PLAN 75のレビュー・感想・評価
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未来社会ムービー
75歳での死を選択できる法律が施行された、未来の日本の物語。寄るすべなき高齢者は、社会からも追い立てられ、行く場を失い合法の死を選ぶ。倍賞千恵子が、淡々と働き努力する老女を演じ、素晴らしい完成度だった。
近未来の日本のドキュメンタリーっぽくて、なかなか深刻な話。というか、現在もこれに近い情勢ではあって、放っておくと明日はこうなるという現実であり、怖いとも言えず、なんとも複雑な気分です。死を選択するような社会は、そもそも文明の衰えの表出だと思います。今の日本はその入り口に踏み入れてしまったところでしょうか。
個人的には、セーフティーネットとしてのベーシックインカム(物資提供含む)を考えるべきと思います。オートメーション化による大量生産は実現できているのだから、政府傘下工場で生産した画一品で、最低限の衣食住は守られる世界は実現可能ではないでしょうか。50兆円以上コロナ対策で投じられるのだから、得意のハコモノ投資で衣食住用の工場は数年でできるはず。そこで生み出されたモノが現物供与品とし、1人月7万円のうち、半分くらいは現物支給になり、予算的に現実味を帯びる。
さすがに本作、このままではあまり救いもないので、アンサームービーが、作られる事を期待したいものです。
早川千絵監督、今後もどんな作品を撮るのか、楽しみです。
いつか行く道・・・・
フィクションとして実にいいバランスのアイデア
私も50を過ぎ、「もしPLAN75政策が現実にあったら」という想像が、「もし宝くじで3億円当たったら」よりもよっぽど前のめりに考えてしまいそうなくらい、現実にはあり得ないと思いつつもついつい想像を膨らませるほど「フィクションとして実にいいバランスのアイデア」だと思います。
そして、如何にも「お国による政策的な粗」に痛烈な皮肉が込められています。
「欺瞞に満ちたCM」や、民間では考えられないような「請負業者のクオリティ」などは一瞬、「リアリティラインが低いのでは?」と思いそうになるものの、考えてみれば現実世界において「いざ発覚して初めて知る不祥事」などを振り返ると、このPLAN75の世界が物語っていることが実は、現実に近いのかも、、、と考えてしまったり。特に、マリア(ステファニー・アリアン)が務めるあの場所での遺品の扱いなど、もはや「ナチスの収容所」のようでゾッとします。
制度の側にいる若い人たちには悪意がないばかりか、むしろ高齢者のため親身に対応しています。でも実はその背景に、彼らに特別な感情を抱かせないよう「絶妙なルール」が設定されています。そして、岡部(磯村勇斗)と成宮(河合優実)がそれを不意に超えてしまうことで、現実を実感することとなる構成が、高い物語性で面白い仕上がりになっていると思います。
倍賞さん、たかおさん他「高齢者側」の皆さん、そして「若者側」の磯村さん、河合さんなど皆さん素晴らしい演技だと思います。そして早川監督、今後も注目です。
架空の話と一蹴できない真実味がある
実際にこのような制度が今後日本で成立する可能性はあるのか…というと、自分は少し現実味に欠ける気がした。
確かにかつての日本には”姥捨て山”の伝承が残っており、それを元に「楢山節考」という映画が木下恵介と今村昌平の手によって2度映画化された。しかし、それもはっきりとした史実を元にしているわけではない。今回のPLAN75は正に現代版”姥捨て山”と言える制度である。そういう意味では、ありそうな話に思えるかもしれない。ただ、曲がりなりにも民主主義国家である日本で本当こんな話が成立するだろうか…と思ってしまった。小さな村社会で起こる姥捨て山とは次元が異なる話である。
したがって、本作はある種の寓話として捉えるのが丁度いいのかもしれない。
とはいえ、完全に絵空事の映画かと言えばそうでもなく、劇中には現代の日本で起こっている問題も描かれており、そこについては目を逸らすことを許さない真実味が感じられた。
