島守の塔のレビュー・感想・評価
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今ある日本は、命は、全て戦争によって失われた命からなるもの。 だか...
今ある日本は、命は、全て戦争によって失われた命からなるもの。 だからこそ、同じあやまちは繰り返してはいけない。 今ある命を、これから生まれてくる命を 大切にしなければいけない。 それを噛み締める映画だった。
死ねという武官とと生きろという文官
昭和19年から20年の沖縄を舞台に、戦時下における民間人をみせる話。 戦争映画ではあるけれど、戦闘シーンは無く、空襲を受ける民間人や傷病兵の看護をする女学生そして、民間人を生かす為に尽力した警察部長荒井退造と県知事島田叡を讃えるところを主としつつみせていく展開であり、戦時下の理不尽さや悲哀と人間味を感じる作品。 やり切れなさは堪らないものがあるけれど、人の死に纏わる部分の見せ方が舞台劇的で、ちょっと演出過剰に感じる部分が多過ぎて、個人的には返って泣けずテンポが悪く感じてしまった。 ただ、劇場内は鼻水を啜る音が響きまくりだったし、国内に於ける唯一の地上戦の影響をみられるみるべき作品ですね。
島田知事の話は ドキュメントでもドラマでも テレビ放送なら気付く限...
島田知事の話は ドキュメントでもドラマでも テレビ放送なら気付く限り見ている。 この映画も間違いない感じ。 沢山の人に見て欲しいし知って欲しいけど、 もう少し費用を自由に使わせてあげたかった。 全編通して愛を感じる、切ないけどでも素晴らしいお話でした。
予算の厳しさが透けて見えた
沖縄の「見捨てられた感」を全面に出した作りでした。 大本営の無策と本土攻撃を遅らせる時間稼ぎの方針により、軍部は沖縄を見捨てたと。 そのせいで、第32軍司令部 牛島司令官らは、沖縄県民を巻き込んで無駄死にしていき、沖縄県民の4人に1人が亡くなったという描き方。 国体・国家奉仕を口にする者は、無辜の市民を死なせ、責任の取れない命令を出しておきながら、まともな判断もできず、国民を見捨てるという点を強調していました。 ここに加えて米支配時期に受けた差別、日本返還されたが福祉もライフラインも放置されて、未だ基地を押し付けられてりゃ、沖縄の人々が本土を信用できないって姿勢も理解しやすい流れは見えてきます。 物語として、島田も荒井も、文官として軍の方針最優先だったのに。 そんな中で、最後の最後に、せめて生き残った人々を疎開させよう…… と決意した(今の時代に尊敬され碑がたった)としても、手遅れよね、と。 一番良かったのは、標準語教育の熾烈さと、方言(沖縄語)を使うとスパイ扱いされて銃殺された事実を逃げずに描いていたこと。 あと、末端の(沖縄出身ではない)兵士は、平気で住民を捨て駒扱いし、住民を逃げた壕から追い出して食料を奪ったなどのシーンもあったこと。 厳しかったのは、明らかな低予算制作で、戦闘や空襲のシーンはほとんどなく、過去の記録映像を使っている点。 カツカツなのはわかるが、会話劇だけになっちゃってて。 最近だと、『峠』に印象が近いです。 この手の映画では、軍部が悪い、いかにも洗脳された子ども達や若い兵士が愚かな被害者だ、って描写が多いのですが。 (それもまた、過去を反省しつつ、悲劇を繰り返さないためには大事ではあるのですが) ・日本側の戦争回避できなかった外交の不始末(この点はアメリカや他の連合国にも責任はあると思うが) ・戦争に突き進むように煽った国民、同調圧力さえ伴った時代の空気 ・アメリカや連合国の戦力分析を怠った軍トップ、政治家、官僚などの責任 ・体裁やプライドだけを考えて、戦争の止め時を間違えたこと、降伏敗戦受け入れの遅さ などへ言及することが少なく。 戦後ドイツのように、ちゃんと分析と反省を踏まえた学校教育等を日本はやってないので(この辺、東京裁判も、教科書等へ載せる史観も「曖昧にする」が主軸みたいだから)仕方ないのではあるが。 大本営に従った現場レベルのことだけを描写して、感情に訴えていいのかな、というのがモヤモヤポイント。 昔ながらの「戦争の悲惨さ」「住民はアメリカと日本軍部の被害者」だけに絞って作りつつ、現代の価値観で当時をただ否定するタイプの映画が、最近は陳腐に感じてしまう私でした。
