渇水のレビュー・感想・評価
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テーマがわかりにくいと感じた
この映画の物語を通じて、何を言いたいのか、僕にはわかりませんでした。
何かが変わったのかといえば、何も変わりません。
主人公の水道局員の岩切さんは、自分を抑えつけることに耐えきれなくなって、暴走した結果失職しましたが、それによって行政の何かが変わったということはありません。
姉妹も、行政サービスに保護されただけで、母親や父親と幸せになったわけでもないし、大人を信じられないと言ったお姉ちゃんも、岩切さんの暴走くらいで心が晴れるわけはないです。
母親から、アンタくらいの歳には親のこともわかっていたと言われて、歳のわりに大人びて世の中のことを理解していた賢いお姉ちゃんが、たまたま偶然にタイミングよく降った雨だけで、成長するとも思えません。
岩切さんの息子から電話で、海へ行きたいと言われたのも、「その結果のためにどんな努力をしたのか?」っていうと、ヒマワリ持って会いに行ったけど、奥さんや子供には受け入れてもらえずに「考える時間が欲しい」といって追い返されただけです。
物語を通して観客に対して訴えたい何かがあるのかというと、テーマはとても理解できません。
ただ、公務員という仕事の救いの無さを淡々と描いたように見えます。
公務員はただ仕事を任されただけの作業員に過ぎず、公務員の裁量で市民へのサービスが不平等に偏ることは許されません。
姉妹がどんなにかわいそうでも、自分のやった業務の結果、幼い少女が万引きに手を染めてしまったことを目の当たりにしても、なんなら姉妹が生活苦から売春行為に走っているところを目撃したとしても、仕事は仕事です。
人間として耐え難く、ついには暴走してしまうほどに苦しいとしても、それが公務員の仕事です。
そのような苦しい仕事をしていても、市民からは「税金で給料をもらっている」といって後ろ指を差される。
お金のでどころが税金だろうが会社の顧客だろうが、労働者にとって給料は「労働の対価」であって、公務員だって仕事をしてお給料をもらっているのだから、本来ならそのような中傷を受けるべきではないのに。
何かを伝えたいというより、理不尽を見せたかったのでしょうか?
たしかに世の中は夢と希望に満ちてなんかいないけれど、こういう現実を見せつける内容は陰鬱な気持ちになって楽しくありません。
評論家とか、頭の良い偉い人には良いのかもしれないけれど、映画にエンターテイメントを求める多くの観客にとっては、胸糞悪く感じられるのではないでしょうか。
ディハイドロオキシジェン
どこかの評に書かれていた通り生田・磯村の目の死に方が見事だし,長女もフランキー・コリオ@「アフターサン」ほどではないにせよ,なかなかの逸材とお見受けする。
日本はライフラインやインフラ,治安維持,医療,防災等日常生活を支える基本的な公共サービスが,その存在すら時々忘れてしまうほど充実しているが,その網にどうしてもかからない人たちを救うために,壊れてしまう現場担当者がいることに思いを馳せたい。
最後に待望の降雨があって様々なものが潤い,水に流してしまうところがいかにも日本風か。
雨降って…
門脇麦がYOUで、お姉ちゃんが柳楽優弥みたいな話になるのかよーと思ったよー(監督が是枝裕和じゃなくて良かったねー)
公共料金で水道は最後の砦、自分も若い頃止められた経験があったことを思い出す(遠い目)
いつまでもあると思うな親とカネ(教訓)
小さなテロ
水道料金を滞納している人々の家の水道を止水する水道局員ととある姉妹との物語です。
自分はあまり自宅にいないので、水道代がかからない生活をしているので、滞納なんてした事もないんですが、今作に出てくる人たちはかなり滞納している人たちが出てきます。しかもわりかし逆ギレする人たちが多いのも特徴的でした。
