アウシュヴィッツのチャンピオンのレビュー・感想・評価
全34件中、21~34件目を表示
アウシュビッツからの素晴らしい帰還者
第2次世界大戦中の1940年、ワルシャワのボクシング・チャンピオンだったタデウシュ・ピトロシュコスキ(通称テディ)は、アウシュビッツ強制収容所に移送された。彼には77番という呼び名が与えられ、捕虜のため十分な寝床や食事も与えられず、過酷な労働を強いられる日々が続いた。その間、老人、女性、子どもは怪しい建物に連れ込まれ、虐殺が続いていた。
そんなある日、テディは司令官や看守たちの娯楽としてリングに立たされボクシングをすることになった。負け知らずで勝つたびにパンやソーセージなどの食料や薬を貰い、囚人仲間に分け与えていた。そして、終戦までなんとか生き延び、ポーランドに帰った後は子どもたちにボクシングを教えた、という実話に基づく話。
アウシュビッツってユダヤ人の収容所かと思ってたから、ユダヤ人じゃなさそうなテディがなぜアウシュビッツの強制収容所に送られたのかと思ってたが、ポーランドに侵攻したナチス・ドイツは、愛国主義になるとスポーツを禁じ、愛国心の強い危険分子とみなしたスポーツ選手を強制収容所に送ったんだと知った。
Arbeit macht frei(働けば自由になれる)の看板はナチスの強制収容所が映る作品を見るたびに見ているが、果たして働いて自由になった囚人が何人いたのだろうか?戦後まで生きて戻れたテディは貴重な体験者だったんだと思う。
テディ役ピョートル・グロバツキが良い体を作ってて素晴らしかった。
戦中の日本も戦地でこんな事をしてなかったのか、今のロシアは?なんて事を考えながら観た。
やはり戦争はいけない。やっちゃいけない、と強く思った作品でした。
多くの人に観てもらい、戦争の悲惨さを体感してもらいたい作品です。
忌々しい歴史を忘れないために/(参考)日独の考え方の違いについて
今年221本目(合計497本目/今月(2022年7月度)33本目)。
日本では7~8月によく放映される、ナチスドイツの忌々しい歴史を風化させないための映画がよく「固まって」放映されることがありますが、本作品もその一つです。
ここの特集などにあるように、史実をもとにしているため、あることないこと書けないこともあります。
ナチスのこの収容政策といえばユダヤ人が真っ先に挙げられますが、身体障害者や牧師(牧師についてはちらっと映画でも出る。宗教関係者を余りよく思っていなかったらしい)も犠牲にあったことも事実です。ただ、それら含めて全て「平等に」描こうと思うと10時間コースであり、何か一つに絞ろうと思うと難しいところです。
また、映画内をよくみるとわかりますが、当時のドイツ(収容所内)のドイツ側の思想も必ずしも一律ではなかったようで、中にはヒトラーに懐疑的ないし反対していたものもいたようです。それが前提になっているセリフもあります(他の方が詳しく書かれていた通り)。
もう戦後何十年もたつこの文化(および、同じく敗戦国である日本、イタリアがとった極悪非道の政策)は未来永劫忘れてはいけないし、次の世代に伝えていかなければ…と気を強く思ったところです。
採点上特に差し引く要素はないので、フルスコアにしています。
--------------------------------------
(参考/日独の考え方の違い)
・ 同じ敗戦国のこの2つの国ですが、表現・言論の自由という観点で大きく違います。
ドイツはもちろん、ドイツのこの被害にあった国の中には憲法や法律のレベルで「ナチスドイツを英雄視するような著書・映画は許されない」という国があり、違反者には罰金も取られます。これを「表現の自由の侵害」と見るかは微妙ですが、余りにも支離滅裂であったことも事実です。
翻って日本を見ると、日本も敗戦国で敗戦後、日本国憲法が定められ、そこで思想良心の自由、表現・言論の自由は最大限尊重されるようになりました。基本的人権の中でも「表現・言論の自由」はその「王様」と言われるほど強く保護されます。それは、「表現・言論を戦わせてより健全な民主主義国家を作る」という思想に根差したものです。
しかしこれも絶対無制限でなく、それに名を借りたようなものは個別に罰せられます。代表例は「わいせつ表現」「名誉棄損にあたるような行為」「個人情報の勝手な書き込み」といった類型で、これらは戦後の判例で確立されたもので、現在もそれにいたります。
実は日本では「表現・言論の自由に対する例外的な規制」は上記程度しか判例で確立されていないため、「天皇制反対」や「憲法9条反対」、さらにはこの映画の通り「ナチス万歳」という表現も基本的には禁止できません(もちろん、こうした評価サイトが個別に「いい加減にしろ」ということで制約を入れることはある。これは私人間の話)。
つまり、国として反省するドイツが一定の表現の自由に制限をかけているのとは対照的に、日本は「他を害するものは許されない」という立場にたつのであり、それはその通りなので、極論、先の第二次世界大戦で日本を擁護するような発言も基本的には自由です。
日本とドイツは同じ敗戦国だし、民法(日本の民法はドイツ民法をまねて作られています)や憲法などかなりの部分が似ますが(「英米法」と「大陸法」の概念)、細かいところで差があります。その最たる例が「表現の自由の規制の度合い」です。
実在のボクサー アウシュビッツのテディ
4と4.5の間で、厳しめの星4つ。
素晴らしい映画です。
観たい映画が時間が合わなくて、時間が合ったので、とりあえず観てみたんだけど、
観て、よかった!!
