「奇跡の映画として世界に誇れる可能性があった作品」チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい ヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡の映画として世界に誇れる可能性があった作品
この作品を心から好きなファンの1人として、チェリまほを映画化していただけたこと、また映像化に携わっていただけたキャストの方々、スタッフ、監督の皆様にとても感謝してます。その時点で私は星5の評価です。これからの評価はあくまでも私個人の主観です。人それぞれの評価があって良いと思います。この感想を読まれて気分が悪くなられた方が居たらお詫びを申し上げます。
評価される点は冒頭でも書きました映画化に向けて作品に携わっていただいた皆様と、きちんと人物の想いに寄り添えているかを確認しながら創っていただけた皆様のお気持ちのみが評価される点だと思っています。
(安達と黒沢の恋人と過ごす日常は尊く、きちんと映像化していただけたことは想いを寄り添えて創っていただけた部分に含まれプラス要素です。)
では、次に星5が星1となった理由としては、
・TVシリーズであれほど丁寧に描いてきた安達や黒沢、柘植や湊、他の登場人物の気持ちが、こうも薄く、それぞれの想いが軽く映像化してしまったのか?
「魔法が心をつないだ」がテーマの作品
TVシリーズで「魔法によって黒沢の気持ちに気づけ、そして2人の心を繋げていこうとする想い」
映画版で「魔法をなくしても、大切な人たちと繋がっていこうとする想い」
が、それぞれのテーマなのかと考えていました。
そしてそれを取り巻く大切な人たちのそれぞれの想いがTVシリーズでは丁寧に描かれていたのに、映画版ではその繊細さに大きく欠けたと感じました。
特にそれを感じたシーンは「安達が黒沢の気持ちを知りたい、黒沢と心を繋げたいと強く想った」(キス~ベッドシーン)の部分です。
・両事務所的にやはりNGだった?
・TVでは「表現」出来たものを、映画で「匂わせ」としたのはなぜ?
TV最終回エレベーターの場面は、賛否両論あったかと思います。
私個人としてはあの終わり方はとても最適なラストだと感じています。キスしたの?していないの?観る側の想像を色々と膨らませてくれた終わり方をしていただいたから。
その想像を膨らませてくれた大きな要因として、柘植(浅香さん)湊(ゆうたろうさん)のキスシーン描いていただけたところ、また所々に出てくる黒沢の妄想安達がさらに加速してくれてため、この後安達や黒沢は果たしてどうなるの?と想像が膨らんだからです。
TVシリーズでキスが描けなかった理由として考えられるのは、やはり事務所的に難しいかと。
今、勢いのあるお2人の役者に「固定のイメージ」が付くことは避けたかったのかと推察します。だから今回映画化されることが決まった時は、一番の問題とされる点はNG→OKとされたのかと思いました。
結局はNGのままで、かつTVシリーズでは出来ていた「表現」ではなく、単なる「匂わせ手法」、そして浅はかにとって付け加えた「手の恋人つなぎ」でした。
(事務所的にNGであったなら、本音を言えば映画化は避けて欲しかった。)
(私はLGBTQのカテゴリに属します)
現実は同性のキスやベッドシーンは気持ち悪いと思うのは当然と理解しています。
ですが、好きな人とする行為がそれほどまでに恥ずかしいことなのか?隠さなければいけないことなのか?とても悲しい気持ちになりました。
そして安達や黒沢の役者さん達が、キスを表現したからといってBLに特化した役者だと固定観念で観ることは私は一切しません。むしろ本気で安達、黒沢の想いを気づいて役に取り組んでくれる役者さんと思います。
話は戻りますが、「安達が黒沢の気持ちを知りたい、黒沢と心を繋げたいと強く想った」シーンについて、(原作はリアルで表現されていてそこで既に満足感はあるため)チェリまほにはリアルな描写を求めていません。変に意識せずに純粋で自然な流れでそれを「表現」を求めていました。
だからキスシーンおいては「匂わせ手法ではなく」、TV最終回と同じ「表現」を創ってほしかった。
安達、黒沢の「それぞれからキスする場面」を映しだし、そこで「手の動き(恋人つなぎ)」を映して、最後にカメラを引いて映し出される「キスしている(かも)2人の姿」(本当にキスしていなくてもいいんです。キスしてるの?していないの?そのギリギリの情景で。それがTVシリーズで出来ていた「表現」だと思っています。)
ベッドシーンにおいても、白Tシャツではなく「上半身裸で目覚める2人の姿」。それ以上は何も必要なく、ただその情景を「表現」していただけるだけで観る側の想像力を膨らませてくれます。
このような「表現力」はリアルをはるかに越える力を持っていると私は考えています。
人前で異性同士のキスも恥ずかしいと思ってしまう日本人特有の気持ちでもあるように、匂わせとしたのは、とても残念で寂しい気持ちになり、この作品は上辺だけ取り繕われてしまったものなんだと、映画の途中で急に熱が冷めてしまいました。
(チェリまほにはリアルさではなく、自然な流れで安達、黒沢の想い(好きな気持ち)を描いて欲しいのが正直な気持ちです。それがリアルさを求めているのだと、セクハラや今流行りの言葉で「性加害」だ!と言われ、不快に思う方がいたら誠に申し訳なく思います。演じられている役者さんが好き目線で観られていることも十分承知しています。その方々の想いを否定するつもりはありません。
ただセクハラや性加害の言葉で一方的に否定的にされるのはどうなのかと思ってしまいます。その方々はLGBTQを十分理解された上でセクハラと言っているのであればこちらも受け止め致します。が、単に一つの言葉として発せられているのであれば、それは逆に本当のセクシャルハラスメントに当たるのではないのかと…とても寂しい気持ちになります。)
・エンゲージリング~結婚式のシーンをラストとしなかったのは?
