「目には潤いがないまま」渇水 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
目には潤いがないまま
非常に面白いテーマではあったけど、そのテーマを生かしきれていない感じがして勿体なかった。すごくチープで20年前の映画と言われても気付かないくらいの映像と、別に面白くもない水道局員のエピソード。これが痛手過ぎたね。
猛暑日が続き、節水を呼びかける市の方針から、料金を滞納する家庭の水道を止める局員たち。世の中がカラッカラであることが、映像の質の悪さからイマイチ伝わってこなかったのが結構マイナス。雑に水を使っちゃっているし、そのせいで困窮の様子が薄れ、あまり水のありがたみも分からない。夜のシーンが多いのも惜しい。公園の水道からは水滴しか出ず、長時間かけてバケツ一杯にしたのに〜の方が分かりやすくて、刺さったと思うな〜。
生田斗真演じる主人公の男の魅力がほぼゼロに等しい。おかげで彼のエピソードも楽しめないし、ドラマとしても見応えがない。だけど、"もう1人の主人公"を演じた山崎七海が素晴らしい。すごく綺麗な顔立ちをしていたし、彼女の成長物語が面白い。身も心も乾ききった少女が、天真爛漫な妹を抱えながら、どのように生きていくのか。妹の涙を見て「それも水分なんだよ。」と言った、あのセリフはとても印象深い。
白石和彌監督がプロデューサー側に回っているものの、監督特有の人間の毒々しさは全くもってなく、監督のファンだからといって見に行くと肩透かしを食らうかも。だけど、この山崎七海という女優を見るだけでも一見の価値あり。大女優になりそうな予感。ストーリーは淡々と進んでいくけれど、それがこの世の残酷さを表しているようで、割と飽きずに楽しめた。
面白くはあるけど、少し物足りない。
考えさせられる内容だけど、涙は出ない。
でも、後半からの畳み掛けは非常に良かったし、胸に刺さるシーンも多くあったから、結構好きでした。見て悔いなし。ぜひ。