神々の山嶺(いただき)のレビュー・感想・評価
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原作ファンの我儘とは知りつつも
夢枕獏の原作小説と谷口ジローの漫画版を愛してやまない。好き過ぎて実写映画は観に行けなかった。実写よりはアニメの方が、絵面が写実そのものでないぶん割り切って観やすく感じるのではなどと期待して鑑賞。
94分はちょっと短いな、と事前に思ったのだが、実際観るとうーんやっぱりちょっと短すぎるかな。エピソードのいくつかは削られて当然、それが映画化ということなのだと覚悟はしていたが。
エピソードが体感3分の2くらい削られてる感触があって、物語の手応えがちょっとスカスカした感じになってしまった。2時間超えるくらいの長さになってもいいから、もうちょっとエピソードを増やして厚みがほしかった。原作を知らない人には、どんな風に見えたのだろう。
深町などのキャラクターの目がみんな小さくて、フランス人には日本人がこのように見えているんだな、という感じだった(見慣れれば気にならない)。吹替でキャラクターは日本語をしゃべる。オリジナルはフランス語なのだろうが、登場人物はほぼ日本人なので、吹替の方が言語面ではよりリアルなのだと思うと不思議な気がしたりした。
山岳風景の映像は圧巻で、美しさとリアリティが同居していて、高さを感じる迫力があった。羽生たちが山にアタックする時の動きは漫画版を踏襲している部分が多く、漫画だと当然静止画であるシーンを動きとして見るとより分かりやすくなっている点もよかった。羽生役の大塚明夫さんの声がよく合っていた。
原作ではこの内容に、ざっくり言うと深町個人の背景や人生観に関わる部分、文太郎の姉涼子が絡む恋愛パート、映画のラストの後に深町がひとりで登山するパートなどが加わる。小説漫画ともに、心理描写がかなり克明だ。羽生が遭難して文太郎の幻を見る場面は、原作では羽生の手記という形で描写され、小説でも漫画でも鬼気迫る場面になっているが、その手記も省略されている。
映画だけ見ていると、深町がどういう思いで羽生の取材にこだわり、過酷な登山についていったのかが伝わりにくくなっている気がした。キーアイテムのマロリーのフィルムの顛末も違って(これは小説と漫画とでも違う)、原作ではもっとドラマがある。
谷口ジローが大人気のフランスでアニメ化までしてくれたことは素直に嬉しいし、94分の中に盛り込むならエピソードの選別はおおむね妥当だとも思う。それでもやはり「神々の山嶺」はこういう話か、と自問すると、これでは薄いと思ってしまう。原作の呪縛から逃れられません。ごめんなさい。
映画で初めてこの作品に触れた方はこの機会に、是非原作小説か漫画(このふたつのクオリティは同等で違う良さがある)も読んでほしい。アルピニストの心に、より深く入り込めるから。
余談だが、映画.comの特集記事で本作にコメントを寄せている坂本眞一の漫画「孤高の人」、その原作である新田次郎の同名小説も登山家ドラマの白眉なのでお勧め。
憧れは止められない
本作は、実在の登山家ジョージ・マロリーはエベレストに登頂したのかという謎をモチーフに独自の物語を展開する。しかし、その謎を解き明かすということよりも、マロリーの有名なセリフ「なぜ、山にのぼるのか。そこに、山があるからだ」の精神性に深く切り込むことに重きをおいた作品であると思う。
なぜ危険な登山に挑むのかという問いに対して、合理的で明快な答えはない。そこに山があるかぎり挑まざるを得ない、そういう心持ちがあるのだということだが、その正体はなにかを劇的なドラマで描いている作品だ。
映画は理屈ではない情動を描くことに向いていると思うのだけど、本作ほどそれを証明している作品はなかなかお目にかかれない。危険な山になぜ魅せられるのか、見たことのないいただきの風景にどうして人は突き動かされてしまうのか。この映画を観ればそれが明快にわかる。人は道への憧れを止めることはできないのだ。
本作のように、日本にアニメ市場では拾われにくい原作を海外で映像化してくれる事例がもっと増えるといいなと思っている。普段日本でアニメ化されやすいもの以外にも本当に多彩な作品があるので。
フランス製作チームの7年越しの情熱を称えたい
