劇場公開日 2022年3月11日

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「風化させないための新たな表現」アンネ・フランクと旅する日記 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0風化させないための新たな表現

2022年3月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

不勉強極まりないのですが僕は「アンネの日記」を読んだことがありません。ですから知っている情報はネットの情報でしかありません。それを前提に感想を。(悪しからず)

本作はアンネが日記内で語りかけた(日記名でもあったようですが)キティを擬人化し、<キティの想いや思い出=アンネの日記に込められた想い>という新しい切り口の表現作品です。本作を見終わったときに思い出したのが、昨年鑑賞した「8時15分 ヒロシマ 父から娘へ」という作品です。その作品を制作された美甘さんは「原爆の事実を後世に伝えるためには悲惨な映像を見せても敬遠されるだけ。見やすい作品にすることで、若年層への認知の裾野を広げる必要がある」とおっしゃってました。

本作はそれと同じく「アンネの日記」の中で描かれる厳しい戦争や迫害の事実や辛さをそのまま伝えるということではなく、キティという存在をクッションにして柔らかく、見やすく、受け入れやすい表現にして、アンネを知らない若い方々を中心に多くの方々に広げる目的で作られたのではないのかな?って思いました。このようことは過去の悲しい出来事を風化させないためにとても有意義ではないのかな?って思います。

また原題の「Where is Anne Frank」はとてもしっくりきます。アンネの願いや想いが具現化されたキティから見ると現在の世界はまさに「アンネ(の願いや想い)はどこ?」ってことなんでしょう。彼女の名前をつけてるだけで魂が受け継がれていないという悲しさと戸惑いがキティから伝わってきます。まさに「風化」そのものだと気づかせてくれるのではいでしょうか?タイミングとしてとても悲しい出来事が毎日ニュースで流れている今、忘れてはいけないこと、あの頃と何も変わっていない今を我々は知らなければならないと思いました。決して人間の本質はわからない。だから、多くの人が気づき是正する努力をしなければならないのです。

本作は戦争や迫害だけではなく、差別全般に広げるなど現代にも通用する話にまで展開していますから、ぜひ若年層や子供たちを中心に見て欲しいですし、観賞後にご家族で色々と話して欲しいなぁって思う作品でした。

とっても見やすく綺麗なアニメーションですし、これからの世界を作る人々こそ見るべきと思います。

バリカタ