ベルファストのレビュー・感想・評価
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洗剤抱えてうるうるにやられた
最初、思ってたより曲がポップだなと思った。
しかし、見終わって全編に渡り曲の効果が素晴らしかったことに気がつく。
そして、どのシーンを切り取っても映像が完璧に美しい。
今の厳しい現実のモノクロの続く中、非現実のカラーが効果的。
お前が1人で育てた。
言い切ったね、父ちゃん。
ワンオペ育児よく頑張ってるね。そして美しいね、母ちゃん。
しっかり者の兄ちゃん頼もしいな。
じいちゃんが教えてくれた算数も面白素晴らしいな。
じいちゃんを看取って、ベルファストに残るばあちゃん切ないな。
母親に促され、洗剤を返しに行ったのに洗剤を抱えたまま戻ってきて。
洗剤を抱えてうるうるしてるバディの瞳にノックアウトされた。
憧れの少女に花束を渡して、あの子と結婚できるかバディに問われた父ちゃん、完璧な答えだ。
そうだよ、対立や抗争より、愛だよ、違う考え方への寛容さだよ本当に大切なことは。
両親のダンスのシーンを嬉しそうに見ているバディも微笑ましかった。
繰り返し観たい作品だ。
差別、分断が起こす平穏な日々のゆらぎやすさ。 ベルファストに住む一家族の暮らしを通し伝えるもの。
時に残酷なまでに他者の自由を奪い取ることができる魔物になってしまうのも人間。
そして、身を呈して誰かを守り愛をもって教えるのも人間。
あたたかく明るい家庭にも騒動は否応なしにおそいかかる。そのときのこどもたちはいつも無力だ。
環境が左右する人生の風をまともに受けるしかなかったバディとお兄ちゃんも荒波に浮かぶ小さな船のようだった。
まだヤンチャ盛りのバディの澄んだ眼差しの中にみえた
たくさんの気持ちをキャッチしたよ。
そして、忘れたり、見えないフリしたりしちゃいけないことがあるってことも!
美しいモノクロの光と影の画面から噛みしめた98分。
おじいちゃん、おばあちゃんのたくましくやわらかい愛や
父さん、母さんの力強く前向きな愛は、彼ら兄弟が生きていく道の上で灯火や道標になるんだろうね。
バディとお兄ちゃん、それが今回の不幸中の大きな大きな幸せだって気づく時がきますように。
新天地での家族が郷愁と土台なる愛を胸にたくましく歩みますように。
のこったおばあちゃんが慣れ親しみ思い出のつまる土地で緩やかに暮らせますように。
おじいちゃんが天国でそんな皆を安心して眺められますように。
いきなりのタイタニック
バディの視界を再現するカメラワークとモノクロ映像で、主人公の追憶を体験する物語となっている。
バディは小学校低学年なので、カトリックと英国国教会の違いもよくわからない。カトリックは、懺悔さえすればなんでも許してもらえると誤解しているくらいだ。
イギリス帰属派による襲撃もテロ行為もモノクロであるがゆえにショッキングな映像を抑えることができているが、幼心に大きな傷をつけたのは間違いがない。爆発の炎だけに色がついていたのが、それを意味していると思う。
それまで友好的に暮らしていた住民が、反目を煽る民族派組織によって分断されていく様子が、今でも世界各地で起こっている分断を彷彿とさせる。祖父母との楽しいひとときも、同級生の女の子への淡い恋心もその分断によって強制終了させられてしまうが、父親がバディに言った言葉が心にささる。
この作品は好きというべき
今、見るべき
そこに愛があります
ラストにすべてが集約していく、しっかりとした映画。
映画がしっかりとして、構図も決まってるので、モノクロ映像も『奇をてらう』印象をうけません。
ちゃんとした意図があり演出をしてると思いました。
暴力的な時代の荒波に流されて行ってしまいますが、
何処にでもある家族の“愛”の話だと思います。
派手でないので、途中眠くなりましたが(寝不足で観に行ったため)、それはそれで有りだったんだと思っています。
主演のバディは、中にオッサンが入っているではないかと思う位いい味だしてますし、
