「「リトルダンサー」歌バージョン?」母へ捧げる僕たちのアリア ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
「リトルダンサー」歌バージョン?
父親は不在で母親は寝たきりの植物人間状態、兄は3人ともまともな仕事についていない、海が近い観光地南仏での団地暮らしの少年の、夏休み初日から最後の日まで。
サッカー選手をケガで諦めた責任感はあるが高圧的で頑固な長男、金魚を可愛がる一面もあるがキレやすく警察沙汰を起こしてばかりの三男、軟派でナルシストだが長男と三男の間の調停役でもある次男。主人公の四男は、植物状態でも耳は聞こえているというベッドの母に両親の出会いの音楽でもあるオペラをパソコンから聴かせているが、兄達にはムダだ止めろと言われている。
夏休みの教育奉仕活動で通っているちゅうがくのペンキ塗りをしていると、教室からオペラが聞こえてくる。合唱クラブの練習生徒は女子ばかりだったが、実は有名歌手らしい女性の先生から声をかけられて練習に入れてもらうが、兄たちには理解してもらえず、先生に借りた楽譜は三男の売るクスリの巻き紙に使われる始末。
奉仕活動があることは隠して練習に参加するが、どんどん実力をつけていく。ある日、叔父の差し金で、強制的に母親が病院に連れ去られ、兄弟全員で病院から母を連れ戻す。
ピザの配達のバイトで練習に来ない主人公を心配し、団地を訪れた先生は警察が三男の家宅捜査に来たのに鉢合わせ、ピアノを破壊する警官を妨害し、勾留される羽目に。翌朝、それまで理解を示さなかった長男が警察署まで先生を迎えに行き、町を車で案内する。この家族が移民だということがわかり、映画冒頭の音楽の意味がわかる。別れ際、先生から封筒を渡される。
そんな中、とうとう母親の命が終わりを迎える。兄たちは末っ子より思い出が多いはずで、ロクに看病していなかった風でもみんな悲しみに暮れる中、先生からもらった封筒を主人公に渡す。
それは先生が出演するオペラのチケットで、一時は中学を止めようと考えていた主人公にとっての未知の世界へのチケットでもあった。
潮風が混じったドライな空気の夏の暑さが伝わってくる。邦題から最初は子供の話かと思ったが、1番下の主人公でも14歳だし、文字通りに言うと「僕たちの」アリアではないが、兄弟4人の個性や役割が面白い。サッカー好きな長男はアザールとベンゼマとチアゴを合わせたような感じ?