劇場公開日 2022年8月26日

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「何かが心に残れば…」NOPE ノープ andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何かが心に残れば…

2022年9月25日
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鑑賞方法:映画館

IMAXレーザーGTで鑑賞しなければと思っていたのでようやくの鑑賞。
ジョーダン・ピールがただのホラーとかUFOスペクタクルを作るとは思えなかったが、今回のは中々高度じゃないかな、と感じる。
ダニエル・カルーヤとキキ・パーマーの兄妹とスティーヴン・ユァン、皆「見過ごされた存在」としての人生。彼らがUFO(ではないか)を「見せ物」にしようとすることで起こる「最悪の奇跡」。
最初はずっとチンパンジーのゴーディ(何のメタファーかはさすがに分かる)とUFOに何か関係あるのかと思っていたが、正直複雑だけどそこまで複雑に考えなくてもよかったのだ。「見る」「見られる」というよりは、「見せ物にする」ことへの警鐘がひたすらに鳴る。
しかし、多分初見だと批評家とかでもなければそのメッセージ性を拾うのは難しいのかも、とは思った。そういう意味では単純に「すごい映像体験」としても観られるとは思うのだが、観客に突きつけるハードルが高いな、と(「ゲット・アウト」のときはもう少しストレートだった気はするのだが)。
単純に観ると、やっぱり「見る」だから各々の見る演技が凄い。特にダニエル・カルーヤは寡黙な役の上にあの目ヂカラなので視線に猛烈な説得力があった。あとスティーヴン・ユァンの見上げたときの表情。ありとあらゆることを理解したようで全く理解していない表情。
結局その差異があの結末なのか、とも。
割と最初に出てきたものが最後にああ使われるのか、というのがよかった。結局最後はそこなんだなあって。
色々なオマージュは私がやはり詳しくないのであまり拾えず。
ジュープの子ども時代の役の子、めちゃくちゃスティーヴン・ユァンに似てるなと思って感動した(前田航基さんにも似ているが)。あの体験したらふつうに大人になるのも難しいよね、壮絶だったろうなと感じる。
OJとエムの兄妹は、全然合わないけど…やはり分かり合えるふたりってでかいんだな、と。ハンドサインとか。
ラストが西部劇ぽさがあってよかった。
読み解けなくても何かは心に残るし、それで良いのかもしれない。ジョーダン・ピールは最強に「考えさせるスペクタクル」を与えてくれたともいえる。

andhyphen