「不覚にも共感」LOVE LIFE よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
不覚にも共感
元になった曲は知らず、事前情報もほとんど無しで鑑賞。
始まりから上手い。
登場人物同士の人間関係や日常生活に潜む不穏の種が会話や仕草でとても自然に説明される。
尚且つ、敬太と妙子が二郎に隠れて手話で会話するところが後々の伏線にもなっていてまさに一分の隙もない。
そしてほんの少しギクシャクしながら進む日常、そこに少し誠の誕生日のお祝い、敬太のオセロ大会優勝のお祝いで明るく穏やかな時間が流れている時に突然“そのとき”はやってくる。
事前情報を入れなかったからだろうか、ここが予想外でそれまでも引き込まれていたがさらに引き込まれた。
そして次にすごいシーンが敬太の葬式のシーン。
敬太の実の父、即ち妙子の前の夫パク・シンジがやってくるシーン。
スタッフの声も聞かず(正確には聞こえてないのだが、ここではまだわからない)、妙子を一発平手打ちする、止める二郎、自らを何度も殴りながら泣くシンジ、それに応えるかのように泣き始める妙子、2人の間で立ち尽くす二郎。
たかだか30秒程度のシーンだが、このシーンが後々まで効いてくるし、その時点での3人の立場を端的に表していて秀逸。
そこから何やかんやあるのだが、その過程にも深く共感する。
いや、そんな実体験はないのだが、なんというか悪い時はどんどん堕ちていく。
妙子は子供を失った悲しみで、二郎は敬太は実の息子ではなく葬式でも泣けず妙子と本当に繋がっていないような不安から、堕ちていく。
こういう堕ちていく気持ちは不覚にも共感してしまった。
そして終わりは唐突にやってくる。
この終わりには正直「えっもう終わり?」と感じた。
よく言えばそれまで時間を感じさせなかった、悪く言えば中途半端だろうか?
韓国から帰ってきた妙子と二郎が目を合わせただけで果たしてもう一回歩き始めれるのかに関してはなんとも言えない。
それまでのマイナスが0になって終わるのは余韻があるようにも思えるし、狡いようにも思えてしまう。
だけど何故だか見終わったあとスッと清涼感があり、余韻の中に疲れながら浸っていく。
とても不思議な感覚だった。