劇場公開日 2022年3月25日

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「愛と選択」ベルファスト TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0愛と選択

2022年3月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1920年にイギリスのアイルランド統治法によって北アイルランドがアイルランドから分離されて以来、多数派のプロテスタントと少数派のカトリックとの間で宗教対立が始まりました。そして1960年代にはさらに活発となり、IRA(アイルランド共和国軍)によるテロとそれに対するプロテスタント側の報復が度重なる事態が続いていました。
少年バディの目線で語られるこの映画は、アメリカから入ってくるテレビドラマや映画、演劇やコミック、玩具などに憧れや影響を受け、キラキラした未来を夢見る日常に、突如「宗教」という9歳の少年には理解し難いことを理由に、同じ民族で同じ言葉を話す「隣近所」の住民同士が「分断」をはじめ、ついには「殺し合い」を始めるという現実。とても残酷で悲しいことなのですが、けして悲惨な描き方はせず、両親や祖父母の愛に囲まれて育った少年の素直で前向きで賢明な生き方に、勇気と微笑み、そして愛を分けてもらえます。
ユーモアとおおらかさで「生き方」を教えてくれる祖父母、どんな状況でも「正しさ」を教えてくれる母、そして単身赴任続きで会える機会が少ない父は限られた時間できっちりと息子に付き合い、そして「愛」を説きます。勿論、祖父母、父母の夫婦仲も素敵で、とにかく愛がいっぱい。
状況の急激な変化、悪化に大きな「選択」を強いられる家族は、真面目に一生懸命に、正しさを追求しながら、子供たちの将来のために生きていきます。今観ればウクライナのことが頭をよぎり、ただでさえ素晴らしい映画に違いない本作品が、アカデミー賞の選考にどのような影響をもたらすか、来週の授賞式が非常に楽しみです。
ちなみに雪の舞う寒さの本日、先行公開のシャンテはサービスデイとは言え、平日午前中の回で8割強の客入り。やはり皆さん注目してますし、満足な様子がうかがえた気がします。

TWDera