「ボーイミーツガールだけ見ればまあ…」夏へのトンネル、さよならの出口 アルさんの映画レビュー(感想・評価)
ボーイミーツガールだけ見ればまあ…
アニメーションとはいえ、ストーリーもキャラもリアリティにかける。
ここでいうリアリティとは説得力のこと。
ファンタジー要素をダメと言っているわけでもない。
ボーイミーツガール要素だけでいえばそれなりに楽しめる。
ウラシマトンネルを調査していくところは、ストーリーにも二人の関係にもワクワクしたし、ラストシーンも順当な結末を迎えたと思う。
じゃあ全体としてみたらどうかと言われると、物語を構成する要素がどれも説得力にかけるので今一つ感情移入しきれない。
ウラシマトンネルの存在が唐突だし、いきなり願いが叶うと言われても、え?あの描写だけで願いが叶うことが分かったの??という置いてけぼりをくらう。
何故あそこにそんなものがあるのかも分からず、郷土資料を調査した際にこの点に触れて、説得力を増して欲しかった。
キャラクターについても、主人公が妹が亡くなったことに対して自責の念を抱えてるというのはまあ分かる。
父親がお前のせいだと責め立てるどクズなわけだが、もう少し直接的に関与してたならともかく、さすがに無理がありすぎてこの点も説得力に欠ける。
さらに言うとこんな状態の父親と二人で残して出ていくような母親もまたどクズなわけで、同じ親としてありえなさすぎる。
主人公には影があるという設定を満たすための舞台装置にしか見えない。
ヒロインについても同じで、売れない漫画家だった祖父と同じ志を掲げるところはいい。
けど、それを両親がみて気に入らないから田舎に島流しってそんなことする??
学校辞めて引きこもって人間性を失って漫画に没頭とかなら分からないでもないけど、普通に高校生活送りながら漫画化夢見てますなんてかわいいもんでしょ。
結局この点も「二人には影があって、親がクズという共通の悩みを抱えてます」っていう設定に対する舞台装置だもんね。
たしかに影は落ちるよねとは思うものの、転校初日に他者とのかかわりを持とうとせず軋轢を生むような態度を取り、ちょっかいをかけられたらグーパンで殴るような性格になるための説得力になるかと言われると何だかなぁ。
確かにこの件だけ見れば花城がどんな女の子なのか、どんな過去があるのかって引きにはなると思うけど、これも納得感が付いてこない。
逆にちょっかいかけられとはいえグーパンするような子なのか、物語が進んでいくうちに逆に疑問が湧いていった。
学校の友人というか同級生たちも一瞬出てくるだけで二人をとりまく背景でしかないし、グーパンする必要あった?別になかったんじゃ…?
うんそうだよね、引きを作るためのただの舞台装置だもんね。
物語の建付けや、話を動かすために舞台装置的な役割を持ったキャラクターやイベントが存在するのは当然おかしなことではないけど、どれも説得力に欠けるからそれが透けちゃっていやいやそんなのおかしいでしょって感情が先行してしまう。
冒頭にも紹介したとおり、色々無視してボーイミーツガールだけに焦点を当てて見れば見れなくはないので、もう少しそれを支える屋台骨をしっかりしたものにして欲しかった。