戦争と女の顔
劇場公開日:2022年7月15日
解説
ベラルーシのノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチによるノンフィクション「戦争は女の顔をしていない」を原案に、第2次世界大戦後のソ連(現ロシア)で生きる2人の女性の運命を描き、第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門で監督賞と国際批評家連盟賞を受賞した人間ドラマ。第2次世界大戦に女性兵士として従軍したイーヤは、終戦直後の1945年、荒廃したレニングラード (現サンクトペテルブルク)の街の病院で、PTSDを抱えながら看護師として働いていた。しかし、ある日、PTSDによる発作のせいで面倒をみていた子どもを死なせてしまう。そこに子どもの母親で戦友でもあるマーシャが戦地から帰還。彼女もまた、イーヤと同じように心に大きな傷を抱えていた。心身ともにボロボロになった2人の元女性兵士は、なんとか自分たちの生活を再建しようとし、そのための道のりの先に希望を見いだすが……。監督は、巨匠アレクサンドル・ソクーロフの下で映画制作を学んだ新鋭カンテミール・バラーゴフ。主演はともに新人のビクトリア・ミロシニチェンコとバシリサ・ペレリギナ。
2019年製作/137分/PG12/ロシア
原題:Dylda
配給:アットエンタテインメント
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2022年11月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ようやく観れた。
独ソ戦直後のロシアを舞台にしたノーベル文学賞作品をベースにした映画。
当然エンタメじゃないからね、覚悟してみる映画だよ。
荒筋は皆さんレビューの通りです。
まったくどん詰まりの2人。
複雑な状況でお互い必要とし合い、さらにがんじがらめになって反発し合う。
別に爆弾や撃ち合いがなくても十分怖いわ。
赤と緑の美術が美しい、のっぽと赤毛2人の女優(2人とも新人)も素晴らしい。
PTSD、慰安婦、LGBT、不妊、、とか、今の時代でも大変なのにそんな物まるっと抱えて2人は戦後の不安定な時を生きて行くのだね、、、全ては戦争が悪い、、の一言で解決しちゃうんだけど、少しでもこの2人のどん詰まり感を今観てる人と共有しようという趣向の映画です。
2022年11月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
イーヤが発作に苦しむ冒頭から一気に画面に釘付けになった。しかもイーヤはかなりの長身で、周囲の登場人物と比較すると明らかにサイズが一回りくらい大きい。そのビジュアルに一瞬ギョッとしてしまうほどである。彼女はマーシャから”のっぽ”の愛称で呼ばれており、本作の原題も”のっぽ”だ。
以降はイーサの置かれてる状況やパーシュカとの仲睦まじい様子が微笑ましく描かれていく。しかし、そんな和やかなシーンもここまで。発作を起こしたイーヤは、ある晩”取り返しのつかない事件”を起こしてしまう。それによって彼女の運命は過酷を極めていくようになる。
本作の監督はこれが長編2作目の新鋭らしい。ロングテイクと俳優のクローズアップを多用する豪胆無比な演出は新人らしからぬ大胆さに溢れている。ネタバレを避けるために書かないが、先述の”取り返しのつかない事件”を描くシーンもかなりねちっこく撮られており鬼気迫る迫力が感じられた。一体どういう演出をしたらこのようなカットが撮れるのだろう?
その後、パーシュカの実母であり戦友のマーシャが帰還し、映画は常にヒリつくような緊迫感が持続し、寸分もタルむことなく進行する。
緑と赤を巧みに配した色彩センスにも唸らされた。やや狙い過ぎという個所もあったが(例えば緑のペンキなど)、要所で鮮烈な印象を植え付けることに成功している。
上映時間2時間20分弱。正直、観終わった後にはどっと疲れた。と同時に、元女性兵士の悲惨な運命には色々と考えさせられるものがあった。
本作は戦争で心身を壊されてしまった女性たちが「死」の世界に「生」を見出すというドラマである。そこに母性讃歌のような深い感動を覚える。しかし、イーヤとマーシャの愛憎を見てると、単純に感動だけで片付けられない側面もあるような気がした。
イーヤは完全にマーシャに精神的に依存しており、それどころか友情以上の愛情を抱いている。マーシャのためならどんな犠牲も払うという献身ぶりは、観てて非常に辛かった。
一方のマーシャはイーヤの愛を知りながら、その思いを裏切り、踏みにじり、身勝手に振る舞う。彼女の凄惨な過去を知ると同情せずにいられない面もあるが、それとイーヤに対する無下なる態度とは無関係である。余りにも愚劣と言えよう。
こうしてみると、イーヤとマーシャの主従関係は、まるで上官の命令に絶対服従の”軍隊”のようでもある。
一見すると戦時下に芽吹いた女性たちの固い絆を綴った作品のように思えるが、冷静に考えるとそこには愛に盲従する人間の依存性といったものが見えてくる。人はこうも残酷になれるのか…人はこうも弱い生き物なのか…と悲しい気持ちになってしまった。
キャスト陣の熱演も素晴らしかった。
イーヤとマーシャを演じた女優は馴染みがなかったが、IMDbを見ると今回が映画初出演らしい。それでこの演技とは恐れ入った。凄まじい情念をほとばしらせながら夫々のキャラクターに生々しい息吹を吹き込んでいる。
他に、院長や全身麻痺の英雄ステパン、マーシャに入れ込む青年サーシャといったサブキャラが物語を上手く掻き回しており、夫々に上手く存在感を出していたように思う。
2022年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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地味な話でけっこう退屈したのだけど、映画的にずっしりと重いものを見た気がする。子どもが死ぬのはつらい。主人公のでかい女がもっと大暴れするところが見たい。50歳の院長はまだちんちんがたつのかと驚いた。美術も撮影も素晴らしくて、本当に当時のその国で撮影したかのようだ。寒そうだ。路面電車は当時のものがまだあるのだろうか。
友だちの女が金持ちのボンボンの家に行って値踏みされて、逆に言い返すところ、非常に居たたまれない。
2022年9月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
第二次世界大戦後のソ連で戦地でのPTSDに悩まされながらも希望を見出そうともがく2人の女性の話。
序盤は2人の主人公の関係性や状況把握に一生懸命であまり気になってなかったけど、次第に赤と緑の色彩がたくさん使われていることに気がつく。緑がイーヤの色で赤がマーシャの色で次第にその色が混じりあったり違う色を身につけ始めたりするのは、映画でよくあるお決まりの使い方。
その2色、部屋や服にほとんどドロッドロとも言えるぐらい原色で使われているのに、一歩外に出るとその色が完全に隠される。この感じが傍から見たら普通に暮らしているように見えても、内部では血みどろの苦しみを抱えてるように見えて悲しかった。
そして女性兵士の本当の意味が明かされ、ある女性が言う「助けてあげる」の言葉の後に、外にも赤と緑が表れる。それが不穏さと開放感の入り交じった赤と緑の移り変わりでこれもまた秀逸。
あと印象的だったのはシャワー室のシーン。全裸の女性達が体を無心で洗うのがちゃんと映されてるのだけど、綺麗な女性のシャワーシーンというより、どちらかというと労働後に無心で体を洗う男のシャワーシーンに近い。女達だって働いて汚れた体を男たちの知らないところで無心で洗い流している。
今作、マーシャは、希望を見つけるためにもがく過程の話。イーヤは初めからマーシャが希望で、どうにかマーシャのためになろうともがく話。お互い傷ついてるのにもっと傷つけ合うからしんどい。「ハンドメイズテイル」と同じようなことしてるえぐいシーンもあったし。