ベルファストのレビュー・感想・評価
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不幸な宗教対立の裏にある、ベルファストという街の幸福感。
やはり、この映画は、ケネス・ブラナーという監督が、ベルファストという街で暮らしていた時に抱いていた、幸福感を表現したということに尽きるのかもしれない。
北アイルランドで起こった、プロテスタントの武装集団による、カトリック教徒居住区への襲撃シーンから物語は始まる。
無邪気にベルファストの路上で遊ぶ少年バディの目の前に、突如として暴徒が姿を現す。
その日から、街にはバリケードが造られ、バディを取り巻く人々や、街の様相も様変わりしていく。
しかし、この映画は紛争の悲惨さを描くのではなく、ベルファストという街や、そこで暮らす人々の様子を、少年バディの視線でユーモラスに描いていく。
どんなことがあろうとも、ベルファストという街で暮らすことの幸福感が根底に流れている。
じいちゃん、ばあちゃん、母さん、父さん、そして、ベルファストの街が大好きだ!
素敵なユーモアと幸福感あふれる素晴らしい映画です!ぜひ劇場でご覧ください!!!
歴史をしらないまま…
ケネス・ブラナーの作品に驚きや新しさはないし、内輪受けの冗長な進行がやや退屈ではある。
しかし、オープンニングのフルカラーからモノクロへの移行、その後のカメラ運びのいくつかのシーンでは面白いものがあった。
背景の人々がワサワサしていて画面を追いきれないとか、ラストのダンスシーン(それ自体はステキだったが)の必要性など疑問も多いが、キアラン・ハインズのセリフに印象的なものがいくつもあり、存在感を発揮していた。
宗教の対立は日本人には理解しがたい問題だが、家族の身の振り方という視点でとらえると、土地に根を下ろしたい安定志向の妻と新たな世界を開拓して家族と共にくらしたい夫との軋轢をもう少し丁寧に描いてもよかったのではないかとは感じた。
ベルファスト出身のヴァン・モリソンの乾いたあっけらかんとした声が全編に流れ、前向きな家族の結束をサポートした。
また、途中テレビに映るのは「リバティバランス」と「真昼の決闘」そんなお楽しみも。
時代に翻弄される悲しさ…
複雑な北アイルランド問題初期を映像化
アイルランドとイギリス間で長年くすぶっていた、アイルランド島北部に位置する北アイルランド問題は1998年に「イギリス領ではあるけど諸問題は南北のアイルランド島民自身が解決」という解決したのかしてないのかよく判らん一応の決着をしてはいるものの、近年もイギリスのEU離脱をよしとしない勢力が暴動を起こしたりとややこしい地域だが、そんな北アイルランド問題のキッカケとも言える、1960年代後半のベルファストで起きた、プロテスタント派によるカトリック派への暴動、暴行、焼き討ちを少年期に体験したケネス・ブラナー監督の実話。
オウム級のカルト教団でもあるまいし何故同じ宗教の宗派が違うだけでそこまでする必要あるの!?と聞きたいけど、考えてみりゃ同じイギリス同じイングランド同じロンドン、だけど別チームファンってだけで暴動暴行が起き他人を死に至らしめたりもする訳だから、日本人の自分にしてみりゃ何とも理解し難い。
だからサッカーとラグビーの連盟大会に関しては「発祥国特典」としてイギリスは4つの代表チームを持つことが許されているのだろうし(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)、そもそも我が日本が「イギリス」or「英国」と呼ぶ国の正式名も『グレートブリテイン島および北アイルランド連合王国』と長々ったらしいのが既に面倒くさい国民性を表している。
そんな面倒くさい国民性の極々一部を垣間見る映画。
カラーが当たり前の現在におけるモノクロ映像としては「海と毒薬」(1986年)以来本当に久しぶりに意味のある素晴らしい映像だったと思う!(爆発までは勝手にカラーだと脳内変換されていて「いつからモノクロに!?」と戸惑った…😅)
人間の身勝手な争いは何年経っても無くならない