メインは水商売で生計を立てるシングルマザーと幼い姉妹の一家、他にも家庭の事情や経済的問題、身勝手な理由で滞納する人たちがぞろぞろ出てきます。滞納している理由に同情できる人はほとんど出てきません。というか滞納なんて余程のことがない限りしないと思うので、それなりに問題がある人が滞納してるのかなぁとなんとなく現在とリンクしたなと思いました。
主人公も過去に家庭を置き去りして過ごしていた事をこうかいしつつも、流れるように仕事をしている事で色々中和している人物だなと客観的に思えました。
水道を止める事には抵抗は無いけれど、生きている意味を実感しているようには思えないのもなんだか辛い描写だなと思いました。
姉妹の健気に生きる姿が美しくも見えて、それでいて痛々しくも見えてしまいました。最初は水を汲んだり、節約に励んだりと、ダメな母親を頼らずとも強く生きているのですが、後半になってくると万引きに手を出したり、他人の家から水を盗んだり、犯罪紛いのところまで手を出してしまっていたので、母親に近づいていってしまうのではないかと危惧してしまいました。
姉妹と主人公と同僚が一緒にアイスを食べたり、金魚の水替えをしたりするシーンは微笑ましかったです。
母親は全くを持ってダメ親なので、子供たちの面倒は見ているようでほとんど放置していますし、金稼ぎの水商売ではなく、恋愛としてに軸を移してしまっているので、完全に子供達のことは置き去りにしているのもダメだなぁ、救いようがないなと思いました。
終盤、流れを変えたくなったという変化と共に、主人公が姉妹と一緒に小さなテロを起こします。止めている水道を解放してばら撒くのはなんだか爽やかな絵にも見えました。結局取り押さえられて警察へ突き出されますが、どっちかって言うと児童を連れ回した方が事件性としてはデカいのかなと思うと、しっくりこない部分もありました。
出所までのスピードだったり、突然の留置所へのぶち込みだったり、色々と急で雑だなと思いましたが、オチへの持って行き方は良かったなと思います。
姉妹も行くべき場所が決まり、同僚は守るものが出来て、主人公は息子と再会する、ヘビーな内容だった中盤からは想像できない光の射すラストでした。
役者陣の演技も素晴らしく、生田斗真さんの死んだ魚のような目をした、それでも流れを変えるために生きる表情の変化が素晴らしかったです。
門脇麦さんもダメな母親の熱演が最高でした。そこまで登場シーンは多くないですが、とても印象に残りました。
最近観た「なぎさ」にも出演されていた山﨑七海さんも良い味を出していました。儚げな表情、背伸びして妹を守ろうとしている姿がとても良かったです。これからの邦画界を担っていく存在になっていくと思います。
良いところもあれば、引っかかるところもある作品でした。水道代が無料になれば良いのになという気持ちはありつつも、水道局の人たちの生活のためにしっかり支払った方が良いんだろうなという何重にも考えさせられました。
鑑賞日 6/4
鑑賞時間 13:50〜15:40
座席 G-1
柄本明は出ていなかった
予告篇からこの少女たちは辛い境遇にあるんだろうなと解っていたので、最初の水のないプールで楽しそうに泳ぐ振りをする姿に泣けてしまった。そして最後のプールに飛び込むところでも泣いてしまった。
「怪物」「渇水」と子どもたちを描いた作品が続いた。
子どもたちは素晴らしい。
磯村勇斗の明るさが救い。ほんと最近よく出てますね。
柄本明さんは出てこなかった。
あなたは渇いてない?
前橋市水道局で働く男達の話。
ある家族の姉妹二人と水道局で働く岩切(生田斗真)、マニュアルに忠実な岩切だけど姉妹との出会いで心の変化が、後輩の木田(磯村勇斗)を交えた切ない、ちょっと悲しいストーリー。
原作は小説、30年越しの映画化。
本作の映画予告を観た時に凄く楽しみにしてた1本。個人的には同日公開の「怪物」よりも楽しみにしてた!
水道料金を支払えない家庭や店舗を周る岩切と木田、本作だと4ヶ月滞納で停水執行の為家庭、店舗と周ってたけどリアルも4ヶ月が限度で停水執行なのか?
