「のんが実現した「霊界ファンタジー」。」天間荘の三姉妹 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
のんが実現した「霊界ファンタジー」。
姉妹が住む老舗旅館に腹違いの妹が来るという「海街diary」のようなシーンで始まる。二つの映画は、複雑な事情を抱えた姉妹がなじむことができるかという興味は共通しているが、大きく違うのはここが死者の住む(霊界)だということである。物語が進行していくにつれて、その不思議な設定にどんどん引き込まれていく。大震災で一度に亡くなった大勢の人々が暮らしている、天界と現生との間にある架空の町「三ツ瀬」が舞台。彼らが死後の世界でも幸せに暮らしてほしいという、残された人々の願望がこんな不思議な物語を生み出したのだろうか。そこでは生前の生活そのままに生き生きとした(?)日常が営まれているのが面白い。これは死者を鎮魂する「霊界ファンタジー」とでも呼べばいいのだろうか。
その異世界に臨死状態となって紛れ込んだたまえの活躍が物語の中心である。言うなればあの世とこの世の橋渡し的な役である。死んでしまった人には安らかに成仏してもらう、生きている人には生きている喜びを感じて生きてもらう。無邪気だが人の心が分かる、前向きなたまえだからこそ果たせた役割だ。たまえと三つ瀬の人々との交流は心が慰められる。力は抜けているのに芯はしっかりしているのんにぴったり合った役である。のんの代表作になるであろう。
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