・最後は「絵本の物語の中」としてラストを迎えたのはなぜ?
両家公認となり、お互い幸せを感じる2人。安達、黒沢の気持ち(決意)として交わされた「指輪」
そして、大切な人たちに祝福を受けて行われた「結婚式」
安達が強く願った想いが叶った場面。
定番ではあるけど「チェリまほ」としては相応しい、「最上の場面」がラストとして締めくくられることはなかった。
最後は「絵本の物語の中」として本は閉じられた。
黒沢と安達は、行き交う人たち(異性同士が付き合うのが普通とされる世界)とは別の道
「反対を向いて真顔で歩く」そこには大切な人たちから祝福を受けた2人とは別の2人がいた。
幸せそうでも、楽しそうでもない、笑顔のない2人の姿は、現実では自分たちの想いは叶うことなく、受け入れられなかったのだと。
それを受け入れて、逆らってでも進んでいこうとする姿に見えました。
(では、安達が言う自分達をとりまく大切な人達に自分達のことをきちんと伝えたい想いとは結局なんだったのかと疑問?に思ってしまいました。)
日本だけでなく海外でも高評価の作品の映画化が、「奇跡の映画として世界に誇れる可能性があった作品」であったのに、終わってみれば「一昔前の単なるBL作品」止まりでした。
映像を観られた方々とは別の意味で期待を込めていた(LGBTQと言う枠さえ無くなり、純粋に人が人を好きになる。そんな当たり前の世界が進んでいけるかもしれない。この映画はそれを世界に伝えることができるだけの影響力をもっているものだと、そんな期待を少なからず持っていました。)だけに、改めてセクシャルマイノリティは存在し、それは区別されるべきものと示された映画と感じました。そして日本人ではここまでしか出来ないものだと感じた作品
history2 是非〜ボクと教授〜を創りあげた台湾で、このチェリまほをいつか映像化して奇跡の映画を創っていただきたいと心から願っております。
はじめまして。
とても共感するレビューでしたのでコメントさせていただきます。
ドラマのテンポの良さと多幸感が薄れてしまった残念です。
映画では安達の成長が著しいのですが、丁寧な原作を踏襲している内容なのに、描写に丁寧さが足りないせいか、決意表明的なセリフの数々が唐突に思えてしまいました。原作の黒沢はもっと前向きな部分も多くて、溢れるほどの愛情を受けて安達は成長します。
がっかりしているのは、単にシリアスやリアリティのある描写が嫌だったのではないんですよね。
確かに制作陣が様々な理由から配慮した作品だということはすごく伝わってきます。原作にはない長崎での事故は、パートナーシップを結んでいない同性愛CPの現実を描きたかったのでしょう。
両親への紹介場面もリアリティはない反面、優しいチェリまほの世界でした。
でもそれなら、安達か黒沢の想像かと思わせるような結婚式、ラストの覚悟は見えるけど緊張溢れる二人の表情など、ファンタジーとの落差が大きすぎてものすごく落ち込んで疲れてしまいました。
キスはどちらも事務所NGではないと思いたいですが(二人のこれまでの役柄や同事務所の俳優達は演じていることから)、制作側になんらかの忖度があったのは明白ですよね。
個人的にはLGBTQの方達に配慮したというなら、キスは普通に写してほしかったです。
誰もこの作品にがっつりした場面なんて望んでいないのですし、セクハラ等と言われると異性愛者の私でも傷ついてしまいます。また、令和の現代で男性(または女性)同士の、それも美しいだろう恋愛場面がそれほど嫌がる方が多いのかと思うとそれもまたとても悲しくなってしまいました。海外のLGBTQものをそれなりに見ているせいかもしれません。
制作陣やキャストスタッフには本当に感謝しています。でも様々な層への配慮が絡み合って、なんだか中途半端で、神作品になり損ねてしまった印象でとても残念です。
たま@🍒🍒さま
コメントくださり誠にありがとうございます。
たまさまのお気持ち良くわかります。本当にその通りだと思います。
私自身もレッドカーペットに行ける要素はあったと思っている一人です。だからこそガッカリ感が半端ないです。
少し時間を空けて自分の気持ちを整理いたしました。修正したレビューをお時間あるときお目通しいただければ幸いです。
とても共感しました。。
私も映画化あたって諸々の問題は片付いたものだと思いましたし、スペシャルドラマではなく映画にするという意味は、普通に男女のラブストーリーを同じように描くつもりなんだろうな、と思っていました。
そしてドラマ版のあのテイストでふつうに映像化すれば、☆4の出来にはなるはず…と思っていました。
うまくいけば☆5…レッドカーペットを歩けるかもしれないという期待もありました。でも結局、私の中のケイト・ブランシェットから“チェリまほ”の名前が呼ばれることはなく、頑張った俳優陣の演技がワールドワイドに引用され評価される機会もなくなり(私的カンヌの中で、ですが)、とても悲しい気持ちでいっぱいです。