劇場公開日 2023年5月5日

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EO イーオーのレビュー・感想・評価

全68件中、61~68件目を表示

5.0楽園追放:ロバの場合

2023年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2022年。イエジー・スコリモフスキ監督。あるサーカス団で少女にかわいがられていたロバのイーオーは、サーカス団の解散によって別の場所に引き取られていく。幸福な日々を失ったロバは、少女との日々を忘れられずに逃げ出すが、人間世界の思惑に巻き込まれていく、という話。
ロバの主観をなぞる不思議な感覚だとおもいきや、そこでとどまらず、人間の主観にも寄り添っていく。人間とロバの間を視点が揺れ動くことで、自然のうちに、複数の主観の一つとしてのロバの主観に入り込んでいる。そのうえさらに、誰の主観ともいいきれないイメージ映像のようなもの(動物のような動きをするロボットとか)も挿入してくる。ロバからは能動的・積極的な意味が出てこないので(言葉でしゃべれないし表情をつくれない)、人間ではなくロバ、ロボットではなくロバ、という対比を通じて「ロバなるもの」が表現されているのかもしれない。だからことさら、どうでもいい人間たちの姿や、どうでもいいロボットの姿が描かれるのか。

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4.5ロバ主人公のスコリモフスキ監督の新作

2023年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

イエジー・スコリモフスキ監督の新作なので、日本公開日(5月5日)にHTC渋谷で鑑賞。
ロバの眼を通した見た世界が描かれているようで、ロバに見られている自分を感じるような映画であった。

ロバが主人公の映画…と言えば、すぐに出て来るのはブレッソンの『バルタザールどこへ行く』だが、バルタザールでは1頭のロバが様々な飼い主を転々としていくが、本作もそれに近い。
本作では、EОと呼ばれるロバはサーカス女性カサンドラに可愛がられるが、その後転々と様々な人たちと接することになる。そして時々、可愛がってくれたカサンドラを思い出す。
このカサンドラを演じた女優は、ちょっとだけエル・ファニングに雰囲気似ている感あり。

また、本作はアチコチで「う~ん、映像美!」というシーンが多々あり。
『2001年』スターゲートを想起させられる場面なども印象的。

EОはサッカーやトラック運転手に運命的な作用をしているかに見えたりするが、サッカー場面では「♪チームカラーはわれらの誇り」とか「♪青と白が勝利をつかむ」などというチャントが、個人的に気になった。
明日(2023年5月6日)、3度目のアジアチャンピオンを目指す浦和レッズの対戦相手アルヒラルのチームカラーは青。ちょっとタイミング的に「青い方が勝利をつかむ」などと勝手に伝わって来て困った(笑)

奇しくも、5月5日はスコリモフスキ監督の誕生日。映画会社としては「金曜日だし、GWだし、…丁度いい」という感じだろうか(笑)
さすがスコリモフスキ監督、なかなかの佳作。

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たいちぃ

3.5EOどこに行く

2023年5月5日
iPhoneアプリから投稿

現代でロバがそんなことになる?って疑問だったけど、ちゃんと現代のバルタザールどこへ行くだった
恵比寿のポーランド映画祭の先行上映に向かう途中でチケット完売ツイート読んでガッカリして、一般公開を首を長くして待った甲斐があった

あのちょっとびっくりするシーン、観客がオォッ…って物凄い一体感があったな
映画館で見られてよかった

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m m

4.0なにを観ていたのか なにを見させられていたのか

2023年5月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

最初に感じたのは映像の美しさでした
正直こんなに綺麗だとは思っていなかったので一気に惹き込まれるきっかけになりました
そしてこの映像と音がセリフのほとんどない世界にぐっと没入感を与えてくれます
スクリーンとの距離があるはずなのに…気が付けばこの世界の先頭に立っているような
そんな錯覚さえ覚えるほどに

最後エンドロール前、私の魂が幾分か失われた
そんな気持ちになる作品でした

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次久人

3.5ロバ目線で描かれる人間社会の愚かさ。

2023年5月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

ロバ目線で描かれる人間社会の愚かさ。
サーカス団のロバのEOが、あることをきっかけにポーランドからイタリアに一頭で旅に出る姿を描いた、社会派ロードムービー。

EOの純粋さや感情が段々と表情から分かるようになるので物語が進むほどハラハラ…。

ロードムービーとしての面白味と絵画のような映像美に引き込まれます。
これは、スクリーンで観たら圧巻かと👀

ポスター通り"赤"がポイントになった視覚演出は結構インパクトがあって、不穏さが際立っていました…。

直接的な暴力描写はないものの、動物好きな私にはズシン…と来ました。
GUNDAを彷彿とさせられる特別な一作だと思います。

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山田あゆみ

4.0ロシナンテ

2023年4月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

2023年4月22日
映画 #EO #イーオー

愚鈍のイメージのロバのつぶらな瞳から見た人間世界の不条理を描いてます
ロバの感情?表情?はほぼ瞳からのみ発せられるけど、何かが伝わるんですよね

アメリカの民主党のイメージトレードマークはロバでしたね

@FansVoiceJP さん試写会ありがとうございました

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とし

4.0手堅いプロの技術、豊かな寓話

2023年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ともかく撮影技術の面では現在の世界最高峰に連なる作品。目を引かれるのは周到に組み立てられた照明だけど、本当に斬新なのはサウンドデザイン。水滴が落ちる、木々の間を風が吹き抜ける、車のタイヤのきしみ、どれもきちんと考えられ練り上げられたサウンド。

そして物語は、映画史的伝統にしっかりと根ざしていて、複雑な記号の網の目が豊かな読みを可能にしている。文学や哲学の研究者が見ると夢中になるのでは。とりわけ、映画の終盤でロバのイーオーが湖にかかる高い橋をわたって、天国へ向かう途中のような静かな庭園に至る場面は、近年まれな美しいショットだと思う。

ブレッソン『バルタザール』からの広義の翻案だけど、そこに現れる暴力や悪意がむき出しで苛烈なのも、まさにいまの時代の映画として撮られた証拠。

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milou

3.0喋らずとも大きな瞳が雄弁に語る

2023年2月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

1頭のロバの目を通して描かれる、人間のおかしさと愚かさ。ある者は友人のように接してくれたかと思えば、ある者は野良ロバとみなして荷物の運搬に使おうとする。一方が幸運を呼ぶシンボルと崇めれば、もう一方は不運をもたらした厄介者扱い。1頭の動物を主軸に描く人間模様といえばスピルバーグの『戦火の馬』もあったが、本作ではよりシニカルだ。
セリフはしゃべらずとも、どこかしら憂いを含んだ大きく映し出されるEOの瞳が、物語を幻想的かつ雄弁に語らせる。「自分の役柄に想定された意図に従って仕事をし、監督のビジョンに口をはさまない優れた俳優」とロバを称賛するスコリモフスキ監督。『15時17分、パリ行き』で、88歳(製作時)のクリント・イーストウッドが実際に起きた銃乱射事件を、俳優ではなく当事者本人を起用して撮影したように、84歳(製作時)の奇才の手にかかれば、動物すら名優にしてしまう。
奇才には、年齢などただの数字でしかないのだ。

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regency
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