「物語が動き出すきっかけとなる事件が重たすぎるのではないか?」LOVE LIFE tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
物語が動き出すきっかけとなる事件が重たすぎるのではないか?
ある事件をきっかけにして、主人公を取り巻く人間関係が変化していく話なのだが、なかなか物語の焦点が定まらない。
最初は、主人公の再婚相手の両親(義父母)との関係が軸になるのかと思ったが、そのうち再婚相手とその元カノの話になって、やがては主人公と前の夫の話になっていく。そこで、ようやく、主人公と2人の夫の関係性が、この物語の核心であることが明かになる。
その一方で、主人公がどういう経緯で前の夫と結婚したのかという大きな疑問は残り続けるし、主人公の肉親(実の両親等)のことは、最後まで明かにならない。
何よりも、主人公が、なぜ、そこまで前の夫に執着するのかが、実感として理解できない。確かに、前の夫は「弱いから守ってあげたい」と思わせる風貌をしているが、そこに男性としての魅力があるのかと言えば、甚だ疑問であるとしか言いようがない。
「CODA」のように、ろう者の役を実際のろう者が演じることに大きな意義があるということには疑いの余地はないが、だからといって、適材適所の原則をねじ曲げて良いということにはならないだろう。そういう意味で、今回の砂田アトムは、残念ながらミスキャストであると考えざるを得ない。
そして、結局、この映画が「雨降って地固まる」ということを描きたかったのだとしたら、その「雨」は、親にとって過酷すぎたのではないかと思えるのである。
ラストシーンで、未来に向かって歩いていくように見える2人の姿からは、確かに希望が感じられるものの、その一方で、そんなことでこの苦難を乗り越えられるわけがないという疑念も沸き起こってくるのてある。