胸に迫る、骨太な作品だった。当初、私の頭には本作に関して「アニメーション手法によって登山シーンを芸術性豊かに表現した映画なのだろう」くらいの想定しかなかったのだが、いやはや、登山シーンの壮大かつ息詰まる表現も素晴らしければ、東京で展開するヒューマンドラマ部分も見応えがある。これは山を介して交錯する”二人の男”の物語。それも一人の写真家の視点に立って、消息不明の登山家の身に起こった出来事を丹念に辿っていくミステリーだ。序盤ではマロリーが遺したカメラがマクガフィン的に用いられるものの、次第に語り手の焦点が「孤高のクライマー、羽生」そのものへ移行していく流れも研ぎ澄まされている。彼らはなぜ登るのか? 山に身と心を捧げた者にしか理解しえない境地とは何なのか? こういった心境を表現する上で、アニメーションという手法がこれほど有効だったとは。7年の歳月をかけて完成させたフランスの製作チームを称えたい。
新しく考えてみた
この物語の焦点は、羽生やその他の登山家が何故山に登るのかというところだろう。
観ていたときは羽生たちの姿を見て漠然とはいえ自分の中で答えのようなものが浮かんだ。しかし、観たのが少々前で、それを忘れてしまった。レビューを書くのだからどこかに書きとめておけば良かったと後悔しているが今更だ。
書くことを失ってしまったので代わりに考えてみた。
「好きだから」というのはある意味当然なのだろうが、何故好きなのかという部分が大事だろう。
例えば主人公深町はおそらく登山が好きというわけではない。仕事として山登りのスキルを身に着けている。
一方で、先の登山家であるマロリー、羽生のライバルであった登山家、羽生に憧れる若者、彼らの登場が意味するところは、先人のあとを追い、それを追い抜くことにあるのではないかと思う。
何事も先人の残したものの上に成り立つ。登山に限った話ではない。過去の論文を下敷きに新しい論文を書くみたいなことだ。
例えばエベレストに登頂するにしても、まずはチームで、次に無酸素で、単独で、単独無酸素でと、難易度を上げていくのは、先人を追い抜きたいからだ。
ただ山登りが好きなだけなら、そんな無茶をする必要はないはず。登山だけにてっぺんをとりたいのかもしれない。
少なくとも、この物語に登場する登山家は皆そうであるように見えた。それが「好き」の正体。
観ている最中に感じたのは、こんな俗っぽいものではなくて、もっとエモーショナルな感覚だった気がしている。
忘れてしまったので仕方ないが。
それでも、まあ悪くない見立てなんじゃないかと思う。
多くのレビュアーさんが、自分は登山家ではないから完全に理解するのは難しいみたいなことを書いているが、羽生の中にある情熱や執念のようなものは、別に登山家に限らず誰にでも該当するのではと思う。
登山家の場合、命がけでないと達成出来ないことだったに過ぎないだろう。
言葉は悪いが「無駄に頑張る」という経験は多くの人にあることだ。
日本の夢枕獏の原作を元にしたフランスのアニメーションで、日本の看板に描かれた文字などもしっかりした作品だった。
主要人物が日本人であることや日本の場面があることは、作品の内容と全く関わりがないので、フランスを舞台に改変すればいいのにと薄っすら思った。
しかしそのままアニメーションにしたフランスは、映画の芸術性に対して妥協がないと感じた。観客に分かりやすくなど考慮しない。
日本人の多くは日本はアニメ大国と思っているだろうが、映画の芸術性という点においては全くフランスあたりに敵わない。毎年行われるいくつかのアニメーションの国際賞で日本の作品が受賞することは稀だ。
ハラハラ
山に思い入れないとフーンってなる
❇️『そこにエベレストがあるから』と言った元祖本人‼️
神々の山峰
🇳🇵ネパールのエベレスト
★彡名言で『そこに山があるから』の発言をした人で有名なマロリー!実際は『そこにエベレストがあるから』らしいです。
主人公は記者の男が登山の歴史を変えるかもしれないマロリーのカメラを📷持つと考えていた登山家の羽生を探していく内に、羽生の生き様と人生に興味を持ち人生を懸けて居場所を探す。
羽生と出会い1人の記者の人生が変化していく。ロマンアニメーション
◉79C点。
★彡山はやっぱり怖いですね。
何故凍傷で指を無くしたり、激しい頭痛、そして雪崩、崖崩れなど限界も限界で登るのか?
