スージーQのレビュー・感想・評価
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時代に先駆けた女性ロックスターの肖像
スージー・クアトロが日本でも売れ始めて公演にもやって来た1970年代半ばは、私が洋楽を聴き始めたころと重なっていて、もちろん名前は覚えているが、当時の関心は同時代のミュージシャンよりも60年代に活躍したビートルズなどに向かっていたせいで、彼女のヒット曲をほとんど知らなかった。本作にも出てくる、スージー・クアトロに影響を受けて登場したザ・ランナウェイズの方が十代へのインパクトは大きかったと記憶している。 そんなわけで、本人や家族、音楽活動に関わった人々の証言で浮かび上がる女性ロックスターの肖像、栄光の日々と家族との確執といった影の部分とのコントラストなど、このドキュメンタリーで知ったことも多かった。彼女のファンなら、興味深い逸話の数々を楽しめるのではないか。 一方で、音楽好きには物足りなさも残る。とにかく本人と関係者や影響を受けたミュージシャンらの思い出話が長くて、彼女の代表曲の音楽的な解説や、ベースプレイについての話はほとんど語られない。演奏場面も、テレビ番組に出演した際の映像やミュージックビデオが断片的に流れるだけで、あわせてシングルの各国でのチャート順位が紹介される程度。本作はオーストラリア製作で監督もオーストラリア人だが、スージー・クアトロの楽曲の魅力よりも、時代に先駆けた女性ロックスターとしての存在意義を強調したかったようだ。
憧れのスージー
中学生の頃、部屋中にポスターを貼り、LPレコードをガンガン鳴らして、ずいぶんお世話(ナニに?)になりました。憧れと妄想の中、アルバム「QUATRO(陶酔のアイドル)」(1974)を買ったときに「The Wild One」がシングルバージョンと全く違っていたことにショックを受け、シングルレコードを買う余裕もなかったので、FM曲にリクエストを送りまくりエアチェックしたという苦々しい記憶まで蘇りました。今聴くとそれなりにセクシーでカッコいい曲♪ さらに3枚目のLPを買ったあたりで、地元金沢にもコンサートツアーにやってきたというのに金がなく、結婚したという話も相まって急に熱が冷めてしまった・・・それでもたまに股間に響くビートの「Can The Can」を聴くとあの頃を思い出す。つまり、中坊のときに大好きだったわけです。 80年代以降のスージーの活躍は全く知らなかったし、内容の濃い過去話を語る彼女に見入ってしまった。あらためて「48 Crash」カッチョええぇぇ~!とか、もうファンにとっては刺さりすぎるほど深かった。ソロ以前のガールズバンド“プレジャー・シーカーズ”とか“クレイドル”とか、全く知らなかったよぉ。やっぱり凄い!偉大だった。それに後のランナウェイズやゴーゴーズなどのガールズバンドに影響を与えて・・・凄いっしょ。 まぁ、オープニングから涙流しながらの鑑賞になりましたが、泣き所は3ヵ所だったかな。特にラストのシェリー・カーリーの歌にはスージーの全てが書かれていたことに感動。俺だって5千万分の1だいっ!てくらい。そんでもってこの曲どうやったら聴けるのか・・・やっぱりDVDを買うしかないのかな。オリジナルではないけど、3枚目のアルバム「ママに捧げるロック」の中の「Fever」はちょっとセクシーすぎて参ってしまいますょ。 ジョーン・ジェット、リタ・フォード、シェリー・カーリー、とにかくランナウェイズのメンバーが崇拝してるくらい(映画『ランナウェイズ』参照)だし、女子にも人気があったスージーQ。なぜベースギターを選んだのかという問いに「股間にビンビン響くからよ」などと答えた(うろ覚え)彼女。もうビンビン・・・もう一つ、スージーQ(susie Q)という曲もローリングストーンズやCCRがカバーしているが、これはダンスステップの名前らしい。そしてスージー・クアトロもその曲をカバーしている面白さ。それにしても音楽活動50周年か~ずっとファンでいても良かったかなぁ。
