劇場公開日 2023年4月14日

  • 予告編を見る

「オープニングから犯人を明かすものの、徐々にその人物の人となりを丁寧に見せていく手法が効果的だ。さらにタイトルの背景となるイランの聖地マシュハドに灯る灯りと街並みが蜘蛛の巣のようで不気味である。」聖地には蜘蛛が巣を張る jollyjokerさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0オープニングから犯人を明かすものの、徐々にその人物の人となりを丁寧に見せていく手法が効果的だ。さらにタイトルの背景となるイランの聖地マシュハドに灯る灯りと街並みが蜘蛛の巣のようで不気味である。

2023年4月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

宗教(思想)、貧困、女性蔑視(差別)という、イランに限らない現在の問題を、ジャーナリストの目を通して追求していく問題作だ。

夜の街に立つ娼婦と、品定めして声をかける男たち。ドラッグで自分を奮い立たせながら暴力に屈する娼婦を、短いシーンで的確に描いていく。警察(権力)、司法(政治)、女性など、ある意味ではステレオタイプなのかもしれないが、キャラクター造形は判りやすく、ごく普通の男が歪んだ思想を正当化して連続殺人を犯していくという恐ろしさが際立つ。

殺人シーンのカメラはアップで捉え、女性の表情にリアリティがあるし、夜道を走るバイクを後方から追うもの、一仕事終えた解放感さえ感じ、「娼婦は汚らわしいので浄化する」とう考え忠実に従う男の実直ささえ映す。

2023年現在日本でも問題になっている宗教二世についても触れていて、思想の刷り込み の恐怖さえ感じる。

聖地とは? 明るい街並みに引き寄せられるが、蜘蛛の巣に気づかずに捉えられてしまう弱いものは「聖地」に暮らすことさえかなわないのか。

jollyjoker