この平和をもう一度噛みしめる、あまりにも凄惨で苦しい現実
何かと沖縄を考える年だと思うのは、沖縄本土復帰50年の節目を素人ながらに感じていたからだろう。そんな節目に、知らなかった沖縄の姿…いや、戦火を見る。 沖縄に対して知っている知識が少なく、自分は地上戦があったことくらい知らなかった。ぼんやりと島田叡氏の存在を知っているくらい。それを自身の知識不足というべきだと思うが、やはり風化ゆえに触れる時間が少ないとも思う。 そうした中、沖縄にあった戦争の悲劇を今作で受け止める。単純な伝播ではなく、実際に撮られた映像を挟みながら伝えていくので、緊張感と重い溜め息が漏れる。実際はもっと酷かったのだろうと思うと本当に苦しい。予算や制約がある中でも、緊迫した空気と言葉が刺さってくる。 その重みを重々受け取った上で感じたのが、群像劇にしてはピントが絞り切れていない所。全体的に伝記的な要素のまま終わってしまったように感じる。島田叡氏と荒井退造氏の「生きろ」とした市民の命の願い。受け取った比嘉凛の立ち振る舞い。そこに宿った熱い生に心を焦がす。 だが、状況によって変わっていく個々の立場を汲み取りながら観ていくのが少々難しかった。だからこそ伝記的な要素を感じつつ、その状況の中で生きた姿を重く受け止めることが出来た。本当に有った話だと、今もそこを咀嚼するには時間がかかるが…。この国に生まれたからこそ考えていきたい。 本作の主演は、萩原聖人さんと村上淳さん。2人とも舞台挨拶で語っていたのが、監督の潤たる思い。1年8ヶ月の中断を経て完成された本作に万感の想いを感じつつ、互いの置かれた状況の中で全うする姿が勇ましい。実際に島田叡氏と荒井退造氏が消息不明のままである点も感じる所があり、凄く丁寧に演じられている姿が印象的だった。 そして、吉岡里帆さんと池間夏海さん。それぞれの境遇の中、強い眼差しで未来を展望する姿に確かな生命力を感じる。無垢な瞬間との対比は切なくも強い。 順次公開のため、あまり話題にはならないかもしれない。しかしながら、この平和に至るまでの過去を今作から考えてほしい。今が当たり前ではなく、尊いものだと感じるはずだ。
萩原&村上の“イイ顔”演技が映える
まずは萩原聖人、村上淳のダブル主役が目を引く。年齢・キャリア的に中堅ベテラン枠に括られる2人を起用するというのは、失礼ながら近年の商業映画ではなかなかの冒険。集客のためには今人気絶頂の俳優を起用するのがベストなのだろうけど、結果として萩原&村上のキャスティングは、2人が演じる島田叡と荒井退造の没年齢を照らし合わせると妥当だったと思う。 とにかく2人の表情が実にスクリーンとマッチする。役作りなのかは不明だが少々増量した萩原と、顔のシワが際立つ村上。“イイ顔”していると言い換えてもいいが、枯れさも漂わせてきた彼らのシブい表情は、そこら辺の若手俳優ではまだ出せないだろう。 あと個人的に好きな女優という理由もあるかもしれないが、2人の対比とばかりに吉岡里帆の可憐さも映える。ただ彼女の妹を演じた池間夏海同様、他の女性キャストと比べて綺麗すぎる感はあるが。 クラウドファンディングで制作費を募ったというだけあって演出や視覚効果がチープなのはやむを得ないものの、邦画特有の病である劇伴の乱発が本作でも発症しているのが残念。ただ、島田本人が発したとされる言葉をそのまま喋らせたり、予算がないながらも創意工夫して見せようとしているあたりは無下にはできない。 元球児という共通点を持った島田と荒井による戦地でのチームワーク。「野球」の生みの親・正岡子規の言葉が本作のキーワード。ロシアも野球が盛んな国だったら良かったのに… 邦画が好きでない自分が本作を観てみたいと思ったのは、繰り返すようだが萩原&村上という同世代の俳優が主役だったから。もしこれが超人気アイドル事務所のタレントが主役だったら、絶対観ていないだろう。
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