歴史上の出来事として認識していた北アイルランドの抗争の様子が、ケネス・ブラナーの幼少期の想い出として描かれ、また恐らく全く予想されていなかったウクライナの現状も生々しく心に過り観客の心にその情景は深く刺さるものとなった。子供の目の前で爆発が起こり突然近所が襲われる恐怖。そんな状況でも、子供らしく、いや、子供なりに、些細なことも観察しながら、頑張っていかなきゃ、という健気さが、時にコミカルに、可愛らしく描かれている。抗争の原因のひとつ、宗教の違いから、カトリックとプロテスタントの違いから、悔い改めの違いをネタにしたり、牧師の極端過ぎる善悪の選択についての説教が怖すぎたり、文化的に面白い部分も多い。人類が初めて月に降りたった頃。世界は希望に溢れているはずだったのに。去った者達、残った者達、失われた者達へという監督の想いは強く作品から感じた。
とにかくバデイ少年の表情が生き生きとして素晴らしい。おじいちゃんもおばあちゃんもまるで哲学者ように必要なものを与えてくれて、美人で強いママとパパ。ノスタルジーではなく、大切な故郷へのリスペクトとして、大切なものを受け取った感じがした。
大きな物語と小さな物語
子どもも大人も老人も、垣根のない世界観
ケネス・ブラナー監督の幼年期を抒情的に描きながらも改めて人間そのものを考えさせる秀作であった。北アイルランド紛争が背景。モノクロ映像がひたすらに美しい。人々の喜怒哀楽もカラー作品よりもはっきり読み取れるから不思議だ。この時代の人々は世代間の関係性が近い。子どもも大人も老人もさしたるラインはなくみんな深く関わりあって生きている。監督は本作でそれを強調したかったのかもしれない。紛争による経済不況で生活は大変だ。しかし悲壮感はあまり表に出しすぎない。苦しいながらも彼らは映画やダンスで人生を楽しむことを忘れない。絶望の前にいつでも仲間がいる安心感というか心の基礎がある。思えばおれ自身のガキの頃の社会の雰囲気も現在とはだいぶ違い、このベルファストの雰囲気があった。昔を思いだして懐かしい想いに胸がつまった。
今日はアカデミー賞の発表があった。コーダの作品賞受賞には素直に嬉しかったが、おれの中ではパワー・オブ・ザ・ドックだった。作品賞受賞には政治的な思惑が入る。だから重要なのは作品賞にノミネートされることだと思っている。その意味でドライブ・マイカーは快挙中の快挙であった
「平和」は「当たり前」じゃない
平和な日常が、ある日「凶気」に変わる。
この映画は民族紛争だけど、戦争も同様なのだろうか?
ウクライナの戦争もそうだし、
昔見た「ホテルルワンダ」もある時から2つの民族が殺し合うようになった。
本作品の北アイルランド問題にしても、私の子供の頃は、爆弾テロ事件があったことを覚えている。
そして、ブレグジットの時も、アイルランド問題が再発するのでは?
と懸念された。
(結果、大丈夫だったのかな?)
そう考えると「平和」というのは、決して「当たり前」のモノではなく、微妙なバランスの上に「かろうじて」成り立っているのかもしれない。
日本人には当たり前に思えても…
あとは、予備知識として、歴史的背景を仕入れた上で見た方が良い作品かな。
van morrison と 両祖父母
1969年てどんな年だったのか
ベトナム戦争真っ只中のこの年、僕は数年前に移り住んだ基地の街にある団地のカギっ子でした。バディと違って僕は余所者で、アポロの月面着陸では学校中(?)が大騒ぎでした。バディと同じように家族で「チキチキバンバン」を観に行ってたので映像が出たときは心のなかで拍手してました。ゲーリー・クーパーの「真昼の決闘」は観なかったけど、ジャン・ポール・ベルモントの「勝手にしやがれ」をテレビで観たな。…自分の少年時代を思い出してました。この頃僕の家も含めてみんな貧乏だったし、街にはチンピラもいたけど、あんな暴動は"もちろん"なかったな。宗教って奴は!(…その高々25年前に日本も戦争してたんだっけね)。洋画を観てると必ず宗教が絡んでくる。欧米では深い話にはキリスト教は必須ですね。ところでベトナム戦争って誰のための戦争だったのか。戦争で病んだ米兵がよく事件を起こしてたな。あれっ、もしかして欧米の人って戦うの好きじゃない?気のせいかな。
