「脚本が素晴らしい」かがみの孤城 臥龍さんの映画レビュー(感想・評価)
脚本が素晴らしい
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脚本が非常によく練られていて中身が濃く、脚本賞を贈りたいくらい素晴らしい内容で面白かった。
7人の中学生がある日突然、自宅と海に囲まれた孤城を自由に行き来できる鏡と出会う。そして、その孤城に隠された鍵を見つければどんな願いも叶えられる、という突拍子もない設定から物語はスタートする。
しかし、全体的な物語としては、7人の主人公が抱える孤独や苦悩、現存する深刻な社会問題が物語の中心に据えられている。
学校で過酷ないじめに遭う者、家庭内で性暴力を受ける者、親の過剰な期待に応えられず挫折した者など、主人公はみな気の重くなるような悩みを抱え、それを誰にも打ち明けられず独りで抱え込み、悩んでいる。
そんな7人だが、時間とともに心を開き、日常で抱える苦悩を共有し、仲を深め、友情が生まれていく。日常では孤独な主人公たちだが、孤城に来れば仲間と心を通わせられる。
それだけならありふれた展開なのだが、『願いを叶えれば孤城での記憶はすべて失われる』という条件が物語に厚みを加えている。この条件により、孤独な7人の間に生まれた友情は願いを叶えた瞬間、リセットされて見ず知らずの他人に戻るという葛藤が生まれる。
実によく考えられたストーリーだと感心してしまう。派手さはないものの、120分間まったく飽きることなく、どんどん物語に引き込まれていく。
そして、願いを叶えた後に用意されたふたつのオチがまた素晴らしく、それでまた感動してしまう。10代や20代のみならず、どの年代層が見ても楽しめる映画だと思います。
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