お母さん綺麗で、じいちゃん、ばあちゃん、カッコよかったです。
役者のレベルの高さを感じずにはいられないですし、
それをうまくまとめ上げるケネス・ブラナーには圧巻です。
自分にとっては北アイルランドといえば『父の祈りを』でしたが、
今作品もそれに並ぶ作品だと思いました。
脚本だけじゃない
ある一家が引越しを決意して住み慣れた故郷を離れる物語です。
心にメッセージが残る秀作
ラスト、主人公たち家族はベルファストを去ることになる。
家族の乗った空港行きのバスを、こっそり見送るおばあちゃん(ジュディ・ディンチ)の顔がアップになり、彼女は「Go(行きなさい)」と言う。
そう、家族はベルファストをあとにする。
この町に残る彼女は「ベルファスト」そのものだ。
このシーンで、本作のタイトルが「ベルファスト」であること、そしてケネス・ブラナーが生まれ育ったこの町こそが主人公なんだな、と腑に落ちた。
この映画の舞台は、北アイルランドの中心都市ベルファストの、さらに狭いエリア(日本語でいうと“ご近所さん”という感覚)。
そこは、暮らす全員が顔見知りのような場所だが、カトリックとプロテスタントの政治的な対立から暴動が起き、町は分断されようとしていた。
バリケードが築かれたり、治安のため軍が駐留したりと、町はかなりの緊張状態にあるのだが、子どもたちを中心に、そこに暮らす普通の人々の日常を描く。
主人公は小2(たぶん。九九を勉強しているので)のバディ。この子役が絶品なんだけど、彼を取り巻く両親や祖父母がまた素敵。
「失われた地平線」「チキチキバンバン」「恐竜100万年」など古い映画が多く登場し、映画愛が溢れているのもイイ。
(ケネス・ブラナーが監督した)「マイティ・ソー」のコミックが登場するのもクスリと笑える。
後半、2度めの暴動が起きて以降、素晴らしいシーンの連続。
そして日常の何気ないエピソードを描いていたように見えて、ラストに向かって次々と伏線が回収されていくのが見事。月旅行、成績と席替え、おじいちゃんの病気、そしてお父さんの出稼ぎ問題などなど。さりげないけど、仕事が細かい脚本に唸る。
特に万引きと略奪の対比については、「人を殺すと国によって裁かれるのに、戦争での殺人は許されるのか?」という問題を考えさせられた。
地域の分断は、主人公たち家族の分断と対比される。主人公の母親と、出稼ぎで単身赴任している父親との言い合い。そして、おじいちゃんの死。
両親のケンカは地域の分断が原因となっている。そのバカバカしさ。そしてイデオロギーの対立やケンカによらなくても、いつか人は死んで永遠に別れなくてはならなくなる。そのことを、おじいちゃんの死は示している。
家族の分断を収束させた、おじいちゃんのお葬式の後のパーティー?(日本でいう“直会”か)での、お父さんがお母さんに捧げた歌にグッとくる。
そして家族は一つになって、故郷ベルファストを離れることを選ぶのだ。
町を去る前に、好きな女の子にお別れを言ったバディ。
バディはお父さんに「(彼女はカトリックなんだけど)僕はあの子と結婚できる?」と尋ねる。
すると、お父さんは、「出来るさ。フェアで優しくてお互いに尊敬し合えるならね」と答える。
本作の舞台は1969年。それから50年以上が経ったが、この世界から宗教やイデオロギーによる紛争はなくなっていない。この現実に対して、お父さんのセリフが心に響く。
100分足らずの小品のおもむきだが、素晴らしい役者の演技が楽しめ、観る者に確かなメッセージを残す秀作である。
ギリギリで生きる中での家族の絆
主人公は、紛争の真っ只中で子供時代を過ごし、その点では不遇である。しかし、家族のつながりを見ると、出稼ぎで家族を支える父親、一緒に生活を共にする兄、1人で子育て全般をこなしている強く厳しい母親、優しい祖父母、両想いのガールフレンドに囲まれて、人との繋がりには非常に恵まれている。
温かな人情に育まれながら、異端視した者を排除しようとする人間のおぞましい面をも目の当たりにして、戸惑いながらも大人になっていく。
