「凄まじいものを投げつけられる感覚」NOPE ノープ nazionaleさんの映画レビュー(感想・評価)
凄まじいものを投げつけられる感覚
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ジョーダンピールといえば巧みなプロットと仕掛けで観衆の予想を裏切る展開やそこに含まれるテーマ性に富んだ比喩などによるテクニカルな印象が強かったが、今作でよりエンターテイメント性を突き詰めることで映像表現や映画体験というものをアップデートし、更に違うステージに登り詰めたと感じさせられた。
生物としての美しさと恐ろしさを含んだ浮遊物体はスクリーンに映し出されることでよりその存在感を増し、常軌を逸した存在であることがより信憑性を持って突きつけられる。
ただそこに甘んじるのではなく、終盤にかけて一気にテンポ感を上げて観衆を巻き込んでいく力や受け手を登場人物へ自然とシンクロさせ映画そのものに乗っからせてしまう構成力は流石の一言。
序盤で描かれる馬や猿といった動物の本能からくる暴走 なども物語の自体のフックになっており、単なるスペクタクルで終わらないのがやはりジョーダン・ピール。
SF史上に刻むほどのアイディアを形にしたとも言え、どこからこれが生まれてくるのかとその脳の中身すら気になるほど。
単に作家性という部分ではゲットアウトやアスには劣るかもしれないが、今作によって映画性と作家性のバランスをより高めたとも言え、更に自身の価値を高めるきっかけになったんじゃないだろうか。
とにかく言葉では形容しづらいものを突きつけられたようで、なんだこれは と圧倒される感覚。ただこれこそが映画の醍醐味。
見たことのないもの、味わったことのない感覚、それを久々に体感させてくれた。
絶対に劇場で見るべき映画であることは間違いない。
欲をいえばIMAXで。
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