水道料金を支払えないある家庭、そこに住む姉妹二人と出会い「停水執行」をする事になるんだけど、その家の母親(門脇麦)が、いい加減、いつまでも女、多少の小遣いは娘に渡すんだけど家には帰ってこない。そんなことから長女の気持ち荒んでく、長女ながらに妹を守ろうと万引き、人の家から水を盗む(真夏のカンカン照りでダムの水が少なくなり給水制限の為、公園の水が止められてる為)など。
姉妹二人が慰め合うこの描写を観て率直に思った感想はこんな幼い子達にこんな思い、気持ち、こんな事をやらせないでくれ!って、作品とわかっていながらも感情移入してしまった。
この万引きをしてる長女の姿を見た岩切、それまでマニュアル忠実、独り独りに情をかけてもしょうがないって考えだったんだけど、長女に言われた「大人、こんな社会大嫌い!」と言われた事で吹っ切れた岩切、止められてた水の止水栓を開け、最終的には会社の人間に取り押さえられる...だったんだけどその岩切の行動には人間らしさ、優しさがあり笑顔を失ってた長女の顔も笑顔を取り戻せてたから結果良かったのかな!?
岩切自身の渇いた心も少し潤って最後笑顔になれてたみたいだったから良かった!
長女の女の子がめっちゃ推しのノンに似てるなと思った!
【今作は前半は"停水"のシーンの度に心の潤いがドンドン無くなるが、後半は徐々に心潤う作品。孤独な水道局の男を演じた生田斗真さんのどこか寂しき佇まいから、”ある決意”に至る過程は宜しき作品でもある。】
ー 水道局の”停水”を行う仕事は、精神的にキツイだろうなあ、と思いながら観賞。-
◆感想
・夫に逃げられながら、娘達にはパパは船の長旅に出ていると言いながら売春をしている母親(門脇麦)。水道料金を滞納して”停水”。
ー ”中卒の夫に逃げられた女に、どんな真面な仕事があるんだよ!”と水道局の岩切(生田斗真)に啖呵を切るが、脳内で”子供を産んだ責任をキチンと取れよ!”と毒づく。門脇麦さんって、ヤサグレた女性を演じても巧いなあ。
それにしても、喫茶店で男(篠原篤)に優しくしてもらったからって、あんなに簡単に子供を置いて出ていくかな。
”アンタは夫と同じ水の匂いがする。あの人は鉄と火の匂いがするから大丈夫。”は印象的な台詞である。-
・マンションに住むボンボンが水道料金を滞納して”停水”直前まで行くシーン。で、恋人に水道料金を出して貰い、岩切に3万をクシャクシャにして目の前に捨てるシーン。
ー 無茶苦茶、腹が立ったシーンである。お前は一生”停水”だ!-
・岩切と一緒に”停水”に回る若き水道局員(磯村勇斗:毎週、この人が出演している映画を観ている気がする。良いもんなあ。)の情の厚さにやや心潤う。
ー ”停水”した上記女性の二人の娘を気遣い、アイスを買って上げたり・・。ー
<今作で、心が乾いていくシーンの幾つか・・。>
■岩切自身が妻(尾野真千子)と別居しており、彼自身の心が”愛しているのに上手く接する事の出来ない自分に似て来た息子”と会えずに干からびているのが伝わって来るからである。
そして、彼自身が幼い頃から親と上手く関係性を構築出来なかった事も彼の台詞から分かるのである。
■母親に捨てられた長女が、お金のない中、万引きするシーンは切ない。そして彼女が叫ぶように言った言葉。”大人なんか、大嫌い!”
■岩切が、毎日水をやって育てていた向日葵の花束を持って妻に会いに行くも息子からは敬遠され、海に行こうと言っても断られるシーンも切ない。
ー けれど、このシーンがラスト心潤うシーンに変わるのである。-
■何かが壊れた岩切が、”停水”の道具を壊し公園中に水を撒くシーン。
ー 虹が切ない・・。-
<警察に拘留され、水道局の上司から辞職を求められ、応じる岩切。
だが、彼の表情は何故か吹っ切れたように爽やかだ。
母親に捨てられた、施設に入所する事になった娘達からの絵手紙。
そして、息子から掛かってきた電話”海に行こうよ!”
今作のラストはやや心潤された作品でもある。>
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