生活費もままならないギリギリの生活を強いられながらも、クリスマスにはプレゼントを買ったり、家族揃って映画に行ったりするなど、できる範囲でめいっぱい楽しもうとする姿勢は、ぜひとも見習いたいと思うようないじらしさがあった。
見知らぬ土地で、自分達家族だけで寄り添いあって生き抜くと決意した時の、家族の団結感はすごかった。祖母は、置いていかれることになるが、息子たち家族のことを思ってそれを許す、その愛情もやり切れなく感じられた。
ケネスブラナーの故郷への愛と人々の温かさのつまった作品
アイルランドの問題を子供の視線とウィットをまぶせて描く
なにが正しいことか
IRAが登場する作品はいくつか記憶するが、いずれも武器を取って闘う人の話だった。
同じコミュニティで共存してきた市井の人々が社会の対立に翻弄されていく中、普通の生活を維持しようと努めていた家族や隣人の物語が、主に末っ子の視点からユーモアをもって描かれる。商店襲撃と洗剤のエピソードが可笑しくも衝撃的。
新天地での再出発が幻想なのか、故郷の地でしか生きられないことが思い込みなのか、その時点では誰にも分からない。(劇中最後のメッセージのように)どちらを選んだ人にも、どちらも選べず命を落とした人にも、皆に平安があるように。そして意思に反して居所を奪われ生命の危険にさらされる人がこれ以上増えないことを願う。
宗教ってほんと・・・
2022年劇場鑑賞85本目。
ケネス・ブラナーの幼少期の体験を元にベルファストという町で起きたプロテスタントのカトリック排斥運動を描いた作品。
主人公家族は差別する側のプロテスタントですが、正しく育った両親のおかげでそういった差別をする人を軽蔑し、手を貸さない姿勢を貫いています。
色々な差別がある中で、人を幸せにするためにある宗教のせいで人が傷つくのが一番愚かだと思っているのですが、それは世界でも数少ない無宗教派が多数の日本人だからこそ言えるのでしょうか。
この作品はモノクロで、劇中の映画や舞台だけカラーで描かれていて、眼鏡に映る舞台までもその眼鏡の部分だけカラーという凝りようなので、ここに何かしら意味があるはず。それは暗い現実から唯一離れられる天国のような場所であるのかなと思いましたが、裏テーマとしてテレビに映る映像はモノクロのままであったことから、今の配信サービス全盛の中、映画館や舞台に直接足を運ぶ素晴らしさを願ったのかなと思いました。これでこの作品がネトフリ限定配信だったら間違いなんでしょうが、ちゃんと映画館で上映してパンフレットも作られていますからね。
社会に翻弄される家族
北アイルランド問題に起因するベルファストに生きる家族の選択。大人たちの行動により翻弄される選択を子どもの視点より描く。
主人公の楽しげな毎日と同時進行で進む大人たちの欲望に取り憑かれた争い。それから家族を守ろうとする父と母。
そんな中でも家族を想い接する祖父母がとても優しく感じられた。
またベルファストを離れたくない少年の言葉が率直でまっすぐなだけ心に刺さる。
派手ではないがジョディ・ダンテさんのメイキャップも凄みを感じた。そして最後に放つ彼女の言葉にはいろいろな想いをのせて放つため、少年の言葉とはまた違った言葉の重みを感じた。
ジェットコースター
郷愁に溢れた佳編
映画監督であり俳優でもあるケネス・ブラナーが自身の幼少時代を反映させて撮り上げた青春映画。
ケネスの生い立ちが知れるという意味でも面白く観れるし、1969年に起こったベルファストの動乱を知るという意味でも興味深く観れる作品だった。
尚、ここではプロテスタントとカトリックの宗派の対立が描かれているが、これはいつの時代でもどこでも起こりうる問題として置き換えられると思った。
例えば、宗教とは少し違うが、ウクライナ侵攻における新ロシア派と新欧米派の争いなどは今まさに起こっていることであり、どうしても連想せずにいられない。かつてのボスニア紛争も然り。やはり隣人同士で殺し合いをする無慈悲な戦争だった。ルワンダで起こった大量虐殺事件にも同様のことは言えよう。今まで同じ地域に住んでいた隣人同士が、ある日突然敵同士になってしまうという状況。それがこの手の争いの残酷な所である。