アイルランドをルーツに持つイギリス人ポール・マッカートニーが"give Ireland back to the Irish"「アイルランドをアイルランド人に返そう」(イギリスでは放送禁止らしいです)って歌ったのがこの数年後。アイルランド人はカトリックなんだよね。そして北アイルランドはイギリス。これはもめるわ。ああ複雑だぁ。
内容の面白さと温かい眼差し
政治的な背景や宗教的な背景が非常に強い作品ながらも、難しさを全く感じさせず、なおかつ複雑な人間ドラマや深い感情を存分にて堪能できる作品だったような気がします。
美しく静かに映し出される街並みは、20世紀の終わりまで争いなんて無かったような雰囲気─。しかし喧噪の中で沸き起こる暴力的な行動が、歴史的事実を呼び覚ます─。
映像的な演出は非常に分かりやすくて、しかも物事を丹念に捉えていて、音楽とか編集とかかなり凝った演出でありながらも、それら全てがごく自然な現実世界を表現しているように感じてしまうこのスゴさ。何度笑い何度泣かされたか忘れてしまうほどに、没頭させられました。
確かに、美化されていると感じるところは多々ありましたが、それをも受け入れてしまうくらいの説得力がありました。いいも悪いも、あの頃のいい思い出が感慨深い様相で華々しく世に放たれることは、すごくいいことだなーなんて思いながらの終幕でした。
この映画は今のウクライナとロシアの争いに似ていると思った
監督はアイルランド系なのか?
そこまで、言及されなければならない話だと思った。僕が記憶する限りでは、IRAと言うテロ(?)組織があった。今ではそれをテロ組織として簡易的に解釈するだろうが、北アイルランドの独立を願った組織であったと思われている。僕もそう思っていた。つまり、イングランドとアイルランドとに挟まれた北アイルランドの解釈の仕方がアイルランド系とイングランド系では、違うと思う。だから、単純にイギリス人としてくくる事は難しく、この監督がアイルランド系なのかイングランド系なのかで、違ってくる。ましてや、カソリックとプロテスタントの宗教感の違いだけでは済まされないと、僕は感じる。
兎も角、この映画は今のウクライナとロシアの争いと似ていると思った。争いは民族や宗教の違いで起こるのではなく、権力者と権力者によって生じ、その中であらゆる民が翻弄されると言う事だと思う。
これぞ映画🎥
襲われたのはカトリック教徒の家。彼らがなにか?ただ宗派が違うだけよ。仲良く暮らしていたわ。
まるで幻想の世界かと、時に見まごうモノクロの世界。険悪な大人たちのいさかいなど無縁のような美しい映像。その美しさは、過去の子供時代の記憶をたどっているからだろう。子供にとって、宗派の違い、という理由は理解しがたいもの。
心打たれるのは、この家族の愛の深さ。母の強い愛、父の献身、ばあちゃんの懐の深さ、じいちゃんのユーモアのセンスと格言のような諭し。そして、葬儀の後のパーティの雰囲気のよさ。それは故人を敬いうからこその皆のはしゃぎぶりに見える。そう、日本でだって、賑やかな精進落しはあるしそれでこそ故人は成仏できるというもの。「亡くなった悲しみよりも、出会えた幸せをかみしめて」とかそんな風なことを牧師さんは言った。たしか。それを確かめるかのような、夫婦のダンスはかっこよかったなあ。かっこよくて、なぜだか涙がこぼれた。
モノクロだけど、色が見えるような
よかった
モノクロでかったるくて退屈だったのだけど、暴動が起こってスーパーの略奪から、洗剤を返しに行って、敵に人質にされて父さんが石を投げて助けるところはすっごく面白い。引き込まれる。従妹なのかな、あの背の高い女の子は悪いことばっかり主人公にさせて困る。それにお母さんもなにもわざわざ暴動の真っ只中に洗剤を返しに行かなくてもいいのに。
それにしても家の前で車を燃やされるなど、暴動のメイン会場みたいな場所で暮らすのは危険すぎる。落ち着くまで離れた場所で暮らせないものだろうか。お金に苦労してそうだったから、そういうわけにもいかないのだろうか。お父さんは出稼ぎだし、なんとかした方がいい。
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