【レザーのジャンプスーツが無茶苦茶格好良いSUZI Qの生い立ちから、60年代から70年代のブレイク期からその後を描く。一人の女性としての見事な生き様が魅力的である。】
ー ファンの方には申し訳ない限りだが、年代的にSUZI Qの劇中流される数々のヒット曲は一曲も知らず・・。 では、何故鑑賞したかというと中坊時代に聞いていたロックミュージシャンが”憧れているロックミュージシャン”と語った際に名前が出た、女性ロックミュージシャンのジョーン・ジェットが”憧れの人”と語っていた記事を覚えていた事と、フライヤーを飾るレザーのジャンプスーツが無茶苦茶格好良いSUZI Qの姿に惹かれたからである。- ◆感想 ・ヒット曲を全く知らないというのは、今作の様なドキュメンタリー作品鑑賞に当たっては致命的な気はするのだが、面白く鑑賞した。 ・それは、当時のプロモーションの仕方が、良く分かった事や、彼女が最初は4姉妹でガールズバンドを組んでいたのに、彼女だけ契約され、そこからデトロイトから一人イギリスに亘り、スターへの道を突き進んでいった事などである。 ー 当然、彼女と残された3姉妹との関係性は微妙である。- ・そして、何故かオーストラリアや欧州ではヒットを飛ばすが、アメリカでは売れないままだった事。 ー 劇中では”アメリカでは早すぎた・・。”と説明されていたが・・。 近年で言えば、”ディペッシュ・モード”が欧州ではスタジアム級ビッグバンドなのに、アメリカでは売れない・・、と言ったところか。- ■驚いた事 ・私は、SUZI Qは年齢的に、とっくに引退していると思ったら、現役じゃないの!息子と曲を作っているし・・。凄いなあ・・。 ・更に、演技やTV番組にも出ていたり(ゲストではなく)その活動の幅広さである。 <一番凄いと思ったのは、彼女がロッカーとして第一線を歩みながら、キチンとお母さん業をしていた事、そして今では孫も新たなパートナーもいる事。 で、幸せそうな事がキチンと顔に出ている事である。 今作は女性ロッカーの道を切り開いた一人の女性の見事な生き様を描いたドキュメンタリー作品である、と私は思った。> <2022年8月30日 刈谷日劇にて鑑賞>
かっこいい!かっこいい!かっこいい!
昨年観たドキュメンタリーで格好良さに魅了されたジョーン・ジェット。その彼女が敬愛するスージー・クアトロのドキュメンタリー。観ないわけがない。 スージークアトロ。言わずと知れたレジェンド。まさか、そんなキャリアを歩んでいたとは!って初めて知ることの喜びと、そのなんとまぁカッコいい存在よ!!!カッコよすぎ!私、久々にミーハー魂に火がつきスマホの待ち受け画面スージークアトロに変更です(笑)レザーのジャンプスーツのアレです!スージークアトロが誕生した瞬間って言われていたあのポートレートにしました! さらにさらに作品が進むと知る彼女自身のプロ根性に脱帽します。彼女の人生に対する覚悟の半端なさを目にして、なんとまぁ中途半端な自分が悲しくなっちまいましたよ。スターになるために一般的な幸せ捨てたり、家族も二の次にしている感じだし(どーみても仮面家族な雰囲気)。さらに、スージー・クアトロ・タイムを設けているって話・・・まじエンターテイナーやん!強い! <スージー・クアトロ>という存在にになったという客観的視点を自分に対して持ち続けられたことが彼女の強みなんでしょうね。だからこそ徹底的にアイコンに磨きがかけられて、時代を超えても輝きが衰えることも色褪せるなかったわけですしね。第一、見せられた人間がここに一人いるってことがその証明ですよ(笑) とってもよかった。音楽好きの方には観てもらいたいですね。苦言は・・・もっともっとスージーのライブアーカイブ映像見たかったなぁ。
