ゴヤの名画と優しい泥棒のレビュー・感想・評価
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一方その頃ニューカッスルでは
同日にベルファストを見た。両方とも60年代の話で、衣服や生活感が似通っている。
ベルファストでは宗教をめぐり暴動が起き、少年と家族がイギリスに移住を余儀なくされていたころ、イギリスの田舎町に当時を賑わせた絵画泥棒がいた。
優しい気持ちにさせられる話なだけに、つい比べてしまって、北アイルランドの厳しさをより強く感じてしまう結果に。
確かにそんな高そうには見えない
ずっと観たかった映画がやっと来てくれた。
ほのぼのコメディかと思っていたら、カメラアングルや編集などは、往年のスパイ映画のよう。さすがジェームズ・ボンドを生んだ国。
国営もしくは公共放送の受信料の攻防は、日本だけに限らずなんだな。エンディングの解説で現在のイギリスでは高齢者の受信料は無料だそうだが、日本ではどうなんだろうか?
どこまで脚色されているかは置いといて、魅力的なキャラクターがたくさん。
普通、議員夫人は慎ましくあるべきというイメージだけど、この議員夫人は随分と革新的。パン工場の差別主義なジジイとは大違い、素敵なご婦人。
保守的でガミガミうるさい妻、しかしキッチンでダンスをする時は優しい笑顔。ヘレン・ミレンが色味のない服を着た地味な婆さんを演じる、なのにとっても魅力的。やっぱ良い女優さんだなぁ。
監督をはじめとするスタッフもキャストと安定感があるので、ユーモアも軽快で安心して観ていられる。
今年暫定1位のベルファストや、ボクと空と麦畑、日本で公開したか分からないけどHappy Go Luckyなど、多分イギリス映画が好きなんだな、と気づいた。
そういや週一で劇場に観に行ったキングスマンもイギリス映画だ。
若い人にも関心を持ってもらえれば
【鑑賞のきっかけ】
この作品は、公開前から気になっていたのです。
公式HPによると、1961年、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗難に遭い、その犯人とされたのは、60歳のタクシー運転手、ケンプトン・バントン。年金生活者を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。とあります。しかも、実話をベースにしているという。
そろそろ、劇場公開も終わりそうな時期になっていましたが、久々に劇場に足を運ぶこととしました。
【率直な感想】
<日本人にとって身近なテーマ>
劇場に足を運んでみると、年配の方ばかりで、若者の姿はありませんでした。
主人公の夫妻が高齢だからか?
でも、「受信料」で賄う公共放送という点で、BBCはNHKと類似しています。
この受信料を、受信設備があれば徴収するというシステムを巡っては、日本のNHKについても昔から議論があり、身近なテーマなのではないか、と感じています。
物語の始めの方で、主人公のケンプトン・バントンは、受信料不払いを理由に捜索に来た公的機関の職員に、「このテレビは、コイルを抜いているので、BBCは映らない」と説明するも、逮捕され、刑務所に入れられてしまいます。
これは、昔から日本でも、「うちは、テレビは確かにあるけど、NHKは観ていない。だから、受信料は払わない」と主張する方がいて、論法はよく似ていますね。
この受信料の問題に一石を投じた人物が、1960年代のイギリスに実在したという本作品を、私は興味を持って鑑賞しました。
因みに、日本のNHKに受信料免除はないのか確認すると、特別にセイフティーネットを必要とする方々の免除制度はあるようですが、「年金生活の高齢者」というだけでは、免除はないようですね…。
<中盤以降からは、法廷ミステリ>
冒頭、ケンプトン・バントンの裁判が開かれるシーンで、物語はスタート(予告編の冒頭もこのシーンです)。
すぐに、ゴヤの名画盗難事件の前に場面は遡り、ここから、先述の受信料不払いのエピソードなどを経て、中盤以降は、関係者が傍聴席で見守る中、ケンプトンが法廷で裁かれていく様が描かれていきます。
実は、この法廷シーンの直前に、ミステリ風の意外な事実が明かされ、ミステリ好きとしては、興味を持って鑑賞することが出来ました。
そして、最後は、「法廷ミステリ」の定番、陪審員の下す評決へ。
「有罪か?無罪か? Is he guilty or not guilty?」
この部分、人により評価は様々でしょうが、私は、さすが映画になるだけのことはあるな、と感心しました。
【全体評価】
この作品、全体的にコミカルな描き方をしていて、ケンプトン夫妻の会話は軽妙だし、法廷シーンでも、ケンプトンのユーモア溢れる証言に、裁判所が笑いに包まれたりする。
でも、夫妻には、ひとつ、大きなトラウマがあって、このトラウマへの取組み方の違いから、すれ違いが生じる、シリアスなシーンもあります。
このように、ユーモアとシリアスを絶妙のタイミングで描いていく物語展開は観る者を飽きさせないと思います。
本作品は、ロジャー・ミッシェル監督の最期の長編映画作品となりました。
こんな素晴しい作品を遺してくれた彼に、哀悼の念を捧げます。
もっと表現の幅を広げて欲しかった