やっぱり理解したいけど出来ないものがあります!
❇️フィクションとはいえ、実在の人物や想像や資料を元に描かれた、夢枕獏さんの小説をアニメ化する。想像を掻き立てるストーリーが魅力。
★彡30年も前倒しになるかもしれないマロリーの登頂がロマンだね〜。
💪🧔🏻♂️🥾❄️🌨️🌫️🏔️📷
実にハードボイルド
どうしても古く感じる
山に魅せられた男
アニメの背景が圧倒的に美しい作品。果てしない孤独。
内容は、二人の漢(風景カメラマン深町誠・天才山屋の羽生丈二)が、理由もなく高い頂。エベレスト山頂を目指す話。印象的な台詞は『一度山を覚えたら取り憑かれる。そういうもんだ』修行僧の様に山に魅せられた🏔漢二人の劇中一貫した意味合いのメッセージだとかんじます。印象的な境遇や立場では、皆の前で自分の迷惑になるようなら迷わずザイル切りますとの場を一括する様な一言。でも、危機的なそういう状態の行動こそ本心。一番信頼できる人なのに皆からは敬遠される立場は、共に歩むパートナーを無闇に巻き込みたくなかっただけなのかもしれません。誰しも山に魅入られるまでは・・。人一倍他人思いの山屋・羽生が最後に感じた景色を感じさせる様な素晴らしい心象風景を擬似体験出来ました。印象的な風景は、エベレストを含む山です。紫色の朝日夕日に時化や雪崩が美しくも絶望的です。正に神々の山嶺。特に7500m〜の頭痛は、こちらまで身体が重くなる様で感覚の伝達を繊細に感じさせる可能性のある素晴らしい映像表現だと感じます。長い作品の中の一場面を切り抜いた潔さが分かりやすく共感を得れる様な、山を登るとは如何いう事か?非常に深くて、人間の根幹にも関わる様な表現はフランス🇫🇷ならではと脱帽しました。何せタイトルの見せ方がカッコいいのです。
なぜ命の危険を冒してまで登山をするのか。 私にはよく理解できないが...
