劇場公開日 2023年5月5日

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「喋らずとも大きな瞳が雄弁に語る」EO イーオー regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0喋らずとも大きな瞳が雄弁に語る

2023年2月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

寝られる

萌える

1頭のロバの目を通して描かれる、人間のおかしさと愚かさ。ある者は友人のように接してくれたかと思えば、ある者は野良ロバとみなして荷物の運搬に使おうとする。一方が幸運を呼ぶシンボルと崇めれば、もう一方は不運をもたらした厄介者扱い。1頭の動物を主軸に描く人間模様といえばスピルバーグの『戦火の馬』もあったが、本作ではよりシニカルだ。
セリフはしゃべらずとも、どこかしら憂いを含んだ大きく映し出されるEOの瞳が、物語を幻想的かつ雄弁に語らせる。「自分の役柄に想定された意図に従って仕事をし、監督のビジョンに口をはさまない優れた俳優」とロバを称賛するスコリモフスキ監督。『15時17分、パリ行き』で、88歳(製作時)のクリント・イーストウッドが実際に起きた銃乱射事件を、俳優ではなく当事者本人を起用して撮影したように、84歳(製作時)の奇才の手にかかれば、動物すら名優にしてしまう。
奇才には、年齢などただの数字でしかないのだ。

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