その苦しみ、憤りを本作はバディ少年と家族たちの姿を通して描いている。
バディたち一家はプロテスタントなのだが、彼らは一連のカトリック弾圧運動には決して参加しない。そのせいで父親は窮地に追い込まれ、やがて一家はベルファストにいられなくなってしまう。まだ幼いバディにとっては正に青天の霹靂。この土地には友達やガールフレンドもいるし、大好きな祖父母だっている。彼らと別れて暮らすなんてできない…と思い悩むのだが、その無垢なる姿を見ていると、自然と胸が締め付けられてしまう。きっと幼きケネス少年も悲しい思いをしたに違いない。
このように本筋だけをみてみると実に悲劇的なドラマである。
ただ、ケネスはやはり稀代のエンターテイナーなのであろう。歴史の一幕を照射しつつも、各所に家族愛や隣人愛、そしてバディの日常をユーモラスなタッチで描くことで、全体的には肩の力を抜いて楽しく観れるように作られている。当時夢中になった映画やポップカルチャーも出てくるので、同世代には懐かしさも感じられるのではないだろうか。
例えば、本作は基本的にモノクロ映画であるが、バディが映画館で観るカラー映画はカラーのまま再現されている。引用されるのは「恐竜100万年」や「チキ・チキ・バン・バン」といった娯楽作品群。それをバディたちは家族揃って楽しそうに鑑賞する。その光景には、さながら「ニュー・シネマ・パラダイス」のような映画賛歌的趣が感じられた。
他にも「スタートレック」や「サンダーバード」、「007」、コミック版「マイティ・ソー」等々、懐かしい名作の数々がスタルジックに振り返られている。西部劇の傑作「真昼の決闘」を伏線とした決闘シーンもユーモアたっぷりに再現されていて面白かった。
このように過酷で険しい時代の中でも確かに幸福を実感できる瞬間があったということを、ケネス・ブラナーは暖かな眼差しで描いて見せている。誰が見ても楽しめる普遍的な青春映画として昇華されており、このあたりの料理の仕方は実に見事というほかない。
ただ、全体的に薄味&コンパクトにまとめられており、少々食い足りなさも覚えたのも事実だ。
例えば、自らの幼少時代を美しいモノクロ映像で綴ったアルフォンソ・キュアロン監督作の「ROMA/ローマ」は、どうしても作品のモティーフやスタイルから比較してしまいたくなる。「ROMA/ローマ」と比べると本作の方が圧倒的に観やすいことは確かだが、映像やドラマ的なケレンミやダイナミズムは遠く及ばない。どうしてもこちらの方が物語が”小ぶり”な分、小粒な作品に感じてしまうのだ。
一方、キャストでは祖母役のジュディ・デンチ、祖父役のキアラン・ハインズの功演が光っていた。全体的に軽妙なトーンが続く中、彼らの演技が作品に一定の重みを与えていることは間違いない。特に、ラストのジュディ・デンチのクローズアップは忘れがたいものがある
素晴らしい人生への讃歌
分断を目の当たりにした、ケネス・ブラナーの幼少期を描いた作品。
ブラナー自信はもちろん、キャストも北アイルランドに縁のある役者ばかり。音楽もヴァン・モリソン(ベルファスト出身)を起用するなど、本作にとてもこだわりを持って製作しているのがみて取れました。
そして主人公バディ役のジュード・ヒル、これが映画デビューだと言うから驚きです。
なんと自然で表情が豊かなのでしょうか?
モノクロで描かれた舞台は厳しい状況下なのですが、子どもの視点がベースなのでどこか気楽な空気で描かれ方です。
また時々差し込まれるカラーの演出も、その節目節目に彩りを添えるようで良かったですね。
そして皆悲しみに暮れてばかりじゃないのが実に嬉しい。
北アイルランド紛争その渦中にいながらも、バディやその家族達はどこか小さな幸せを持って生き生きとしてるように見えるんですよ。
皆、確かな絆や温もりを感じるんですね。
在りし日の故郷に想いを馳せた、素晴らしい人生への讃歌でした。
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