さかなのこのレビュー・感想・評価
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「魚道」は茨の道だけど、楽しい。
常に魚のことばかりを考えているみー坊を演じたのんの、その偽りのないクリアな眼差しが、自分が知ってる「サカナくん」のイメージと重なった。キャスティングの妙。
強烈な「好き」を原動力に、幼年期から学生時代、そして社会に出てからと、様々な失敗と挑戦と出会いを経て、「サカナ博士」という夢に少しずつ近づき、社会の中で自分の居場所を見出していくみー坊。
時にバカにされ、時に「普通」という軸からの逸脱を指摘されながらも、全く意に介さずに、一切ぶれることなく「魚道」を突き進むことができたのは、間違いなく彼女を全肯定してくれた母親の存在だろう。彼女の存在がなければ、どこかで父親に緩やかに矯正されていただろう。
全肯定と矯正、そのどちらとも親としての愛情に裏付けられるものだが、向かうべき方向性は真逆。
子の一つの「好き」を認め、育む。
そんな当たり前の大切なことだけではなく、そこを進む時に生じる、シビアな面も描いてるところに、この作品の良識を感じる。
見つけてこわそう
今また「あまちゃん」の再放送がオンエアされている。最初の放送当時は1日に3回くらい見ていたので(時を経た再放送に多少の改変があったとしても)嬉しい限りである。
本映画では防潮堤の先から海に飛び込むあまちゃんのシーンがオマージュされているし、何せキャストがすでにあまちゃんの劇中番組、さかなクン本人役と天野アキ役の能年玲奈が共演した「見つけてこわそう」そのまんまである。ギョギョギョのジェジェジェである。
私の携帯電話では(‘j’)(‘jj’)(‘jjj’)が今でも変換できるのはどうでもいいが、ともするとコミカルなイロモノ、企画モノで終わってしまいそうな体裁の本映画は立派な文芸作品であった。
特に一人暮らしを始めたミー坊の描写は秀逸と思った。陳腐な言葉ではあるが抒情的で水彩絵の具で描いたような「水」の印象すら感じられる表現であった。
さて、もうね、さかなクンの秘ヘアが拝めてしまうだけで遠くまで個展を見に行っちゃうファンからするとありがたや!である。
天然をえがく難しさ
業界には天然なのか天然キャラなのか──の命題があるが、たいがいキャラなので、じっさいの天然の問題はそこ(真偽)ではなく天然が似合うのか似合わないのかの問題になろうかと思う。
(映画やドラマを撮影しているこちら側(カメラ側)には夥しい数の人たちが居る。そのような緊迫した環境で仕事をしている人が天然というのは無理がある。)
たとえばビビアン・スーは天然が似合う人で、公ではかならず片言な日本語を話した人だった。元来知的なひとが天然を装ったキャラクターで通すことを戦略的愚直と呼ぶ。
戦略的愚直は謂わばお化粧であって良いも悪いもないが、戦略的愚直を達成するためにいちばん重要なのは愛らしい見た目だろう。天真爛漫な印象だと更にいい。ビビアン・スーの戦略的愚直はバレなかった。
のんも戦略的愚直をつかう人だと思う。
すなわちこの映画は天然キャラで売っているのんが本物の天然のさかなくんを演じた映画で、はまり役だったし、さかなくんをのんに配役した時点で7割がた完成したような映画だった。
とはいえ善意に委ねすぎで、終始気恥ずかしかった。
さかなくんの人柄で加点、のん人気で加点、さらに善良な人々が善良なことをする雰囲気が加点し、なんていうかこの映画を認めないと適応障害を認めない──かのような巧い立脚点を持ってしまっている。ほのぼのな空気感によって(言うなれば)映画そのものが戦略的愚直に便乗しており、世評も全般的に賞賛だった。
しかし(個人的には)つまらなかった。演出も気恥ずかしさが目立ち巧いとは思えなかった。