主人公のミチは、いわゆる独居老人である。頼れる家族もなく、親友と呼べる人間もいない。ある日、突然仕事をクビになり、住んでるアパートも取り壊されることになる。途方に暮れた彼女は不動産屋を巡り、ハローワークに通う。しかし、身寄りのない高齢者にとって現実は余りにも厳しいものだった。生活保護を受けるという選択もあったが、彼女はそれも拒否した。考えあぐねた結果、ミチはPLAN75を利用する決心をする。
この制度に現実味があるかどうかは別として、実際にこうした話は今の日本にもありそうな気がした。人知れず部屋の中で孤独死する者。自らの命を絶ってしまう者。本作はそこにたまたまPLAN75という制度があったら…という話で、実際にはこのようにして追い詰められて亡くなってしまう人が結構いるのではないだろうか。
ましてや生涯未婚率が増え出生率が減少の一途をたどっている日本の今の現状を考えると、ミチのような高齢者は今後ますます増えていくような気がする。そう考えると末恐ろしくなる。
監督、脚本は本作が長編監督デビュー作となる早川千絵。彼女はこの前に「十年 Ten Yeras Japan」というオムバス作品の中の1本を撮っている。タイトルは本作と同じ「PLAN75」という作品である(未見)。今回はそれを膨らませて長編化しているということだ。
扱うテーマがテーマだけに、全体的に重厚な雰囲気が徹底されている。多くを語らず、さりげない形で表現するあたりは、初演出とは思えぬ匠の技が感じられた。
緩急の付け方も手練れていて、例えば凄惨な幕開けからして意表を突かれた。これはおそらく相模原市で起こった障がい者施設大量殺傷事件を元にしているのだろう。その衝撃性に画面に一気に引き込まれた。
あるいは、ミチとコールセンター職員、成宮の交流は心温まる良いシーンもあるが、最後の電話のやり取りに見られるように非情な現実も丁寧に拾い上げており、感傷に流されない聡明な語り口が見事だと思った。
一方、全体のプロットについては残念ながら少し散漫な印象を持ってしまった。
本作にはミチのメインのドラマのほかに2つのドラマが用意されている。一つはPLAN75の申請窓口を担当する職員ヒロムのドラマ。もう一つは難病の幼子のために日本に出稼ぎに来ているマリアという外国人女性のドラマである。夫々にPLAN75を巡ってかすかに交錯するが、濃密に絡み合うことはない。
おそらくPLAN75によって苦悩する人々を群像劇風に描きたかったのだろう。先述した短編を基本形にしつつ、渦中のミチ以外の視点を持ち込むことで多角的にこのドラマを捉えたかったのかもしれない。しかし、ヒロムとマリアのドラマはいずれも中途半端になってしまった印書を受ける。特にマリアに関してはこの映画にどこまで必要だったか疑問に残った。移民就労の問題として別な形で取り上げるべきだったのではないだろうか。
キャストでは、ミチを演じた倍賞千恵子の抑制を利かせた演技が素晴らしかった。苦悩を滲ませながら堅実な演技を崩さなかった所が流石である。
誰にでも起こりうる老いという題材だからこそ、誰もが真剣に考えるが答えは出ない
老いは誰にでもやってくる
身近に居る人が老いていたり
今老いていなくても将来この老いから逃れることはできない
そんな誰にでも起こりうる老いという物語をこの映画では3人の物語で描く
・子供もおらず友人も亡くなり孤独になっていく老女と
・市役所でプラン75に従事しながら数十年ぶりに再会した叔父との交流をしていく青年と
・介護施設で働きながら難病の子供のためプラン75に関わっていく外国人女性
この3人の物語が全く交差しない、絡んでいかない
各々が各々の人生を送っていく・・映画のような劇的な展開も無く
ぶっちゃけって言ってしまうとこの3人の物語の結末は描かれない
映画には上映時間があるので終わりはあるのだけれど
老女があの後どうなった?
青年はあのあと何をするのか?
外国人女性とその子供は行く末は?
