百花のレビュー・感想・評価
全147件中、81~100件目を表示
【認知】と【記憶】とゴダール
病院で多くの人が経験した事があると思います。
医師または看護師さんから、
ベッドでいろんなチューブを、
繋がれている寝たきりの大事な人を指して、
◯◯さんは、聞こえているから、認識してるから、
いっぱい話しかけてくださいと。
そんな言葉を思い出しました。
こちらには、認知できないなけど、
いっぱい記憶してる事はあるよ。
表現できないけど、
憶えてる事はアンタより多いよ、、、。
そんな、認知、記憶に、
敬意を払ってカメラを向けて、
愛情を込めてピントを合わせる。
そんな張り付いたカメラによって、
【認知】【記憶】が炙り出されて、
テンポやプロット、ストーリーを超えて、
客席まで押し寄せてきて驚きました。
本当に驚きました。
何が押し寄せてきたのか?
5秒以下のカットでないといけない、
観客を飽きさせてはいけない、
わかりやすくないといけない、
そんな、
いけない、いけないの、
防波堤を越えてきた新たな波、
逆ヌーベルバーグ?
被写体にカメラを向けなかったり、
映画を解体したゴダールさん、
解体された映画のピースを拾い集めたような、
長い長いカット、
こんな波が来ましたよ。
原田美枝子は本物の女優です
先日テレビに出演していた原田美枝子が、若い頃、黒澤明監督に美容整形してはいけないと教えられ、守ってきたと話していたが、それが、功を奏して、認知症の老女も、リアルに演じられるほんまもんの女優さんになられている。もちろん、若作りもお手のものであるが、人生の年輪を重ねた皺の深い表情が素晴らしいです。映画は、アルツハイマーの症状を同じシーンを繰り返して表そうとしていますが、それには疑問を感じます。また、仮にもピアノ講師を生業とするものが、小学生を放置したまま、一ヶ月も、平気でいられるものか、そこも共感できませんが、菅田将暉の魅力と、原田美枝子の女優力のおかげで、余韻を残す、感動作となっています。ちむどんどんのオーナー役もサバサバしてて好きです。
逃れられない現実
久しぶりに俳優菅田将暉の魅了させられた。
台詞は多くなく、感情も全体的には一定。そんな中、母を探す泉の息遣いやもどかしさからなる泉の怒りや悲しみ。
少ない台詞の中でもあれだけの存在感を魅せてくれた菅田さんに
久々に心撃ち抜かれました。
長澤まさみさんの起用に勿体ないという声も何度か見ましたが
あれは長澤まさみさんじゃなきゃ成り立たなかったとすら思う。
『嫁』という立場も当然重要だからである。実の母ではなくとも泉と寄り添い続ける限り『母』である事には変わりないからだ。
そして命を繋ぐ重要な存在。
欲を言うなら出産シーンをもっと濃い時間にして欲しかった。
次へ繋がれた命の誕生をもう少し潤いあるものにして欲しかったな。
原田美枝子さんは当然ながら素晴らしい演技で『母』『女』としての苦悩や葛藤、己の幸せ…理解は出来なくても、きっとこんな事はいくらでも世の中にあるのかも知れないと思えた。母として落第であったが故に晩年は罰が与えられたかの様な最後となるのもまた人生かも知れない。
映像酔い?するとSNSで幾度となく見掛けたが、真ん中より後ろで鑑賞するとそんな事はあまり感じなかったので参考にして欲しいなと思います。
自分自身、母でありまた母もまだ健在とする中で、今この作品を観ることが出来たのは良かった。
母親って勝手に元気だと思いこんでいる節があるので、たまには電話したり食事に連れ出したりしてみよう。
人の闇を描いた、けれど昇華されるストーリー
そして、愛は残っていた 記憶のすれ違いで起こる親子愛の秀作
ラストは涙が溢れそうな位、感動しました。
息子の泉(菅田将暉)が認知症になった母親の百合子(原田三枝子)を支える物語です。
2人の間には、泉が子供の頃、空白の1年がありました。
そのことで、記憶が曖昧になっても自分を責め続ける百合子。少し恨みながらも献身的に支える泉。
半分の花火の記憶が、2人の親子愛をしっかりと繋いでいたのです。
高齢化社会の日本は、これから認知症患者がどんどん増えていくでしょう。
本作の百合子は、決してほめられた母親像ではありませんが、泉を思う気持ちが随所に表れていました。ラストは何とも切ないですね。
2人の演技も素晴らしかったし、脚本やカメラの演出も上手いと感じました。
親子愛の素晴らしさを表現した秀作だと思います。
今年は花火、見れずにいたが、9月に印象深い花火を観ることができた
「半分の花火」に限っては称賛したい
川村元気さんの小説は映像化をするつもりで書いていると思っています。...
花火が半分…
受け入れ難いし、ピンとこない
認知症の人の心の中を描写した映像というと、アンソニー・ホプキンスが主演した「ファーザー」を思い出す。記憶や今見ているものの危うさを突きつけられるようで、観ているこちらが戸惑い混乱した。
本作で原田美枝子演じる母が見ている風景は「ファーザー」に通じる、認知症の人が感じているあやふやで曖昧な感覚を体験できるものとしてよかったと思う。また、長澤まさみの演技も自然な感じでよかった。ちょっとコメディタッチで若干大げさな演技のイメージが強いので、こんな長澤まさみもいい。
ただ、肝心のお話が今ひとつピンとこない。そもそも母親の過去の行動をどう捉えるかが大きなポイントなのかもしれない。個人的にはそれがどうにも受け入れ難かった。感動的な(はずの)シーンも、だから?と若干冷ややかな気持ちになってしまう。泉くんよ、それで許せるのかい?