とても良い映画
スージー・クアトロ…。 名前は大昔から知ってるのに、 ほぼ洋楽しか聞いてこなかったのに、 スージー・クアトロ… かすりもしなかった(笑) イギリスに渡ってからは、 まるでT.REXじゃないか! まんまじゃないか!(笑) ちょっと聞いてみようかな… って、思いました。 *wikiなんかを調べると、スージーがTVドラマなんかに出だした頃が、僕が洋楽にハマり出した頃みたい…道理でラジオなんかでも耳にしなかったわけだ(当時のお気に入りは、洋楽トップ20とかだった)。 *80年代のガチMTV世代なんで、彼女を全く目にすることも無かったみたい…。 *この間観たリンダ・ロンシュタットの映画でも語られていたけど、70年代の女性ミュージシャンって、割とクリーンな方が多いですね。自滅しないなんて、素敵です(笑) *アメリカでは全く評価されていない彼女ですが、この作品を通して、どういう影響を後進のアーティストに与えたのか知ることが出来て、とても面白いロック・ドキュメンタリーでした! オススメ!笑
デトロイトからやってきたロッカー
ラジオで初めて聞いた「キャン・ザ・キャン」以降の初期の曲は全部覚えていて萌えました!あの高い声、自然な髪型、メイクなしの可愛い顔、黒のレザースーツ、低い位置で弾くベース(テレビでは多分見ていないので雑誌で見たのかなあ?)。全てがカッコ良くて憧れました。そして今も現役とは!もっとかっこいい。 映画ではスージーの家族のこと、テレビや舞台での役者や作家としての活躍など知らなかったことばかりでした。息子のリチャードから「スージー・クアトロ」を引き出してもらった箇所には心が疼きました。家族を愛するスージーらしい。子どもも孫も居て新しいパートナーに出会えて良かった。家を一人出て、そして成功しても、両親と姉妹&兄が大好きなスージーにとっては彼らに100%認められ暖かく受け入れてもらうことが一番の願いだけれどそれは無理。でもちょっとは前進して良かった。そんなもんだと思う。家族って難しい。 スージーの正直で素直で真面目でパワフルでスターになるんだ!という強い気持ち、ベース・ギターの腕をあげる努力、自分をわかっていて自分を大切にするセルフ・コントロールと自信。本当に素晴らしい。多様な能力に恵まれ、どんどんそれを広げチャレンジする好奇心と勇気は今の若い人たちみんなに知ってほしいと思った。 そして、アメリカ合衆国の保守性を見せつけられた思いも。映画祭もそれぞれの個性や社会性と多様性があるベルリン、ヴェネチア、カンヌに対して、オスカーは功績を称える位置づけなのだろうが無難な感じがする。それとは関係ないのかもしれないけれど、ロックはパンクもグラムもロンドンでヨーロッパなんだ!と納得した思いです。
ワイルドな ミュージシャンでした。
欧米では ヒットしても アメリカではなかなか売れなかったとか しかし 試行錯誤しながら 立派にビッグスターとなり 見事なロックスターになってましたね。 ワイルドワンの 字幕の訳が 毎回違ってて面白かった。 子供の頃に聞いた「キャンザキャン」も 今やっと意味が分かりました。 やはり映画は 勉強になりますね。
女性ロックのパイオニア!
ジョーン・ジェットやデボラ・ハリーに夢と活路を提示していたとは、最後の方にクリッシー・ハインドも登場。歴代女性ロックシンガーにリスペクトされてる愛すべきスージー・クアトロは素敵だ!
先駆者 スージーQ!