なんて描かれない、いやあえて描かないのか
全て観たものに全て委ねている
プラン75の是非も含めて
プラン75の問題点や終盤“?”のつくシーンはあったものの
これは是非みんなに見てもらいたい
評価 4.1
出演者の皆さん演技が素晴らしく引き込まれたんですが
やはり今回プラン75を選択する老人として出演されていた
倍賞さんとたかお鷹さんが素晴らしかったなぁ
プラン75の是非?そりゃ保留ですよ・・・
政治はしばしば、貧困層と貧困層の対立をあおって安定を生み出す
スイスなどの安楽死、そして『楢山節考』(40年も前の映画だということに驚き!)を思い浮かべながら、この映画を鑑賞しました。安楽死、『楢~』ともに、命の尊厳と個人の意思に関する答えの出ない問題がテーマで、この映画でも必然的にそこに思いは向かいます。でも、この映画、見終わってよく考えてみると、ちょっと違う気がしてきました。本質は、経済格差の映画です。
早川千絵監督もよく分かっていて、何度も貧困層の困窮が描写されます。PLAN75という法が自由意志による選択という立て付けでありながら、角谷ミチが高齢であるというだけの理由で首切りにあい、経済的に立ち行かなくなって、“自由意志で”PLAN75を選択せざるを得なくなる、という筋立てです。
そもそも、PLAN75は国会が立法したという話で、もしこれが現実となったとしたら、議員のお年寄りはいったい何人がPLAN75に申し込むことになるのでしょう。「下々の民のためにPLAN75という選択肢を作ったのであって、自分事とは想定していないし、自分は申し込む必要もない」ということでしょうか。政治家でなくとも、富裕層もまたしかり。貧困層と富裕層の対比を、この映画の中心のストーリーに据えたら、もっと本質に迫った描きができたはずです。まぁ、できるわけないか。
一番気になるのは、こうしたPLAN75という考え方が、世に出てしまったということです。1つの問題の解決方法として認知され、人道的な危うさを認識されながらも、人はどんなことにも慣れてしまうものです。監督がこの映画を作った動機とは裏腹な方向へ、一歩を踏み出してしまったような。善意は、時に利用されることを、心しなければなりません。相模原事件の問題を深掘りするのなら、別の設定で挑むべきだった、のではないでしょうか。
ちなみに、映画の始まりに、笹川財団から助成金が出ているとの表示があったような。見間違いでしょうか、ね。
国が認めている殺人
思った以上に重い題材でした。
生活が苦しく先が見えなかったり死の縁で延命治療を受けなければならないとしたら、確かに選択として安楽死を頭に思い浮かべる。
そんな弱い立場の人を徹底的に社会で居場所を無くさせ、国を上げて明るくPLAN75を推薦している近未来の日本はファンタジーとは思えず、実にリアルでホラーより恐ろしい。
ただ疑問なのは若者の犯罪が増えたのでこの法律は可決したが、この世界ならば高齢者の犯罪が増えるのではないか?誰にも知られなければ悪意ある犯罪は墓場まで持っていけると言うことです。
倍賞さんの背筋が真っ直ぐで言葉の美しい人は「生きる」を大切にしていた女性。磯村くんの案内人は事務的な思考から感情的に沸き上がる身内への愛。
早川監督の脚本はとても実直で丁寧に作られており、演じての感情も犇々と伝わりました。
生死について真正面から向き合わされる
このテーマは全世界共通だろうし、各国でも社会問題として取り上げられるし、生きているものにとって避けられない永遠の課題であると思う。
狩猟のように、熊や鹿が増えたから猟をして数を減らせってことを人間に適用したってことですよね。
劇中、国はあんなに明るくPR動画をまるでコロナワクチン接種をしましょうぐらいな感覚で流し、楽しそうに話しているご婦人が映っていましたけど、本当の実態は老人たちがやっぱり止めたいと心変わりをしないように誘導するとか、10万円の支度金とかいい側面だけを見せて国をあげての殺人なわけです。
これは高齢者問題に対して、何の法整備もしない、対策もしない国や政府に対しての警笛だと私は感じました。必ずやってくる超高齢化社会。高齢者の雇用、生活保護、孤独死、独居老人…山積みな問題に対して、今私たちがすべきことは何なのか考えなくてはならないと思います。
みちさんこと倍賞さん、稲ちゃんこと大方さん達のリアルすぎる高齢者の日常。
覚束ない足取りでとぼとぼ歩いて坂を登り、息もきれるは、それでも働かなくては生きていけないのかと何のために生きているのかと胸が締め付けられる場面が幾度となくありました。そして、みちさんはでも生きたい!という強い意志を固めたようでした。
ヒロム、成宮さん、マリアさんも仕事として最初は関わっていただけなのにだんだんと情が湧き、何とかしてあげたいという心情の変化を見事に表現されていたと思います。
この作品はカンヌでも大評判でしたが、確かに納得でした。今年の賞レースに入ってくることは間違いないでしょう。
老人とオペレーターのエピソードだけに話を絞って、それをじっくり描いた方が良かったのでは?
「超」の付く少子高齢化社会に突入しつつある日本にあって、PLAN75という制度には、絵空事ではないリアリティーを感じてしまった。確かに非人道的ではあるが、かつては「姥捨山」という風習があったのも事実であり、日本が、物理的にも、精神的にも、貧しい国に逆戻りしていることを実感できる。
映画では、独居老人と、市役所職員と、外国人労働者の話が、並行して描かれていくが、彼らの人生がいつ交わるのかと思って観ていると、結局、ほとんど関係することなく終わってしまう。特に、ラストでは、それぞれの登場人物が何をやりたいのか、そのきっかけが何だったのかということがよく分からないため、いったい、今まで観てきたものは何だったのかという気持ちになる。
観客に想像させ、考えさせる余地を残すことも大切ではあろうが、もう少し、登場人物の心情と、その変化を、観客が理解しやすいように描く心遣いも必要だったのではないだろうか?