いや、もしかしたら人の記憶について考えさせる物語ってことなのか。AIとかバーヂャルアーティストが出てきたのもそのためか?どちらにしてもピンとこなかった。
記憶がなくなっていくのは、なくなってしまえばある意味幸せかもしれない
百花というより百面相と云うべき鬼気迫る原田美枝子の名演。流石の菅田将暉も添え物の感有り。
①舌足らずな部分を想像力で補わなくてはならないので映画としてはまだ未熟だなと思う。「半分の花火」というキーワードの本当の意味がわかるラストも感動が盛り上がらない。②記憶を無くしつつある人が最後まで記憶に残っていたものを、昔の記憶に縛られている人が忘れていたという皮肉。そしてその“もの”が母子の絆を象徴するものであったのに、母が記憶を全く失ってから息子が思い出すという残酷さ。でもそれが人生というものなのかも知れない。③というのは観終わってからあれこれ考えて監督(原作者)はそういう事を言いたかったのだろうと想像(解釈)したまでで、前半の原田美枝子が認知症の症状が出てくるところ(同じことを何度も繰り返す、昔の愛人の幻を見る等)はなかなか上手いと思ったが、後は映画としては表面的な描写に終始した上にやや綺麗事に流れてしまった。認知症が発症するまではリアルさがあったのに、発症してからの描写が喰い足りない。泉が認知症の母の面倒を見る大変さの描写も殆ど無いうえ、24時間ヘルパー(?)を直ぐ雇えたり(というか雇って楽できている?)、海辺の認知症ホームに入れることが出来たり、これから親が認知症になるかもしれない現実に向き合わなければならない者としては、“現実はそんなに甘くないよ、ダブルインカムとはいえあの仕事ってそんなに儲かるの?”、と現実に戻されてしまった。④子供を置いてまで愛人に走った女がまた母親に戻った背景として阪神淡路大震災を持ってきたのは構わないと思う。相手の男は震災で死んだのかもしれないし、死ぬかもしれない目に遭って自分が本当に大切に思っているのが息子だとやっと分かった、という流れも悪くない(息子の名を叫び続ける原田美枝子の演技は確かに素晴らしい)。ただ、地震のあとあんな軽装で瓦礫の街を歩いたり誰もいないのは小説ならヒロイン一人の心象風景として描く分には問題ないが、映画は思いっきり抽象的に描くか或いは具体的な描写を背景にヒロインの行動を描くべきで、中途半端な描写は却って白けてしまう。⑤そんななか、女の部分をさらけ出している若い頃の姿(どうやってシワ隠したのだろう?)も含め演出の足りないところを想像力を喚起させて穴埋めする原田美枝子の演技は素晴らしいと思う(し、映画が成功していないので勿体ないとも思う)。ラスト、どうやってホームから連れてきたのか此れまた?の描写だが完全に呆けてしまった原田美枝子の表情演技は『アリスのままで』のラストのジュリアン・ムーアの演技に勝るとも劣らないと思う。⑥菅田将暉は演技的にはいうことはないが、もうすぐ30台だからか少し顔にオッサンが入ってきているなァ。⑦永瀬正敏はどの映画でも上手いが、ここでも母親が息子を捨ててまで追っかけていった男を、さもあらん、という雰囲気を醸し出している好演。
記憶を失っていく生の中で"忘れられない記憶"と"忘れたくない記憶"こそがその人を形作る... 新たな命を迎える青年が老境の母の生と性に向き合う
菅田将暉さん、原田美枝子さん、そして長澤まさみさんというスターキャストを擁して繰り広げられる親子の愛憎劇・・・原作小説も手掛けられている川村元気監督の長編映画初監督作品です。
プロデューサーや絵本作家としても活躍されているだけあって、登場人物とテーマを極限まで集約した観客に深く染み入り易い構成を取りつつも、過去と現在が瞬時に入れ替わる幻惑的で人を食ったような演出に作家としての自我や初期衝動も注ぎ込み、全体として話題性の高さのみに終わらないエネルギーを孕んだ作品に仕上がっていたように思います。
特に出色なのは、他の映画であれば若い頃の演技は年の若い別の女優さんに演じてもらうこともごく普通でしょうが、本作では泉を置いて恋人と神戸で一年間を過ごした若き愛の日々も原田美枝子さんが演じられています。
その媚態も厭わぬ変わらぬ美しさもまずもって凄いですが、一連の時間を彼女が演じたことによって、百合子という一人の女性の生涯がより強烈に意識されるようになったと思います。
人生は残酷だ
双方の視点
結局誰にフォーカスを当てた作品なのだろうか
若くして認知症を患う母と触れ合いながら過去の記憶を辿る息子の物語なのだが、観ていても母(原田美枝子)の息子(菅田将暉)への懺悔か悔恨なのか息子(菅田将暉)の母への恨み節なのかはたまた自分自身が忘れてしまっていた母との記憶、その思念への詫びなのか、どうにも大きな幹が見つけられないまま上映時間が終了してしまった。
過去の母から受けた仕打ちなのだろうか、息子の母に対する接し方はぎこちなく淡泊を通り越して無関心なようにも映り、母は母で、その当時のことを引きずっている風でもないように感じられ、そうすると終盤で母が謝るのはまだしも、何故息子が謝るのかが今一つ共感できないままだった。
できればもう少し長尺になっても良いから母が何故いつも黄色い服(そして一輪挿しの色も)なのか、自分の幼少期の記憶を生まれ来る子供に対してどう変換して行くのか、妻(長澤まさみ)とどう向き合おうとするのかを見せてくれたら入り込めたかもしれないと、やや残念に感じた。
それにしても最近のドラマには国内外を問わず嘔吐シーンを多用するのでしょう?嘔吐する原因も明確では無かったような気がするんだよなぁ。
全147件中、81~100件目を表示