社会的弱者から子どもを取り上げている悪代官みたいだな」とガッカリすることにならなければいいのですが。
苦しくて重い現実
日本で最も貧困で、若者の出産率は高く、それでいて仕事は無い沖縄。 オーシャンブルーの海や賑やかな国際通りに行く観光客は悲惨な沖縄の実状なんて見たくもない。 そんな見たくもない現実を描いているのがこの映画。 若いうちに子供産んで離婚して、それで生活が苦しいのは当たり前だろう自業自得だろうと自己責任論で終わらせるのは容易いけれど、そんな世界にしたのはみんなの無関心ではないか。そんなことを考えさせられる。 誰も頼りにできないで、17歳で子供を育てながら働く少女の人生。 周りにいる近しい人たちも同様に行き詰まっている者ばかり。 次第に身を崩していく姿はある意味で典型的とも言えるかもしれない。でも、こういう人がたくさんいるのが沖縄。ドラマティックな奇跡も起きないし、映画全体を覆う陰鬱さは気持ちを重くさせる。徹底してリアルな実情を描いているのだと思う。 それはロケーションでも同じで、コザや松山など、劇中の人たちが実際にいそうな場所ばかりで生々しさが伝わる。 何より驚いたのが、主演の花瀬琴音が沖縄出身でないということ…! 観ながら「ああ、沖縄出身の若手俳優さんなんだろうな」と思うほど方言や動作が現地の人みたいだった。 内地に住んでいて、観光に行くだけの人たちにとって、この現実はやっぱり"遠いところ"なのかもしれない。 でも劇中の彼女たちはそこからなんとか這いあがろうともがいていた。 ニライカナイと呼ばれる海を見ながら、ぼんやりと呟いたセリフが忘れられない。
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