個人的には、独居老人とコールセンターのオペレーターの話だけを、じっくりと掘り下げた方が良かったのではないかと思えた。
野蛮で未開な社会
リアルな現状を踏まえた作品
映画としてとても素晴らしい
ちょっとヘビーな内容なので内容ばかりが話題になりそうですが、映画としてとても好きです。
また一人、お気に入りの監督さんがアラワレタノとても嬉しいです。
オープニングはド肝を抜かれ、スクリーン間違えたと思いました。
完全にあの事件が起草なのかなと思います。
テーマはとても重いもので、観る人はだれでも自分だったら、、、と考えさせられるものだと思います。
映像や光や不協和音とか、とても微妙な心の動きのようなものが絶妙だと思います。
細かいところ、自転車の補助席をひとつ外さないとか、寿司桶を洗ってちゃんと拭いたりとか、細かい部分が刺さる。
最近見る映画で河合優美さん目当てでもあったので、出番が少なくて少し残念ですが。
死の尊厳=生の尊厳
とも言えると思います。
使う人と使わない人、どちらの気持ちも大切にされるべきですね。
私はプラン75があったら嬉しいですね。
安楽死などと同じで、恐らく多くの日本人は、自分は使いたいけど、家族には使って欲しくないのかも知れません。
人生100年などと言われると、いつまで仕事をするのかと憂鬱になります。2000万円貯めるまではずーっと憂鬱なのでしょう。2000万貯まっても憂鬱が続きそうです。だったらどこかで一区切り出来ると思えば、少なくても今はもっと楽しく生きられそうです。
私なら、前日に髭を剃り、白髪染めするのかも知れませんね。
そのさきのPLANはあるのか
ちょっと頭でっかちの部分はあるかな
なかなかこうまでディストピアを描き出した邦画はないかもしれない。設定的には『楢山節考』な感じもするけど、絵的には『ノマドランド』をもイメージさせる現代映画。と、言っても今の日本はどこを切り取ってもそのままノマドランドなので大きな美術を投入しなくてもいい。『愚行録』が雰囲気としては近いのかな。
個人的にはもうちょっと『ソイレントグリーン』的になってくれないとあまり面白くはならないな、と思った。伝え聞く近未来の設定を決して世にも奇妙な物語風ではなく、映画的に捉えようとしてはいるのだけど、もう死の影しかなく、それはネタがそうだからかもしれないけど長々と生気を失った人と風景を見るのはつらい。せっかくの倍賞千恵子のキャリアも活かしきれていないのでは、と。それは楢山節考が一方で生きとし生けるものの生命力をぶっ込んでいるからその終焉の死にのたうちまわることもできるのであって、こうまで一方向にプランに乗っかった人、乗っかってく人、それを仕事にしてる人が静かにクロスしてもエモーションはかかってこない。ラストのほうにこのシステムのほころびともいえる人間性が発動するけど、個人的に映画はエモーションの見せ物としてお金を払っているのでどうもあんまり感心しない。
偶然同じ日にみた『メタモルフォーゼの縁側』は、逆にほぼ死のイメージが何も影を残さずそれはそれで物足りないものだったけど、まとめて考えると『おらおらでひとりいぐも』は素晴らしい出来の映画だったと思う。
たったひとつの設定で無数の社会問題を浮き彫りにさせる。
たったひとつの設定。
それだけで、現代の抱えているさまざまな社会問題を浮き彫りにさせたことは秀逸だと思った。
75歳を迎えると自由に死を選ぶことができるという制度による、当事者やその制度の担当者の気持ちの揺れ動きを淡々とリアリティある演出で表現されていると感じた。
監督の細かな演出によって淡々と進むがちゃんと飽きずに見ていられる作品になっていると思う。
特に登場人物の人となりを説明するためのちょっとした演出が心地よい。
役者陣の演技も文句が無い。どの人物も説明しすぎない自然なセリフと確かな演技力でしっかりと人となりが伝わってくるものだった。
同じ上映回にあきらかに75歳以上の方がいた。
その方はどんな気持ちでこの作品に触れたのか。
自分がこれから年齢を重ね、老いを感じるようになっていくときどのような気持ちになるのか考えさせられた。
現実感の強いフィクション
切実。。
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