年の離れた兄がいたお陰か、物心ついた私の耳に馴染みとなったのは「キャン・ザ・キャン」や「48クラッシュ」でした。 何度も何度もカセットテープを繰り返し再生していた当時が蘇りました。 その後については知らなかったので、今作を観ることで生い立ちから現在の姿まで知ることができてとても良かったです。 音楽一家に生まれ、姉妹・友人とのユニットでデビュー、その後スージーだけが才能を見出されバンドを率いてのデビュー、それに伴う家族間の軋轢など、さもありなんですが、スージーは一貫して前を向いているのがとても格好良くって、ロックです! アメリカでは時代が早かったからかチャートも下位だったのは驚きでした。 インタビュー映像でブロンディ(デボラ・ハリー)やランナウェイズが登場したのも予想外のプレゼントのようで嬉しかった。 孫がいても未だにベースを弾きまくりシャウトする、素敵でした。 また歌を聴いてみたくなりました。
ロックとフェミニズム
そういえば女性のロックの元祖って誰? どストレートなロックンロールだと自分はやっぱりジョーンジェットかなぁと思っていたのですが、一番影響受けてたのが彼女だったようで、ギター低ーく持つスタイル同じ こちらの方については、知名度イマイチ?だと思ったらヨーロッパやオーストラリアでヒット、かなり以前から活動してた方なんですね 分からないわけです 錚々たる面々、ランナウェイズ、ブロンディ、ゴーゴーズ、L7まで出てたので驚き かなり影響力大だったのは確か しかしアメリカで売れなかったのは多分70年代のディスコブームのせいもあるんじゃないですかね?確かに皆さん仰るように早すぎたのかもしれません 今では女性の素晴らしいアーティスト沢山いるので、道を拓いてくれたことに感謝です 楽器プレーしながらのロックって後先考えると女性には取っ付きにくいジャンルなのかも それにしても若かりし頃はプロデューサー、姉妹も美男美女揃い!
ロッカーだけじゃない、スージーを知る
学生時代その風貌と歌に魅了され、少ない小遣いでアルバム買いましたー。辞書片手に英訳し、スージーの写真片手に美容院に行って同じ髪型にカットをお願いし、学園祭のポスターにスージーを描いて選ばれ…。
しかしその後は仕事に明け暮れ、結婚して子育ても終了し孫もでき、すっかりスージーを忘れておりました。
生い立ちを含めヒット飛ばした後に女優やミュージカルに挑戦し、大学にも行き脚本や本も書き、いまだロックもしてるということを知り、大いに驚きました!どんだけ才能あるの?
でも、成功と同時に手放したものも一杯あるとスージーは言う。姉妹でデビューしたのにソロに転換したことで、家族と断裂。両親が亡くなった今も、兄弟姉妹とのしこりは残っている。
だからといって、自分の選択に後悔はないそうで、過去に戻っても同じ道を歩いただろうといいながら、何処が寂しげ。
現在スージーは離婚したが、2人の子供に恵まれて新しい家族を築いた。それでもこの映画のそこかしこに親や兄弟姉妹に認められたい、仲良かった頃に戻りたいという気持ちが痛いほど伝わってくる。どんなに成功して世間から賞賛されたとしても、結局家族に認められたくて頑張るのが人間の本質なのだなあと感慨深かった。
リアルタイムであまり聴いてなかったけど、彼女に影響受けたアーティス...
リアルタイムであまり聴いてなかったけど、彼女に影響受けたアーティストがこんなに沢山いたとは...。生き方がとにかくかっこいい!女性アーティストには特に見て欲しい作品。
『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』とニコイチで観ておきたい、全世代の女性に観てほしい愛すべきスージーの半生
スージー・クアトロもやっぱり先輩方が聴いていたアーティストで、彼女の影響下にあるランナウェイズを4つ上の姉が聴いていたのを小4の頃に傍で聴いてたのと中学時代にベストヒットUSAのタイムマシーンのコーナーでライブ映像をチョコッと観たくらいの遠い存在ながら、小柄な容姿でプレシジョンベースを掻き鳴らしながらハスキーでパンチのある声でブギーを歌っていたのが印象的でした。 そんな彼女の半生をスージー自身、彼女の周りにいた人達や彼女の影響下にある人達の言葉で振り返るドキュメンタリー。先日観たばかりの『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』とよく似た構成ですが、まず眼福なのはジョーン・ジェット、シェリー・カーリー、リタ・フォードらが目をキラキラさせながらスージーの魅力を語るシーン。特に最もスージーの影響を受けているジョーンはグッと身を乗り出してティーンエイジャーのような朗らかな笑顔でレアなエピソードを語っていて硬派で近寄りがたいイメージをどこかに置き忘れたみたい感じが物凄くキュート。 そしてスージー本人のチャーミングさはもうとにかく格別で、リンダ・ロンシュタットのようにとにかくやりたいことに妥協することなく挑戦していく様は実に痛快。しかし映画は彼女が手放したものや果たせなかった夢にも迫り、過去を振り返った彼女がボソッと零した一言は人生の終盤に差し掛かった我々世代の胸の奥にあるものをグラグラと揺さぶります。 ということで『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』とニコイチで観ておきたい愛すべき作品です。世代を問わず女性は物凄く勇気づけられると思います。
サイコー!サイコー!サイコー!