主に主人公の目線で描かれているが、ラスト、テレビの受信料についてちゃんとした法律が作られたのは2000年とあった、出所以降、テレビの受信料問題はどのように解決されたのか、出所以降、主人公は額縁盗難の罪だけに問われたことをほんとに喜んでいたのだろうか、そこを描いてほしかった。裁判が1番盛り上がるというのはわかるが、もっと表現のしようがあったと思う
感動の嬉し涙
社会問題を扱いつつもテンポもよく、ほっこり。
ハットトリック‼
テレビが国の老人たちの孤独に寄り添えるものだと考える主人公が、国営放送を無料にするために声をあげるが相手にされず・・・。そこで、この主張を届かせるために思いもよらない作戦を決行し・・・といった物語。
変わり者のケンプトンはその性格故仕事が続かず、戯曲を書いてばかり。妻のドロシーは、そんな夫に愛想を尽かしながらも清掃業で家計を助けている。息子のジャッキーは意外にも(⁉)父親派。
そんななか、ゴヤの名画が14万ポンドでギャラリーに入れられたと聞き・・・。
随所にコメディ要素を取り入れながら、大きな社会的メッセージが込められた作品。
ケンプトンは確かに偏屈だが、根底にある想いは社会的弱者を助けたいと思う気持ち。彼に振り回されっぱなしのドロシーも、何だかんだ夫を想う気持ちはあり、仲良く踊って歌うシーンは微笑ましい。あんな夫婦に憧れますね・・・。
名画が盗まれ、世間はやれプロの犯行だ計算しつくされた組織的な云々だと言っている様はおかしくて笑いそうになった。割とあっさり盗られてますよ~(笑)
と思いつつ、いち市民のケンプトンの主張が届かないのと一緒で、名画が盗まれてもまさか市民の犯行とは思われず…こんな側面からも、政府は市民の存在が見えていないのだなぁと思わされたり、深みのある内容だった。
裁判のシーンも良いですね。変わり者だが、持ち前の性格で観衆を味方につけ、いよいよ最後には・・・。そして明かされる真実。シンプルなコメディ作品かと思ったが思いもよらない展開に驚き。
思いの外話の内容が難しい場面もあったが、ケンプトンの優しさ、人を想う気持ち、そしてそれをしっかり受け継ぐジャッキーやドロシーの支えに心がホカホカした作品だった。
国営放送ねぇ・・・。
うちと比べてどんなですかねぇ(笑)
本当?って程のノンフィクションな
ジム・ブロードベントとヘレン・ミレン、名優2人の燻銀の魅力が光る
ジム・ブロードベントとヘレン・ミレン主演の実話を元にしたコメディ、って時点で観たくなった
1960年代のイギリス。ダメダメだけど憎めない初老の主人公パントンと、生真面目でしっかり者の妻。
バントンは当時話題の名画を美術館から盗み、身代金を孤独な老人たちに役立てようと企むが、そこにはいくつもの壁と、優しい嘘があった…
ノッティングヒルの恋人の監督作だからか、貧しい老夫婦の暮らしがなんとなくおしゃれで、お湯を沸かす間に踊るダンスすら様になる
REDでも男前だったヘレンが、ごく庶民的な生真面目な主婦をいじらしく演じれば、アイリスで包容力に満ちた夫を好演したジムが、憎めないけどダメな男を好感度100%で演じる
その絶妙のバランスが素晴らしい
全体的には、前半が少しもたついた印象だけど、後半の引きがすごい
優しい嘘を含んだ裁判所のシーンは必見
個人的に☆5中3
史実として面白い
泥棒のどこに優しさを見いだすのかはきっと人それぞれ
日本でも展示されたことがあるゴヤの作品『ウェリントン公爵(The Duke of Wellington)』(1812-14)の盗難事件を基にしたストーリー
この絵画に描かれているのは1815年のワーテルローの戦いで、かのナポレオンを打ち負かしたイギリスの英雄アーサー・ウェルズリー。
そんな英雄の絵画が盗まれたとなれば、イギリス中で話題になるのもうなずける。
年金暮らしのケンプトンは、ゴヤの絵画泥棒となり、多くの高齢者のために絵画の身代金を要求し、公共放送の受信料に充てようと企てる。
映画の原題は『The Duke(公爵)』だけど、今回は邦題の方が好きかな。
泥棒の優しさはいくつかあって、その1つ1つがケンプトンさんの魅力になっている。
ケンプトンと長年を共にする妻役にはヘレン・ミレン。この2人の心の在り方の描かれ方もこの映画を観て良かったなぁと思うところ。
本当に大切なことを語らない美学
夫婦の間にあるすれ違いや葛藤が、画面の絵からにじみ出てくる演出が心地よかった。主人公ののキャラクターやセリフ劇で楽しませる工夫を忘れずに、でも大切なことはセリフでは語らせない。上品な映画でした。
個人的には、主人公家族のアパートメントのある交差点から、遠くの工場の煙突が見える画面がとても印象的でした。工業化が進む町と、取り残されていく老人が対比的に描かれているように感じました。劇中にある、「この絵にそれだけの金額を払うくらいなら、福祉に回せ」というメッセージが一目で表された構図ではないでしょうか。
「あなたは私であり、私はあなたである。」現代社会に語られるべき言葉だと思います。
次男のキャラクターがあまり深く描かれず、長男の掘り下げももう少し欲しかったなと思ったので、-1.0させていただきました。
『ハットトリック!』
I will not cease from Mental Fight.
