ガザ 素顔の日常
劇場公開日:2022年7月2日
解説
パレスチナ、ガザ地区の知られざる日常を捉えたドキュメンタリー。一般的に戦争のイメージが強いガザ地区だが、穏やかな地中海に面する同地区の気候は温暖で、花やイチゴの名産地でもある。美しいビーチには老若男女が訪れ、若者たちはサーフィンに興じる。その一方で、東京23区の6割ほどの広さしかない場所に約200万人のパレスチナ人が暮らしており、その多くが貧困にあえいでいる。イスラエルはガザ地区を壁で囲むだけではなく、2007年以降は物資や人の移動も制限しており、同地区は「天井のない監獄」とも呼ばれる。現実逃避するためにチェロを演奏する19歳のカルマは、国際法や政治学を学ぶため海外留学したいと考えている。14歳のアフマドの夢は、大きな漁船の船長になって兄弟たちと一緒に漁をすることだ。平和と普通の生活を夢見ながら、日常を強く生きようとする人々の姿を映し出す。
2019年製作/92分/アイルランド・カナダ・ドイツ合作
原題:Gaza
配給:ユナイテッドピープル
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2022年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
東京23区の6割ほどの面積に、200万人が暮らすパレスチナの町、ガザの人々の生活を追ったドキュメンタリー。「世界ふしぎ発見!」の気分で見始めたら、全然とんでもなくて、むしろ「クレイジージャーニー」じゃん!ってなった。陸上の国境は厳重に封鎖され、海上も、ビーチから5キロ地点にはイスラエル海軍が監視しているので、漁師も海岸から5キロ以内でしか漁ができないという……。強制鎖国状態、あるいはロックダウン状態の人々の不便な生活には同情を禁じ得ません。さらに、ガザ地区の人々のメンタルがビンビン伝わってきて心が揺さぶられます。この映画にしても、海外からのロケ隊は入れないので、相当な苦労を経て完成させたのだと想像できます。大変貴重な映画です。
ここ数年、パレスチナ の風景を知ることができる映画が、劇映画もドキュメンタリーも増えてきて、パレスチナ やその人々に心を寄せる人には!現地の様子を垣間見ることができ感謝しかないとと思う。天井のない監獄ということばがまさに相応しい。僅かな細長い土地、片側は海、だか海にも繰り出すことができない。空も高く広がるがそこは爆撃機が往来するところ。パスポートも移動の自由も制限されているガザのパレスチナ 人にはうみも空も有限だ。
その中でも逞しくなんとか融通して生きている人たち。廃品で手作りしたボードやボートで遊ぶ少年たち。クラシック音楽を学びなにかをかえようもする学生。タクシーを運転しながら日々苦しくなる一方の暮らしを見つめる。海で漁をして警備隊に拿捕逮捕された息子を待つ家族、息子の帰還。ハマスの登場台頭によりパレスチナ への支援や思いが分散され散逸されたというようなことが述べられている。ISいわゆるイスラム国の登場により、難しい中東情勢や紛争の歴史においても、ある種わかりやすくアラブの大義という柱の下理解出来たことが根こそぎひっくり返されパレスチナ はどうなるのか危惧と不安しかない。ハマスのグリーンカラーのパレード、参加する多くの人々の表情は熱狂より憔悴や諦念、惰性にも見えるが日常の一コマなので僅かなシーンから読み取ることはできないだろう。帰還した漁師の息子を迎え祝うのはPFLPの旗。最近の情勢は勉強不足で分からないので率直な感想だけ。何も詳しいことを知らなくてもガザストリップに暮らす人々、大海を前に前にも後ろにも進めない暮らし、その中での連帯と助け合いと、鬱屈しこれ以上は耐えられないという状況を押し返し精一杯ぶつける石礫。報復の空爆や砲弾そして子どもも含めパレスチナ 人たちは倒れ負傷し障害をもち、この悪い循環が狭い土地で繰り返される。無力な自分を恥じる。そして笑顔とユーモアと悲嘆と絶望のガザの人々を想う。
パレスチナ問題とか聞いたことが合っても漠然としか知らなかったり…素顔の日常を見ておいて欲しいと思う。
2022年7月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
映画の題名や写真、予告編から、紛争地域というだけではない、ガザの普通の側面を紹介する、明るいドキュメンタリーと予想していた。
しかしそうではなく、具体的な事例を通じて、「素顔の日常」においてさえ、絶望的な閉塞感があることを伝える作品であった。
2007年から封鎖された国境に検問所は両端に2ヶ所しかなく、また、海は2009年から陸から5.5kmまでしか出ることができないので漁業もままならない。
パレスチナ難民全体では、1948年の「当初70万人だった難民」が、避難先で世代を重ねて「今や約560万人」らしいが、一夫多妻の子だくさん家庭が出てきて、そりゃ増えるなあと思った。
燃料不足も深刻で、仕立屋は困り果てる。
笑顔のタクシー運転手も、実は借財を背負っている。
タイヤを燃やし、フェンス越しに物を投げる暴動。
イスラエル兵に撃たれ、障害者となった若者は、溜まった思いをラップに歌う。
本作の出だしは、6~7人を中心にした通常のインタビュー映像で構成されていたが、後半になるにつれ、そういう整然とした枠には収まらなくなっていく。
緑一色に染まった、イスラム武装組織ハマス(公安調査庁HP)の集会の映像は、もっと観たかったが映画のテーマに合わないのか、すぐに終わってしまったのは残念だった。
大規模な戦闘があった2014年から5年くらいの映像のようだが、映像がいつどこでという情報には乏しい。しかし世界から忘れ去られて、いつまで経っても閉塞状況は変わらないのだから、同じことなのかもしれない。
夜遅い上映であったが、観に行く価値のあったドキュメンタリー作品だった。