偉大なるロケンローラーでベーシストであるスージー・クアトロ先輩のドキュメンタリー上映と聴き、忠誠心を証明するために公開初日に参拝してきました!サイコー!
高3の時に地元の図書館で『グラムロック大全2』を観て以来、俺はスージー・クアトロに忠誠を誓い現在に至ります。ラモーンズやメタリカ、クラッシュらと同じく、自分の人生で聴かなかった時期のないミュージシャンです。しかし、どことなく語られづらいミュージシャンに思われまして、音楽雑誌等でもあまりスージーについての論評は乏しいように思います。なので、本作で語られる素顔のスージーパイセンやその歴史はかなり新鮮でした。何を語られても「ハイハイ知ってますよ〜」となりがちなストーンズのドキュメンタリーとは大違いだ!
(とはいえビルのドキュメンタリーは絶対に想像を絶するゲスエピソード満載と見ているが)
スージーパイセンはデトロイトの音楽一家に生まれて、4姉妹とひとりの男兄弟の中で育ちました。姉妹と近所の友だちとバンドを組んだことがキャリアのスタート。ベースを選んだきっかけは、他の人たちがギターやドラムを選んだため、消去法で決まったそうです。うーん、以前中島らもか誰かのコラムでパイセンがベースを選んだ理由は「アタイが何故ベースを弾くかって?ハッ!それは低音がアタイの股間にジンジン響くからたよッッ!」とあったので、今の今まで信じてましたよ。
バンド活動は上手くいかないながらも、スージーだけがイギリスのレコード会社の目に留まり、スージーだけデビューすることになりました。ここでスージーと姉妹や家族との軋轢が生まれてしまいました。この辺の話は一切知らなかった。
イギリスに渡ってもスージーは持ち前の根性で男ばかりのバンドを仕切り、ステージ衣装等の演出も自分で決めていたようです。ソングライティングは外部なのですが、基本的にお仕着せのアイドルロッカーではなかったですね。めちゃくちゃ主体性のあるバリバリのロケンローラー!そして73年にデビューしてヨーロッパや日本、オーストラリアで成功しました。
本作を観て感じたことは、スージーはめちゃくちゃ優秀で安定していてバランスが取れたハイスペックな人だなぁとの印象でした。非日常のステージを離れれば、ちゃんと地に足のついた日常に戻って生きることができる。この軽やかさと安定感は凄まじい。子育てとかも、スターの子どもとして特別に育てたくなかったと言ってましたし。ビビったのはロッカーとしての活動が停滞した80年代以降は、俳優やミュージカルに挑戦し、演じるだけに留まらずに作品も書いていたこと!てっきりバンで貧乏ドサ回りとかしていたと思ってましたが、ぜんぜん違った!パイセンまじでスゴいです!
そして、お決まりのドラッグ依存とかあるのかと思いきや、そういうのは全く無し!セルフコントロールがバッチリなんですよ。ロッカー時代も、ちゃんとステージのオン/オフを意識してましたし、酒とタバコ以外は手を出さずドラッグは全くやらない。90年代くらいでもこれだけコントロールできていたのはジョンスペとかごく一部なのに、70年代でこのきっちり感!しかも、きっちりしている人にありがちなダサい真面目さ(例:ザ・バンドのロービー・ロバートソン)がなく、ピュアにロケンローラーなのがめちゃくちゃ、マジでめちゃくちゃカッコいい!