イングランドですよ。法廷でエルサレムが来ましたもん。「権威・権力に屈せず精神の自由を維持し闘い続ける」と言う、勇ましいイングランド魂を歌詞にした讃美歌。邦題には「優しい」なんて情緒に訴える単語が使われてたりしますが、これは「闘いの物語り」だったりします。エルサレムは英国労働党の歌であり、古くは婦人参政権を求める運動で使われた歴史もある歌。原題「The Duke」には、ケンプトン・バントン氏の闘いへのリスペクトが込められていると思う訳で。
まあ、この人は色んなもんと闘っています。黙っていられないタチの方の様ですが、おおむねは孤独の闘いだし、負け続き。妻のドロシーから見れば、ただの自己満足。まずは家族を守りなさいよ、と言う本音も真正面からぶちかまします。
政治と戯曲。とは言いながら、社会への不満と収入の無い作家の世迷言。まぁ、現在の日本にもおられます。令和の日本の方々の場合はですね、そのピントのずれ具合、と言うか、あらゆるものを曲解している姿にウンザリすることがほとんどです。その感覚でバントン氏を見てしまうと、やっぱりイタイ。闘い方も子供っぽい。終いにゃ、テロに走りそうでヤバいし。時代も時代だけに。奥方のドロシーには同情しかないです。
これがですよ。
「娘を守れなかったと後悔する男が、息子を守るために闘う」と言う流れだと判明してからは、バントン氏支持にSWが切り替わります。ラスト30分は、最高に好き。
陪審員の「Guilty」の宣言に、法廷は落胆のため息とブーイングに包まれます。そこからの「Not Guilty」の三連発は、バントン氏への共感が、いかに広がっていたのか。政府への不満が、どれだけ深かったのかを思い知らせてくれます。女性廷吏なんて、笑顔ですもん。ガッツポーズしそうな勢いの笑顔ですもんw
だって、Not Guiltyな訳ないじゃないですか。確定的真犯人でしょうがw
つまりは。陪審員達は社会正義を「Guilty」とすることを拒んだ訳ですよ。その捩れ具合はエクセレントだす!
良かった。とっても。
ちょっと途中までが心配な展開だったけどw
タンスの中の公爵
実際にあった名画盗難事件をコミカルに描いたドラマで、60年代のイギリスの時代感がよく出ていて楽しかったです。前半は主人公の暴走老人振りを中心にまったりと進むけど、名画を盗んでおいて、隠し場所がタンスにゴンならぬタンスにゴヤと言うのが笑えます。また、後半の裁判所シーンになってから、彼の愛嬌のあるキャラが生きてきて、ぐっと面白くなります。建前はともかく、彼が求めていたのは弱者救済と言うよりも、若くして亡くなった娘への贖罪感、喪失感によるもののように思え、しんみりとする面もあり、いいドラマです。それにしても、邦題のセンスは何とかならないのかな?役者ではジム・ブロードベントの飄々とした芸達者振りもさることながら、いつもは華やかな印象のヘレン・ミレンの地味な老女ぶりには驚きました。でも、旦那とキッチンで踊るシーンは、なんかかわいかったです。
思いのほか軽快で淡々。
地味な作品です。義勇的な動機の犯罪を犯した男性と家族のお話ですが、感動を前面に出すような作品かなぁ?と推測していましたが全く違っていました。ベタつきなく、カラっと描く軽快な味付けの作品でした。が故に、スルッと見終わっちゃいました。
裁判のシーンは楽しめたのですが、盛り上がりに欠けていてそれ以外は正直「むーん」って感じだったかなぁ。頑固な高齢者の思い出話止まりだったかなぁ。本当に単案としているんですよね。主人公の男性に気持ちが入らなかったからかなぁ。なんか、奥さんに苦労ばかりさせている、偏屈爺さんにしか見えなかったんです。好き勝手なことをやって、家族を(特に奥様)を振り回しすぎじゃない?って。もうちょっとはっきりした味付けが欲しかったかな。・・・良いお話なんですけどね。そんなに心があったかくもならなかったしね。
全133件中、41~60件目を表示