ちなみにホンモノの天然とはカスパーハウザーのような人物だと思う。純粋と同義で且つ社会を全く知らない。
だから“天然”を描くばあい言動や行動を白痴のように見せざるをえない。両手を挙げギョーと叫んで飛び回る様子が白痴ではなく“天然”に見えることが俳優のんの強みだった。絵を描いているとき絵の具が顔や服に飛散している超ベタ描写がサマになってしまうのものんならではだったろう。“天然が似合う”とはそういう意味だ。
(あえて情味のない言及をしてしまうと見た目の助け無かりせばブン殴られるようなものを天然と言う。つまり天然とは周囲の人々の容認やスルーによって成り立つ。そこにつっこみや茶々を入れない状況を含めて“天然”と言うのです。)
ただし、この映画から“社会に適用できなくても好きを突き詰めよう”といったメッセージを受け取るのは勘違い。すごく特殊な人のことを、すごく特殊な人が演じた映画だった。
一緒じゃなくていい
日本人はとにかく周りと一緒が重視される国民性と思いますが、そうじゃなくて良いと思わせてくれる映画です。
でも、本人とその周りが幸せになれる場合と思います。
大切なのは「周りと一緒じゃない=幸せじゃ無い」と短絡的に考えたり思わないことです。
懐深く共感し見守る余裕のある人が勝ち組と思います。
お魚大好きミー坊が、お魚博士への第一歩を踏み出すまで。
超自然体の“のん“のミー坊役へのハマりっぷりに
驚く映画だった。
お魚博士・さかなクンの自伝映画です。
ミー坊という主人公を女性の“のん“が演じた利点。
とてもプラスに働いたなと感じます。
さかなクンという【ちょっと世間からズレてて、不思議な存在】
何故にそれ程までに《魚が好き》なのか?
ミー坊・イコールさかなクン、ではないし、
さかなクン・イコール・ミー坊でもない。
そこが絶妙なバランスで、“のん“の若々しさと、
中性的で《好きなことしかしない》感じがとてもマッチしてる。
《好きなことなら夢中》
それが仕事になる、その幸福に成功例、だと思います。
それにしても本物の「さかなクン」を幼女誘拐を疑われる不審者、
《ギョギョオジサン》にしてしまう大胆な発想。
「さかなクン」が本者の不審者に見えて来て、
「ごめんなさい、さかなクン🙏」
・・・可哀想だよ、ちょっとメゲた!!
ミー坊の家族もヘンテコだ。
子供のミー坊が穫った「タコさん」
お父さんが、頭を引きちぎって、岩にたたきつけて、
「こうすると美味くなる」
焚き火で焼いて皆んなに振る舞って、美味しく戴く。
高校生になったミー坊。
防波堤で釣り糸を垂れている。
「ミー坊新聞に俺らのこと書くな!!」
因縁つけるスクーター乗りのヤンキー総長(磯村勇斗)
対抗ヤンキーのカミソリモミ(岡山天音)
そこへ割り込む狂犬(柳楽優弥・・・小学校の同級生のヒオだ!!)
ヤンキーの喧嘩がコミックだ!!
その上でミー坊に感化されて魚好きになる描写が、面白い。
飛び跳ねてる釣れたての鯵(あじ)さん。
頭を落とすと、3枚におろして刺身にしてしまう。
ピチピチ跳ねる尻尾がリアルで、ギョギョギョとして、
目を疑った。
殺生をして美味しく食べること。
この2つは共存するのだろう。
《殺生は美味しく食べることで、供養される》
食べることは可哀想ではないのだ。
徹底して母親はミー坊の魚好きを肯定して応援する。
さかなクンも演じる“のん“も、
好きを貫いている。
通じるものがあるのだろう。
お母さん(井川遥)すごいね!
ちょっと《はみ出してて》《魚を好き過ぎて》・・・
(言っちゃイケナイことだけれど、)
(ごく軽い発達障害みたいなミー坊)
その子を丸ごと認める包容力。
ラストでお母さん、実は魚が○○○だった。
衝撃の告白に笑うより泣けてきた。
後半、感動してなぜか涙目で観ていた。
総長(磯村勇斗)・・リーゼント可愛い!