スージーパイセンって、なんか現代的なんですよね。自分の中の多様性を受け止めて、それらを排除しないで大きな器で受け止めて生きる感じがあります。
逆に言えば、これまでのわかりやすいロッカーの定番パターンを生きていないので、わかりやすいドラマティックさはなかった。しかし、そんなモノはどうでもいい!わかりやすくはないかもしれないけど、このような複雑さを抱えて生きる姿こそ21世紀のロックですよ!スージーパイセンは未来人だった!現在のパイセンはどことなくオジー・オズボーンに似たふっくらフェイスの明るいオバちゃんなんですが、それもまた説得力があります!インタビューの時も表情がくるくる変わって面白い。
そして、スージーはアメリカで成功しなかった。パイセンをリスペクトして止まないジョーン・ジェット先生やランナウェイズ仲間のシェリー・カーリー(なんとエンディングでパイセンを讃える曲を歌っていた!)、デボラ・ハリー、L7のドニータらは口を揃えてこう言います、「アメリカでは早すぎた」と。
音楽的にはヘヴィなブギーでAC/DCが受け入れられるのであれば売れそうですが、いわゆる『女だてらに』ベースをかき鳴らし、男どもを従えたロックが実は何処よりも保守的なアメリカでは受け入れられなかったのではないか、と本作では語られていました。
そのような背景を持ちながらも、パイセンは特にフェミ発言はせず、煽りもしなかった。その理由はパイセン曰く「あえて言う必要はない。私はここに存在しているから(here I am)」。存在で、態度で示しているというワケです。この説得力、パイセンかJBかってレベルでありますよ!スゲェ!
このパイセンのイズムを受けて、ジェット先生はギターを持ってランナウェイズを結成!初期はルックスもパイセンをトレースしすぎてきてボーカルのシェリーに「アンタはスージー・クアトロじゃないのよ!」とたしなめられる始末。しかもジェット先生、若い頃にスージーのポスターをパクった疑惑があり、現在のインタビューでそれを詰めらても微妙な顔で誤魔化していたの最高!いいわ〜!
パイセンの最大の功績は、これまで男の専売特許と思われていたロックでの楽曲演奏を、女であっても関係なくできるということを存在で証明したことでしょう!その意味ではラモーンズに通じる革命的な存在だったと思います。まさにジェット先生なんかはこのイズムでギターを持ったワケだし。
トーキング・ヘッズのベーシスト、ティナ・ウェイマスもパイセンの影響を受けていた。トーキングヘッズに入る前までは、ロックバンドで演奏するのは男とばかり思っていたようで、想像もできなかったようです。しかし、彼氏でドラマーのクリス・フランツにスージーパイセンを教えられ、ティナは開眼!こうしてトーキング・ヘッズのベーシストが誕生したとのことでした。パイセン偉大すぎる!
先に述べたように姉妹との軋轢を抱えて生きたスージーパイセン。パイセンは家族大好きなので受け入れてほしいと願っていますが、姉妹たちの反応は結構辛辣。妹とかは「彼女はすごい、でも私はファンじゃない」とか言っており、しこりはまだある様子。とはいえ、ちゃんとドキュメンタリーにも出てくるし、恩讐を超えていないものの、それなりに仲良くはできている印象です。
これもまたスージーパイセンの多様性を語る上で重要かも。完全な和解はなくとも、7割くらいの和解でも意味があることを伝えてくれているように思えたのです。パイセンも寂しそうに姉妹について語りましたが、それでも受け入れつつ、現状を肯定している印象でした。
人は完全に解り合えないように、完全に赦し合えないのかもしれません。それでも、断絶せずに折り合うことは可能でしょう。その折り合いを学んでボチボチのところをキープしながら、その不完全性を受け入れつつ肯定しながら生きることが、22世紀にむけて獲得すべき人類のスキルだと感じています。スージーパイセンはやはり未来人!スライと一緒!
ドキュメンタリーとしては普通の造りでしたが、スージーパイセンの想像以上の傑物ぶりに感動感動、また感動!サイコーでした!
私はずっと自分を生きたかった
そして、ついに私は自分を生きて、
いまここにいる
私は自分が得たものを解ってるし、
誰も私からそいつを奪えやしないよ
よく聞きな
私が何者なのかを
Suzi Quatro ”The Wild One”
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