「迫力のドリフトは見物だったが……」ALIVEHOON アライブフーン といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
迫力のドリフトは見物だったが……
映画館に行く度に予告編を観ていた本作。公開初日に鑑賞しました。
結論としては、迫力のカーアクションは映画館で観る価値ありの素晴らしいものでしたが、それ以外はイマイチ乗れなかった印象です。素晴らしい部分もたくさんあったけど、それと同じくらい不満点も多い作品でした。
本作のような(失礼な言い方になりますが)マイナーな競技を題材にしたスポーツ漫画やアニメや映画は数多くあります。それらの作品には、自分の知らなかった競技の奥深さを知って、勉強になるとともに興味を持てるというのが一つの楽しみ方だと私は考えています。
私はドリフトはおろかレースなどにも全く興味ない人間ですので、鑑賞前は「この作品をきっかけにドリフト競技に興味を持てるかも」と期待していましたが、観終わった後も特にドリフトに対する興味が湧くこともなく、特に学びも無く、何を基準に勝敗が決まっているのかも分からないまま終わりました。
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内向的で人との関りが苦手な大羽紘一(野村周平)は、カーレースゲーム『グランツーリスモ』では日本一の実力者であった。ある日、ドライバーの負傷によって解散の危機に陥ったドリフトチームから、ドライバーになって欲しいとの依頼を受ける。実車での経験はゼロの紘一だったが、その類稀なる才能を開花させていく。
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「登場人物に魅力がない」。
これが一番この作品の中で不満に思っている点です。
主人公は内向的なくせに反抗的だったり挑発的な発言が目立ちますし、吉川愛さん演じる夏実は主人公を勧誘する時にあまりに唐突な上に説明不足ですし、陣内孝則さん演じる夏実の父親は初対面で事情も知らない主人公に対して乱暴な物言いをしたかと思いきや、運転技術を見たとたんに掌返しで主人公を褒め称えるし、福山翔大さん演じるドリフトの貴公子こと柴崎は最初から最後までイライラするキャラクターです。
大抵の映画であれば一人くらいは感情移入できたり好感を持てる登場人物がいるものですが、本作には一人たりともそういう登場人物がいない。映画の中にはあえて登場人物全員が感情移入や好感を持てない描き方をする作品もありますが、本作はそういう類の作品ではないでしょう。
また、ストーリーもハマりませんでした。
本作を鑑賞していて凄い既視感のようなものを感じたんですが、これっていわゆる「なろう系」と呼ばれるライトノベルにそっくりの構成なんですよね。「周りから舐められていた冴えない僕が突如として才能を開花させて一躍ヒーローに」っていう。
完全に私個人の感想なんですが、このような「なろう系」のストーリー構成の作品で面白いと思ったものは極めて少ないです。大抵の「なろう系」作品は、型に嵌ったストーリーになりがちなので先の展開が読めてしまいますし、主人公がその圧倒的才能で無双してイキったりするのが心底腹立たしく見えてしまいます。それらのなろう系の弱点を上手くフォローするようなストーリー構成や文章力を持った作家さんはほんの一握りです。
私はなろう系作品が苦手で鑑賞しないように気を付けていたつもりだったんですが、何の因果か公開初日に鑑賞してしまった本作は完全になろう系のストーリー構成であり、不快な主人公などのなろう系作品の弱点がフォローされるどころか増幅されてしまっているような脚本や演出でした。あんなに気を付けてたつもりなのに観てしまった。貰い事故に遭ってしまったような気分です。
世間的には評価が高いようですが、私個人としては全くハマりませんでした。残念です。