カミソリモミ(岡山天音=ミー坊のアオリイカを食べて寿司屋に)
熱帯魚屋(宇野祥平=海人、ウミンチュ、沖縄でTシャツ買ったっけ)
モモコ(夏帆=小学校の同級生でシングルマザー)
モモコの娘(ミー坊の予備軍)
ヒオ(狂犬)=柳楽優弥(小学校の同級生。後にテレビ局員)
ミー坊を取り巻くみんなが素敵だ。
好きを貫くことの幸福
一魚一会
さかなクンの座右の銘
演じてる俳優が皆んな幸せそう
周りの人に恵まれて、
周りの人を明るくするミー坊。
勇気と幸せを貰える映画だった。
好きに勝るものはなし
さかなクンというより、完全にのんがそのまま動いている。あえてさかなクンとは別の名前であるのも納得。
主人公の行動にひやひやしながらも、最終的にそれが全て回収され、ほっこり、ほろりとする展開だった。
ポップな音楽も暖かく、作品を見守っている。
脇を飾る俳優たちも、うまく普通側の人から、影響される様子を演じていて、違和感がなかった。
途中、いわゆる”普通”の家族を想像させる描写があるものの、そこにおさまらない対比も感じられる。
応援される気持ちになる。、
2023年劇場鑑賞22本目
芸は身を助く
はい。良く私のやんちゃレビューを覗きに来て頂きました。ありがとうございます。
今更ながらのレビューでございます。
本年度はのんちゃんの主演映画が3本公開されました。(一本は兼監督)色々有りましたがクリエイターの方々は、「このまま、のんを埋れされるわけにはいかねえ!」
もう地上波は関係ない!のんは銀幕(昭和の言い回し)のスターでいい!吉永小百合とか小林旭とか高倉健とか・・
古いよ‼️
失礼しました。映画の話しにします。
この映画はさかなくんの自伝を元にしています。しかし主演はのんちゃん。冒頭のテロップで・・・
男か女かは どっちでもいい
けだし名言。今時は分けることが意味がない。色で分ける(男は白、女は紅)のも意味がない。まして合戦ってね、戦うなよ!大晦日のあの番組。言いませんが。
エライ方は伝統があるとか言う。やんわり注意しますが・・・
おい!じじい!お前の考えはクソだ‼️
失礼しました。ごめんなさい。
ミー坊(西村瑞季)はお魚が大好き。小学生の頃から。ミー坊は特にタコが大好き。わかります。タコって不思議だし。なにより美味しい。
私が小さい頃に光瀬龍さん原作の漫画「ロン先生の虫眼鏡」にタコが出てくるですね。それで夜中に上陸してさつまいもを盗む話しがあるんですね。
ロン先生(光瀬龍)は眉唾だと思っていたが、実際に目撃したんです。
そもそもさつまいもを食べるのかとか、なんでそれを知っていたのかとか、危なすぎじゃないのかとか・・・
タコは知能が高いって言うけどどのくらいなんでしょう。
閑話休題、そしてミー坊は周りの人たちの善意に恵まれました。・・・って恵まれ過ぎだっちゅうの‼️
ミー坊(さかなくん)は今や大学の先生だよ。いやいやイラストを描いていただけなんですけどね。元は。
芸は身を助く、または好きこそものの上手なれ。
実話ベースなんで致し方ないんですが、劇中の不審者(さかなくん本人)
知らない大人の部屋に入ってはいけません!
お母さんも止めろよ!
男か女は、どっちでもいい!
