「スリラーのようで」ブラック・フォン ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)
スリラーのようで
スリラーに非ず。なんならちょっとホロッと来るストーリー。
1978年のコロラド州を舞台に、連続少年誘拐事件に巻き込まれた気弱な兄のフィニーと、現実とリンクした不思議な夢を見る妹グウェンが、フィニーは脱出を、グウェンは救出をするため奮闘する、謎解きスリラー&兄弟愛&友情&家族愛+ちょこっとホラーの寄せ鍋ムービー。
フィニーは気弱で学校ではいじめられ、酒浸りで気難しい父親にも逆らうことができない。一方のグウェンは超勝ち気でフィニーが暴力を受けている現場を見かけて、大きな石!でいじめっ子をぶん殴るアグレッシブさ。かと思えばとても可愛らしかったり健気なところもあり、もう最初から終わりでずっと妹かわええ…、となること間違いなし。
一方のフィニーは、もうちっとしっかりせえよ、と序盤は思うんだけど、そこがこの映画の一つの見どころ。
フィニーたちの住む町では、同じぐらいの年頃の少年たちが行方不明になる事件が5件起きている。中には彼と野球で対戦したブルース、親友のロビンも。
ある日、下校途中に妹と別れて一人になったフィニーが、黒い風船の入った黒いバンに引きずり込まれていく。
フィニーが監禁されて閉じ込められるのは、もうお約束の地下室。ここ最近観た映画での地下室ヤバイ率がとにかく高くて、家を作っても地下室を作るのはやめましょうキャンペーンをしたくなるぐらいの大活躍である。
その地下の部屋には鍵付きの扉、高い位置に小窓、マットレス、そして線の切れた黒電話。
準主役の黒電話の登場である。
さっき書いたように黒電話は線が切れていて、もちろん使うことができない。だけど、フィニーがマットレスにうずくまっていると、鳴らないはずの黒電話が鳴り始める。
その電話の相手とは?
そしてもう一つの要素である妹の夢。たびたび現実に起こるものを夢で見るグウェン。はっきりとは言わないが母親は同じような能力を持ち、それがもとで命を絶っているようで、父親はその能力をグウェンが持っているかもしれないことを頑として認めない。
しかし、フィニーが誘拐されてから、過去に誘拐されていった少年たちの夢を見るようになり、監禁現場の真相に近づいていく。
この黒電話の使い方が実によく考えられていて、最初はよく分からないのだけど、そうか、そういうつながりになっていくのね、と理解できるとちょっと怠い展開だった中盤以降が一気に面白くなっていく。
スティーブン・キングと私の相性は大変よろしくないのだけど、息子のジョー・ヒルとは案外悪くないのかも。お父さんもこれぐらい、読んで後悔した…ってならん納得エンディングを用意してもらえると、もう少し相性良くなる気がするんだけど…。
コメントありがとうございます。
現実なのか夢うつつなのか分からない雰囲気に惑わされたのが面白かったです。誘拐シーンが童話に出てくるような展開でなんじゃこりゃとはなりましたが…。
共感&コメントありがとうございます。
被害少年の登場と電話の音に何度もビビりまくった作品でした。でも、単なるホラーテイストのサイコスリラーではなく、おっしゃる通り“ちょっとホロッと来る”感じがよかったです。