島守の塔のレビュー・感想・評価
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【"生きろ!生きてくれ!"と戦争末期の沖縄に赴任して来た知事は私に必死の形相で言った・・。戦争は悲しみと憎しみしか産み出さない。今作品は強烈な哀し過ぎる反戦映画なのである。】
- 島田叡さんの沖縄県の民を思って苦悩する姿は「生きろ!島田叡 戦中最後の沖縄県知事」を鑑賞し、その尊崇な姿に心を動かされた。今作品では、もう一人栃木県出身の沖縄県警察本部長の荒井退造も描かれる。何故に彼らは敗色濃厚で、アメリカ軍が上陸して来る沖縄県に赴任したのであろうか。私は劇中、島田が"誰かがヤラナいかんだろう。と言う言葉の重さが心に沁みた。-
◼️今作品は各地の地方新聞社や、放送局が連携し、製作費を出資している。ジャーナリズム魂を感じる。
◆感想
・戦火が激しく成る中で、島田が沖縄県民の保護より、戦意高揚を優勢する大本営を始めとした軍部の論理に苦悩する姿。
- 大本営は沖縄地上戦で、時間を稼ぎアメリカ軍の本土上陸を、少しでも遅らせようとする。大和民族は、沖縄の民を"理由した"のである。
牛島満中尉(榎木孝明)は、温和な人物だったそうだが、彼の達観した様な表情は印象的である。彼も又、軍人ではあるが、大本営に"理由された"のである。-
・知事付きで、大日本帝国に誤った思想を植え付けられていた比嘉凛(吉岡里帆)が、島田の言葉によって、呪縛が解かれて行く姿も、"島田の想いが、漸く彼女に伝わったのだな・・"と思い、沁みた。
・沖縄県民ではなかった島田と荒井が大勢の県民を県外疎開させようとする姿は、崇高である。
・万策尽きた二人が、沖縄の森の中で野球のボールを弱々しく投げながら、支え合いながら、森を出て行くシーンも実に切ない。
<当たり前であるが、戦争は悲しみと憎しみしか産み出さない。絶対に起こしてはいけない事だと言う事を再認識した作品。老いた凛を演じた香川京子さんが、島田から受け取ったモノを墓前に備えるシーンも、"生の大切さ"を表した、佳きシーンである。>
◼️最近、ロシアを統べる男が予備役で、30万動員する事を公表したが、あの男は自ら追い詰められている事を認めた様なモノである。ロシアの罪無き民が、嘗ての沖縄県の民と同じ思いをしない事を祈るばかりである。
説明不足が残念
8月のこの時期は、毎年映画やテレビで太平洋戦争関連の作品が上映されることが多いですが、本作もそんなカテゴリーに入るものでした。本作で取り上げた沖縄戦は、恐らく日本の戦史の中でも極めて悲惨な被害が出た戦争の一つだと思われるので、普通に取り上げれば涙なくしては観られないものになりますが、そういった感情は取り敢えず脇に置いて感想を述べて行きたいと思います。
まず登場人物ですが、主人公は官選の最後の沖縄県知事となった島田叡(萩原聖人)と沖縄県警察部長の荒井退造(村上淳)、そして県知事の秘書役の比嘉凛(吉岡里帆)の3人でした。島田と荒井は実在の人物で、いずれも県外の出身者。沖縄戦が終結したとされる昭和20年6月23日の3日後に消息が不明となり、いまだご遺体も見つかっていないとか。島田は、軍との折衝を行なったり、食料が足りないというので台湾に行って米を調達したり、タバコや酒を放出したりして県民の生活を物心両面で支えようと努力しており、 戦後になっても沖縄県民に人気があったようです。こうした人物がいたことを本作を通じて初めて知ることが出来たことは、非常に意義深いものだったと感じました。
ただ残念だったのは、沖縄戦終結直前に、「沖縄県民かく戦えり」で有名な電報を東京に送った大田實海軍中将が登場しなかったこと。少し調べたら、島田と大田は知己の中であり、既に通信手段を失っていた県庁の代わりに電報を打ったようなので、是非本作でも取り上げて欲しかったと思います。
また、沖縄方面軍の指揮官であった牛島満中将(榎木孝明)が、自らの伝手で島田を沖縄に呼んだことになっていたものの、実際は牛島の補佐役であった長勇少将(成田浬)の伝手であったらしいことや、史実では牛島が言ったらしい「文官だから死ぬことはない」という発言が島田の発言になっていたりと、史実ベースに話を進めた方が良かったのではないかと思える部分もあり、少々疑問でした。
主人公の中で唯一創作の人物であった比嘉凛は、序盤から「軍国少女」であることが殊更強調されますが、島田の言葉に感化されたためか、最後は殺されそうになったアメリカ軍に投降します。まあこれはこれでお話なので良いのですが、どういう経緯でアメリカ軍に襲われたのかがイマイチ不明確で、ちょっと疑問でした。また、「捕まると女は乱暴される」など、アメリカ軍の残虐性が喧伝される中、島田は比嘉に対してこれを否定していたものの、最後は比嘉を含む多数の民間人が、上陸したアメリカ軍に襲われるという展開になっており、この辺りも話の流れがゴチャゴチャしているように感じられました。
戦記物という側面では、もう少し登場人物のいる場所や戦闘のあった地理的な説明を分かりやすく取り入れて欲しかったと思います。一応北に行け、南に行け、東に行けと言った言葉が飛び交うものの、沖縄の地図を基に、距離や地形をもっと説明してもらえれば、当時の大変さがより鮮明に伝わったのではないかと思います。
また、予算の都合なんでしょうが、戦闘シーンがほぼ音響に頼っており、映像としては当時のアメリカ軍の記録映像がメインで、この辺りは非常に貧弱な感じがしました。
あと比嘉凛の妹の比嘉由紀(池間夏海)が壕で攻撃を受けたシーンは、何が原因で亡くなったのか全く不明でした。催涙ガスだか毒ガスだか分からない煙が出る爆弾が原因らしいものの、壕にいたほかの人達がバタバタと倒れているのに、由紀だけは最初平気な様子。それがある時から突如調子がおかしくなるなんて、観ていて不自然さしか感じませんでした。
以上、登場人物という側面と戦記物という側面から本作を観て感じたことを述べて来ましたが、島田頴という人物を紹介したということの意義は大きいと思いますが、映画としての描き方としては、今ひとつ説明が不足していると思われ正直消化不良でした。そんな訳で、評価も★3としました。
沖縄守備隊司令官は国体を守るために、そして県知事と県警本部長は県民...
沖縄守備隊司令官は国体を守るために、そして県知事と県警本部長は県民を守るために、鉄の暴風の下をかいくぐって、それぞれの持ち場をそれぞれの立場で全うしようとする。終盤、ガマの中に避難していた沖縄住民を日本兵が追い出したり銃撃したりするシーンが描かれている。極限状態に置かれた沖縄で実際にあったのだ(統率する上官を失い一等兵、二等兵だけになってしまった小隊とか)。のみならず「生きて虜囚の辱めを受けず」等のスローガンを叩きこまれた当時の住民が、米兵に立ち向かっていったり、自決したりと、かなりの悲劇があった。
昨今、米中間の雲行きが非常に怪しくなってきている。万一事が起こった場合、日本もきっと巻き込まれるだろう。その時に、我々はどう行動したらよいか。悩ましいところではある。
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