いやね今時だからね。野暮なのは承知ですが。でもほんわかした気分になれるのは、のんちゃんのおかげかなあ・・・
お付き合い頂きありがとうございました。
人々がのん以外考えられないと言う映画
つごう6回見ました。あべのアポロでの舞台挨拶付き試写会から始まり、集中して9月中に4回、ポストカードをほしくて1回、副音声目当てで1回
見事に日本アカデミー賞優秀主演女優賞に選ばれたので、ここに書いてなかった感想を書きます。
テレビ局主体の大手配給会社の有利な映画賞として有名なこの賞に、民放地上波からハブられてる(元能年玲奈こと)のんさんですからね。選ばれただけでも大事件でしょう。
さて
出てくる人達すべてが愛らしいですよね。子役の子たち、ミー坊の家族、ギョギョおじさん、高校生時代のヤンキーチーム、先生たち、大人になってからの、水族館の人、歯医者さん、海人さん、ぱるる(笑)、ヒヨ、総長、カミソリ籾
色々賞レースで映画がでてるけど、この映画が1番笑えて元気が出るのは間違いない。
そして、Youtubeで見た人全員言ってる「のんさん以外考えられない」
凄い映画だよ。
ありのまま
さかなクンの原作本は読んだことがあって、さかなクンはさかなクンのお母さんの子で良かったんだなって、すごく母親の在り方を考えさせられた本だった。
好きなことをとことん好きになって、それがずーっと好きで、自分が生きて行くのに必要なことになったんだなと考えると、回りの支えや、その子、その人自身をありのまま受け入れる繋がりの大切さを感じた。
好きに勝るものなし! そして、のん炸裂!!
僕は、かねてからさかなクンを尊敬している。
世の中に「すごい人」はたくさんいるけれど、さかなクンはその中でも突出した人だと僕は思う。
あの突き抜けかたはどうだ。さかなクンという存在は、ある意味、ロックでありパンクである。
さて、『さかなのこ』。
とても楽しい映画だった。
最初、主人公がのんさんだと聞いてちょっと違和感があったけれど、観て納得。中性的に脚色することで、より物語にひろがりができたように感じた。
本作のどこまでが、さかなクンが実際に体験したことかはわからないが、そんなことはこの映画の本質には関係ない。
この作品が成功しているのは、一にも二にも、のんを主役に据えたことによると言ってよいだろう。
のんの透明感、清潔感、ユーモラスな雰囲気……余人をもって代えがたい。天性の役者だという気がする。
三者面談のシーンや高級レストランでの食事のシーンが感動的だった。
「ありのままの自分」を認めてくれるお母さんや友だち、素敵です。
変わってたって、変人だって、なんだっていいのだ。
世間に迷惑をかけなければ、いや、多少迷惑をかけたって、好きなことを貫いて、やりたいことをやっていけばいいのだ、と勇気をもらった。
「好きに勝るものなし」を燃料に、ブレークスルーしたさかなクン。
あなたには一生をかけて取り組める「好きなこと」がありますか?
これは好みの問題ですが‥
(ネタバレですので鑑賞後に読んで下さい)
これは好みの問題ですが、さかなクンがモデルの少し変わった主人公のミー坊(のんさん)のどこかメルヘンに肯定された世界観を観客として肯定できるかがこの映画の肝だと思われました。
もちろん個人的にも面白さはあったのですが、自分の世界に留まってそこから世界を解釈していく描き方は、かえってミー坊の凄さを損ねているようにも感じました。
だからと言って例えばミー坊と周りとのズレや家族の離婚など、もっとリアリティある厳しい描き方をすればこの映画が必ず良くなったとも限りません。
最終的には好みの問題になります。
狭い世界に留まって肯定する邦画の問題は個人的には改善された方が良いと思われているので、しかし、のんさんの演技など他の見るべき点も多かったのでこのような点数となりました。
私はこの作品には良い観客ではなかったのかもしれません。
その点は申し訳なかったと思われました。
やっぱり、のんは良いなぁ。
ご存じサカナくんの半生の自伝映画。のんが演じる事でジェンダーも何もかも簡単に飛び越えました。やっぱり彼女は凄い!もっともっと色んな作品に出てもらいたい。母親役の井川遥も素晴らしい。柳楽くん、磯村くん、岡山くんと共演者も芸達者揃いで、見ないと損損!「好きに勝るものなし!」
2本立て2本目。高評価だが私的には乗り切れず。 主人公のんが男役を...