人は山嶺を目指し続ける
以前にも平山秀幸監督、岡田准一&阿部寛共演で映画化。
あちらは夢枕獏の原作小説の映画化だったが、こちらは小説を基にした谷口ジローのコミックを、フランスでアニメ映画化。
またまた恥ずかしい無知だが、原作コミックも谷口ジロー氏もほとんど知らず。
2017年に他界された漫画界の巨星で、代表作に松重豊主演で人気のTVドラマ『孤独のグルメ』の原作も。国内外で評価され、特にフランスからは栄えある賞も授与されたほど。
本作の原作コミックもフランスで大ヒットし、製作側が熱望。谷口氏も悲願だったとか。
生前の内には叶わなかったが、完成。フランスのセザール賞でアニメ映画賞を受賞するなど絶賛。世界中ではNetflixで配信されたが、日本では劇場公開。母国での評判は周知の通り。
劇中さながら山を登るの如く険しい道のり。
日本のコミックをフランスでアニメ映画化。
改変されているのかと思いきや、日本が舞台。キャラ名も日本人名。
ネットで原作コミックの画像を見たが、こちらにも忠実。
日本ではベテラン声優による吹替版での公開だった為か、日本のアニメを見ているよう。日本描写も全く違和感ナシ。
アニメーションと言うと日本やハリウッドが人気だが、フランスも良質のアニメーションがなかなか多い。
リアルな描写や大人向けの作風からもそれが窺い知れる。
上質さと原作リスペクト、作品の力量…製作側のこだわりと仏アニメーションのクオリティーに感嘆。
大まかな話は日本での映画化と大体同じ。
が、アプローチは全く違う。
日本版は岡田准一演じるカメラマン・深町の視点が主軸となっていたが、こちらもそう始まり、日本版以上に伝説的クライマー・羽生に迫る。
姿を消した羽生。彼に何があったのか…?
トラウマともなった後輩の山岳事故。悲劇的。
ライバルクライマーとの競い。
山岳中の自身のミス。命の危険。
ライバルクライマーの死…。
幾多の苦難。畏怖なる山嶺。
彼はもう、目指す事はないのか…?
たった一つの油断やミスが命に関わる。
危険は何度も。
その恐ろしさや手に汗握るスリル。
山には魔物が棲んでいると何かで聞いた事あるが、その一方、神々も存在している。
連峰の美しさ、雄大さ、スケール…。神々しいほど。
キャラの魅力やドラマ描写も含め、これら日本実写版より深い。
これがアニメである事を忘れてしまうくらい。
まあ、ちとキャラの見分けの区別が難しいのが玉にキズ…。
羽生は決して山を諦めていなかった。再び、目指す。
深町も彼に同行する。
山に魅せられた…いや、取り憑かれた男たちが目指した山嶺には、何があるのか…?
登山など全くしない私。
だから何故、命の危険に瀕してまでも登るのか、正直分からない。
いやひょっとしたら、登る彼らも同じかもしれない。
何故、人は山に登るのか。
有名な言葉があるが、それと同時に、その答えを目指す為に。
それは人間そのものの存在にも通じる。
何故、人は生きるのか。そこに、生があるから。
盲目的な人間本来の行動でもあり、宿命でもあり、シンプルな問いでもあり、哲学的思考でもある。
だから人は、山嶺を目指し続けるーーー。
執念
人生の節目に出会う作品。
神々の山嶺は最初の会社に入社した時のこと。2ヶ月の本社研修で、寮に住まなければない期間がありました。なので文庫版コミックスで適度な長さの漫画を探していた時に出会ったのが神々の山嶺。
当時はどんな作品かもよく分からず、面白いらしいぐらいの軽い知識しか持っていなかったのですが読み始めたら結局すぐに読みに読み切ってしまうぐらい魅了されたんです。
一瞬でした。
(そのあとすぐプラネテス買いました)
短いながらも濃密な描写と取材内容、シンプルで精緻なデザインされた画。そして、命を賭けた男の飽くなき挑戦と時代を変えるロマン。冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑む羽生の狂気と執念を追いかける深町の姿に魅入ってしまった。
そんな名作をフランスでアニメーション化。
第47回セザール賞アニメーション映画賞を受賞した本作。
まさしく山登りの様に、必要なストーリーを選び、無駄を省き、鋭く選び抜いたストーリーと圧倒的な大自然の迫力。日本語吹き替えには堀内賢雄さんと大塚明夫さんという抜群の安定感。渋かった〜。
渋さの頂きに辿り着いていたのは言うまでも無い。
実写版もありますが、アニメ版の方が個人的には好きです。
大人の渋いアニメーション映画です。
94分でこれだけ描けるのはすごい。
また人生の節目に見たいと思います。
エベレスト
どこまでもミステリー
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