PLAN 75のレビュー・感想・評価
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年齢による命の線引き
オンライン試写会にて鑑賞。 少子高齢化という現実を考えさせられる早川千絵監督作品。 「75歳以上になると、自分から進んで死ぬことを選べるPLAN75という制度」ができたという近未来の日本を描いた映画。 倍賞千恵子をはじめとする登場人物を見つめ続けるカメラで切り取られた世界は、リアリティを持って観る者を圧倒する迫力がある。 本作を観ると、「近い将来、本当にこうした世の中になるのではないだろうか?」と思わせられる。 また、「老い」について考えさせられる映画であり、自分など「あと○○年ぐらいしか生きられないだろうな…」と思っている者にとっては、この映画を観て「残された時間を大切にしながら生きていこう」と思わせられた。 「年齢による命の線引き」という見事な着想を根底にして、人間は生まれたからには必ず死ぬのは避けられないという事実を深堀りして見せる見事な作品であった。 木下恵介監督と今村昌平監督によって2回映画化されている日本映画『楢山節考』という姥捨て山の映画は「日本のある地域限定の物語」であったが、本作はワールドワイドに問題提起をする物語が描かれた傑作だと思う。 <映倫No.123415>
余白多いが、全世界に一石を投じた映画
カンヌ国際映画祭凱旋プレミア試写会で鑑賞。ご招待いただきありがとうございました。 背景説明をそぎ落としたシンプルなストーリー運び。ドキュメンタリーのようなリアルな映像。監督がおっしゃるように、余白たっぷりの映画だった。 設定は近未来。街の様子や人々の生活は現在と同じだが、社会や制度は激変しているようだ。PLAN75も新たに導入された制度。 余白が多いので想像するしかないのだが、75歳以上の高齢者であっても自分で身の回りのことができる人に生死の選択を迫るということは、寝たきりで意思表明ができない人の選択はどうなっていたのだろう。この映画では割愛されていた部分だが、個人的には最も気になったところである。現実的には、PLAN75導入の前に取り組むべき課題と思う。 いずれにしろ、高齢化は日本だけでなく欧州、アジアなど全世界的に進んでいる。全世界に一石を投じた映画だ。これから海外で公開が続けばより注目されるだろう。 ****** ヒロム(磯村くん)、瑤子(河合さん)とマリア(アリアンさん)は、PLAN75に関わるそれぞれの業務を日々粛々と遂行する一方、心のどこかでは引っ掛かりがあるようにも見えた。そう思わせる演技だった。 磯村君演じるヒロムの微妙な表情。ヒロムの場合、叔父との再会でその違和感が顕在化する。河合さん演ずる瑤子はミチと会うことで。河合さんの電話の声がいい。機械的だけど優しい。会いたくなる。 アリアンさん演ずるマリアは・・・(ネタバレになるので控えます)。 しかし、最後にミチと若者らは自分の感受性に目覚めて(茨木のり子さんの詩にあるように)行動を起こす。人間が自分の感受性を信じて行動したらPLAN75は阻止できると感じた。 キャストは倍賞千恵子さんはじめベテランも若手もみな素晴らしい。たかお鷹さん、大方緋紗子さんの演技は、演技を超えたリアルさ。たかおさん演じる叔父がヒロムと別れるときのバイバイがたまらなく心にしみる。他のベテランの皆さんも見事。舞台俳優の方々でしょうか。倍賞さんはアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞できるのでは。 マリアを通して、外国人出稼ぎ者やフィリピン人社会が描かれていたのは、この映画にフィリピン資本が入っていたからかもしれないが、日本の一面を海外に発信できたと思う。
都内で開かれた完成披露試写会にて鑑賞。 経済合理性だけでは制御する...
都内で開かれた完成披露試写会にて鑑賞。 経済合理性だけでは制御することのできない、人間の複雑さ、世界の混沌、その豊穣が、抑制された演技、洗練された映像、考え尽くされた編集によって見事に映像化されていました。心震える傑作。 作り込まれた音楽、音響も素晴らしかった。 良い視聴環境の劇場で再度観たいです。
歳を重ねた俳優ならではの表現に心奪われた
映画.comさんご招待、カンヌ国際映画祭凱旋プレミア試写会にて鑑賞。 余白を取って居ると監督がおっしゃっていた通り、観る側に考えさせる映画でした。 観る人の年齢や生きてきた背景により、表情の捉え方が違うんだろうなぁ。 倍賞さんをはじめとしたベテラン俳優の方達の、表情のみで様々な感情が伝わる演技が素晴らしかった 舞台挨拶の倍賞千恵子さんの生歌聴けた!話も面白くてチャーミングで素敵な方でした。 #PLAN75 #倍賞千恵子 #磯村勇斗 #早川千絵
75歳以上の高齢者との関係を描く、故に下の世代に刺さるものが
倍賞千恵子さん、磯村勇斗さん、早川千絵監督の舞台挨拶付き試写会で鑑賞。PLAN75を個々の死生観に置き換えつつ、その周りの人たちはどう考えるか、そこを揺さぶる映画だった。 友人に言われて知ったのだが、もともと監督は同タイトルで短編を撮っていたらしい。構想として温めつつ、多角的な視点と課題を含みながら、高齢化社会を生きる我々の問いへと昇華させたということだろう。そのため、主人公に倍賞千恵子さんを置きながらも、外国人労働者、市役所職員、コールセンター業務と目線を広く見せている。余白も多いので、共感と緊張感、飲まれるような展開たちに心がザワザワする。 導入から世界観が整然としていて、雑味がない。政治的な制御の効かなくなった社会の違和はそこになく、淡々と受け入れながら暮らす人々の姿から、常々問われ続ける。先程書いたが、これは高齢者向けの映画ではない。どのように高齢者と生きるか考える映画なのだ。他人事のように観ていたはずの自分の心に、いつの間にかピントを合わせてくるから恐ろしい。そして逃れられない。 中盤までは凄く主題が効いていたが、後半のクライマックスは賛否分かれると思う。私は賛よりだが、一度打たれたピリオドを超えていなかったのが残念だったという感想に。 主演は倍賞千恵子さん。美しい歌声と悲しみを背負った背中に現実の厳しさを映す。磯村勇斗さんの葛藤、ステファニーさんの持つ死生観も素晴らしかった。しかしながら、河合優実さんが今回も作品の魅力を底上げ。自身も年齢が近いこともあり、移った情に対し、制度を内側から見る目として、凄く大事なポジションを担っていたと思う。 この制度の是非だけで議論を終えず、何が今の日本に足りないのかをもう一度考えたくなった。当事者ではないからこそ見つめるべき視点、まさに「ある視点」がそこにはあった。
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