2本立て2本目。高評価だが私的には乗り切れず。
主人公のんが男役を上手くはこなしているが、性別なんてどっちでもいい、と近年の風潮に媚びるテロップにやや不快感。実際にさかなクンは両性なの?
さかなクンの自伝だよなと思ったら、本物登場で混乱。でもやっぱりのんがさかなクンだよね。てな訳で、なんか全てがあまりに作りものっぽくなりすぎた。だいたい高校の友人がそこかしこに絡んでくるわけないわな。不良登場あたりからなんだか嘘くささ全開。
好きなことがある素晴らしさを描いているのはいいが、もうちょっと真実を大事にして欲しかった。
のんも干されまくって久しいけれど、本作でも海に突入しまくり等、体当たり演技、頭が下がります。ヤクザな事務所忖度はやめ、彼女を使ってやってください(笑)
私たちはみんな、どこかおかしい
さかなクンの映画だけど、のんの映画でもある。
のんは「ここまで来た」のだと、素直に感服しました。
井川遥や柳楽優弥、岡山天音など、沖田監督のキャスティングも素晴らしいので、ぜひ、多くのファンに見てほしい。
自分の個性に素直であること、そして好きなことに傾注するということは、他人から見たら、おかしく見えることがある。「さかな好き」もミー坊の域まで達すると、引かれるかもしれない。
しかし、他人から見たら、おかしい自分も、内省すれば素直な譲れない自分自身である。そこに自信を持って立てる人は少ないが……。
のんの演技(演技ではないのかもしれない)は、その当たりのピュアな自分自身を、痛ましくなく、愛する自分として表現している。これは、誰にでもできることではない。
男と女、どうでもいいと冒頭に言い切るところに、仕掛けがあるのだろう。のんは実に美しい女性だが、ジェンダーを超えるとはどういう営みかを提案しているような気がした。
いろいろな過程にいる人(つまり私達)に勇気を与える作品。
のん、さかなクン、監督もでかした!
天才!
「ただの変人?」に終わらない、突き抜けたキャラと才能の持ち主を、のんが好演!男女問わず他にこの役を演じられる役者が考えられません!確かに、もう性別も何も関係ない人間としての魅力が炸裂です。面白かった!
のんが素晴らしい。井川も。かつての友人たちも。心がほのぼのとする映...
のんが素晴らしい。井川も。かつての友人たちも。心がほのぼのとする映画。そして生き生きとしている。夏帆ちゃんに普通って何?というところも素晴らしい。寿司屋の絵も、ししゃもの絵も良かった。
あなたは○○のこ?
さかなクンの自伝的小説の映画化。
さかなクンと言えば豊富な魚の知識とユニークな個性で愛されているが、かと言って半生が映画になるのか…。
なります。なるんでギョざいます。
ギョギョギョ!と驚きとギョギョギョ!とハッピーなミラクル・ムービー!
冒頭、魚を愛おしく見つめる女の子…?
この子が、さかなクンことミー坊。
演じるは、のん。
さかなクンの半生を描いているのに、のん主演で女の子…??
でも、ランドセルが黒かったり、男子の制服着たり、と言うか性別を明確にしていないような…?
開幕前にこんな言葉が。“男か女かはどっちでもいい”
そうなのだ。夢を追う事に性別など関係ない。
さかなクンの半生を忠実に描くのは誰だって出来る。誰かがあの被り物して、ギョギョギョと物真似。だけどそれだったら、ただの自伝映画。
さかなクンの魅力はそのピュアなひたむきさ。
本作が伝えたいのは、がむしゃらに好きなものが好き。人と違うはヘンじゃなく、素敵な個性。自分だけの道と夢を追い掛けていく。
さかなクンほど好きなものに没頭している人はそういない。
ただ好きってだけじゃなく、魚の事ならネットで調べるより詳しい。もはやその道の専門家、プロフェッショナル。
だけど、初めてTVに出た頃は、またまたおかしな奴が現れたと思ったもんだ。魚の帽子を被り、ハイテンションで甲高い声、ギョギョギョとヘンな喋り方をする。
今では、それがさかなクン。皆に愛されている。
が、殊にこういう人に関しては、子供の頃は決してそうじゃない。
子供の頃から無類の魚好き。見る事も描く事も食べる事も。寝ても覚めても魚の事ばかり。将来の夢はおさかな博士。
魚、魚、魚…。そんな我が子を、父親は心配。
このまま成長したらどうなるか…?