事実に基づく話で、実在のボクサーの話、すごい話です。
最後、泣きそうでした。
実在のアウシュビッツのボクサーの話としか情報を入れてなかったのですが、それが正解でした。
これから観る方は、情報を入れないで観た方が絶対に面白いと思います。
暗くて静かで眠くなる映画かな?と思ったら、そんな事なく観やすかったです。
時間も91分とコンパクトですが、濃厚濃密な内容で大満足。
ボクシング好きは、もちろん。
そうじゃない方にも、オススメです。
主演の方は、ヒュー・ジャックマンに似てます。
人は、優位になると悪魔になる!
ドイツ人は、真面目で働き者。日本人に通じる。しかし
権力を持つと残酷になる。まあこれが現実だな。
テディは、元アマチュアのボクシング選手。
ドイツ人は、基本に忠実な選手が多い。
しかし人を殺して殺して殺しまくってるね。
テディは、身体の大きな選手のパンチをかわしてかわして闘うんだな。
ラストは、戦後自分らしく生きれてよかった!よかった!
命と尊厳
第二次大戦中のポーランド。”テディ”の愛称で親しまれたボクシングの元チャンピオンはアウシュビッツに送られ、『囚人番号77番』と呼ばれることになり・・・
実話なので主人公が生き延びた事は分かっていても、警護兵の気まぐれでいつ殺されてもおかしくない状況は緊張の連続でした。
「あきらめずに希望を捨てずにいれば、きっと夢は叶う」というきれいごとは通用しない、狂った世界。いや、希望を持つのは大事だけれど、将来の事など考えられない、その日その日を生き抜く事がやっとです。
ガス室送りになる人々を見て、どこに行ったか分からない妻と息子の事を考えたでしょう。
こういう状況で正気を保ち続けることの難しさ。
「今この場で服を脱げ」と言われて拒否した少女。自分を気遣ってくれた人を攻撃することを拒んだ少年。
では、生き延びる為に憎い相手に媚を売る行為を責められるのか。
テディは人としての尊厳を守り抜いたけれど、本人の強さだけではなく、幸運だったんだろうと思いました。アウシュビッツを出られることになった時にも、テディに笑顔は無く、笑える日が来るのはもっと先なのでした。
非常に重い作品ですが、観て良かったです。
アウシュビッツの惨さ…
映画館で見るべき作品
ARBEIT MACHT FREI
アウシュビッツの最初の囚人の一人で元ボクサーの男の実話をもとにした話。
囚人番号77番のテディが、カポの仕掛けたパンを賭けた悪ふざけに巻き込まれたことが切っ掛けで、収容所内のボクシングの選手となっていくストーリー。
衛兵達の娯楽として始まったボクシングで強さを認められて重労働からは外される様になり、ボクシングに勝つことで大量に与えられる食料をみんなに配り、そして生き長らえていく様や、彼と仲良くなった若い囚人との様子をみせていくけれど、主人公そのものにはあまり変化がなく少し単調。
まあこれと言ってというところで、他の囚人のストーリーを繋いでいるのだろうし、その内容はちょっと選択を誤れば常に死に向かう恐ろしく悲しいものではある訳だけど。
そういう意味では常に先の読めない展開でスリリングさはあったし、一つの映画として良かったけれど、アウシュビッツのチャンピオンのテディをみせる映画としては波も小さく盛り上がりに欠けるものではあったかなという感じ。
拳ひとつで生き抜く
僕はボクシングが大好きである。拳ひとつで生きるボクサーを敬愛している。
この映画の主人公テディもまた拳ひとつでアウシュヴィッツ収容所を生き延びた。この映画のなかでユダヤ人が次々にガス室に送り込まれ、撲殺され、銃殺され、吊るされ、目を覆いたくなるほどの残虐な光景が描かれるが、そんな地獄のなかで彼のボクシングにユダヤ人たちは癒され勇気をもらい、またナチスの鬼畜どもも魅了され、彼に食料や医療を与えた。これは結果的に飢えた人達を救いもした(焼け石に水かもしれないが、その時には地獄のなかで大変な幸せを感じたと思う)。なぜ人は強いボクサーにひかれるのか。特にテディは防御に優れ、相手のパンチを「霧のように」かわすテクニシャンだった。収容所の中で彼のボクシングスタイルは何か暗示的でもある。
褐色の爆撃機ジョー・ルイスのライバルであり、ボクサーを引退した後に経済的に困窮したジョー・ルイスを匿名で援助し続けたとも言われるドイツの英雄マックス・シュメリングのスクラップ記事を見ながら収容所所長の息子が「なぜ偉大なドイツ人が負けたの?(多分ジョー・ルイスにだろうな)」という場面、何気に感動してしまった。ここで映画の中の地獄と現実の世界との繋がりを実感した。因みにこのマックス・シュメリング、実は反ナチスの人(ナチスはドイツの英雄を入党させようと何度も試みたが断固として拒否し続けた)で、収容所の所長が息子に「トレーナーがユダヤ人だから負けたんだよ」て言ってるのは別にジョークではない。史実に基づいて所長でもある父親にそう語らせたのだと思う。
実在の人物らしいが。
全34件中、21~34件目を表示