結果、心配は覆った。
夢のおさかな博士になった。自分の好きなものを極めた。
いや、今も極め続けている。謙虚に。
ようやく軌道に乗り始め、当初は魚のイラストレーターとして仕事が舞い込み、TVなどでユニークな個性が愛される人気タレントに。
タレント業はあくまで副業。本職はおさかな博士。大学の魚の教授に。
ある時凄い事が! 絶滅種の魚の再発見に貢献。その功績が称えられ、魚類学者でもある当時の平成天皇から御言葉が…!
あの魚の事が好き過ぎて将来を心配されてた子が、本当に夢を実現させ、さらには天皇陛下から称えられちゃったよ…!
これ以上ないサクセス・ストーリー。アメリカン・ドリームならぬジャパン・ドリーム。いや、フィッシュ・ドリームと言うべきか。
さかなクンを見てると、好きなものを好きで居続けられるって、何て素敵な事なんだろうと思わせてくれる。私も映画好きなもんで…。
でも当然、ここまでの道のりは平坦なものじゃなかった。あの明るいさかなクンにも苦労はあった…。
将来心配された子供時代。父親からは、ヘン。普通じゃない。
魚の事には詳しいが、勉強の方は…。もし本当におさかな博士になりたいなら、もっと勉強しないと。
だけど、どうしたらおさかな博士になれる…?
一人暮らしを始め、魚に関わる仕事をする。水族館、お寿司屋さん…。
何をやってもダメ。そのダメダメさはのび太くんレベル。それに、やりたかったものと違う…。
魚好きな事から歯医者に飾る水槽と魚のチョイスを依頼される。が、こだわり出過ぎて、コレジャナイ…。
ようやく馴染みのペットショップで仕事にありつけたけど…。
まるで小魚が大海で迷子になってるような…。
好きなものを追い続ける事は大切だけど、時としてそれが厳しい現実にぶち当たる事もちゃんと描いている。
大事なのは、ずっと好きで居続ける事。諦めない事。人の縁。…
子供時代に知り合った“ギョギョおじさん”。魚の帽子を被って、ハイテンションでヘンな喋り方で、お魚の事にとっても詳しい。まるでさかなクンみたい…と思ったら、ご本人が演じている。とってもいい人だけど、周囲からはヘンな奴。ある時誤解があって警察に任意同行されてしまったけど、ミー坊の将来の決め手になった人。
学生になっても変わらぬ魚好き。不良たちに絡まれる。が、ミー坊のピュアな心が不良たちを翻弄。見た目は“東京リ○ンジャーズ”みたいだけど、悪い子たちじゃない。不思議な事に仲良くなる。“総長”も実は魚好き。
ライバル不良チームと抗争…と言っても、ご安心下さい。『東京リ○ンジャーズ』じゃありませんから。魚が縁で彼らとも仲良くなる。
相手の喧嘩最強不良。誰かと思ったら、子供時代の幼馴染み。
この総長、ライバルチームのリーダー、幼馴染み…彼らと縁あって、ミー坊の人生が花開く。
総長とカブトガニの飼育。これに成功し、ニュースに!
ライバルチームのリーダーは寿司屋を開く。店の壁に依頼されて魚の絵を描いた所、これが大反響。イラストレーターとして注目されるきっかけに。
TVディレクターになった幼馴染み。彼の手掛けたTV番組に出演して有名に。
皆、いい奴。幼馴染みなんて、婚約者を紹介した所、将来おさかな博士になりたいミー坊を嘲笑し、ムッとする。人の夢を笑う奴なんて幾ら可愛くても好きになれない。
柳楽優弥、磯村勇勇斗、岡山天音の好演。
幼馴染みの女子とも再会。訳あってバツイチ子持ち。一緒に暮らし始め、初めて魚以外の事で楽しさや幸せを感じる。夏帆の好演。
人の縁が温かい。魚が繋いだ輪。さかなのわ。
そして、お母さん。魚好きのミー坊をずっとずっと優しく見守った。父親とは違って、我が子がとことん魚好きでも、それでいい。皆が皆同じじゃなくてもいい。個性を尊重。この支えとエールがあったからこそ。井川遥の好助演。
本作はのんの魅力無くして成り立たなかったと言っても過言ではない。
やはり最初は、さかなクンをのんが演じる?…と驚く。
だけど、さかなクンを演じられる人などいるのか…? いたとしても、先述の通りただの物真似になってしまう。
ならば、発想を変えて。誰なら演じられるかじゃなく、誰なら違和感なくいられるか。性別を超えて。
ピュアなさかなクンの姿が、のんの屈託のない魅力、唯一無二の個性、演技力にハマった。
本当に性別など違和感無くなってくる。そこには、好きなものに全身全霊の夢追い人の姿があった。
『あまちゃん』『この世界の片隅に』、そして本作と、一本一本の当たりがデカい。
諸事情で女優業をストップし、名前も変えたけど、再開。類い稀な才の快進撃はまだまだ始まったばかり。
のんもまた、夢追い人。
カブトガニの飼育、バイトを転々、ペットショップで働き、イラストレーター~TVタレントを経て、おさかな博士へ。
Wikipediaによると、さかなクンの半生に忠実なエピソードも。
それに加え、フィクションやアレンジも挿入。
のんの起用など、下手したら改悪失敗作に。
それを、見た後心温まる好編に。
そんな変化球出来たのも、沖田修一監督だからこそ。
『モリのいる場所』でもフィクション×ノンフィクションを織り交ぜ、全作品に共通するとぼけたユーモア、独特の作風、残る心地よい余韻…。
沖田修一ワールドは健在。いや、ますます絶好調。
主演がのんで良かったが、監督も沖田修一で良かった。
さかなクン×沖田修一×のん…奇跡のような巡り合わせ。
重ねて言うが、
好きなものを好きで居続けられるって事がどんなに素敵な事か、本当に教えてくれる。
好きに勝るものはナシ!
夢を追い続け、極め続ける事も。
決して自分がヘンと思ってはいけない。
そんな自分を誇りに、好きになって。
周りの縁に感謝を。
だからこそ自分の人生が好きになってくる。
いい映画だった。
さかなのこ。
この世界には、たくさんの○○のこがいる。
あなたは、○○のこ?
さかなクンxのんx映画の化学反応
最終、さかなクンは女の子設定でいくのかなと思いきや、徐々にのんが男子校生をうまく演じていって、違和感を感じなくなっていった。体当たりの演技に拍手。ミー坊の魅力にヤンキーたちもたじたじで、なんか優しい世界を垣間見たようだった。映像も作品の雰囲気とマッチしていて、なんか観る前の期待をうまく裏切ってくれて、すごく満足度の高い作品でした。井川遥のお母さん7変化もまたよし。のんのさかなクンもよかったけど、見た目としてリアリズムでいくなら岡山天音くんがさかなクンを演じるのもありかなとも思った。
何かに秀でていても、きっかけがなくてずっとくすぶってたりすることはたくさんあるけど、さかなクンは友達に見出されてよかったなと心優しくなれる作品でした。
(飛行機で鑑賞)
想像を超えた、とても普通じゃない映画でした。 「さかなのこ」でもあ...
想像を超えた、とても普通じゃない映画でした。
「さかなのこ」でもあり、「普通じゃない子」を描いてます。
破天荒な普通じゃない子を家庭の中で唯一寛容に見守り、育てた井川遥さん演じる母親の存在が大きい。
勉強が出来て良い大学を卒業して、良い就職をして、が人生の全てなのかと問いかけている。
もっと自分の好きなことに人生賭けて夢中になっても良かったのにと、大人はちょっと後悔し、子供は勇気をもらえるかもな映画でした。
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