やがて海へと届くのレビュー・感想・評価
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俯瞰の愛に包まれる
なんでもないときに、ふと、ずっと会っていない友達のことを思い出す瞬間がありますよね?
何かを見たり聞いたりして思い出したのではなくて、自分でもなぜこのタイミングで思い出したのかわからないけれど、フッとイメージが現れたとしか言いようのない瞬間。
そんな不思議な瞬間、実は相手も自分の事を思い出しているんですって。
遠く離れていても、オンサのように共鳴し合っているってことですかね?お互いに響き合っているのだとしたら素敵ですよね。
私もあなたのことを思い出しているよ。
では、もっとずっとずっと遠く離れてしまって二度と会えない人とも響きあえる?
私が思っている時、あの人も私のことを思ってくれているの?
ものすごい俯瞰で捉えたところに、その答えがありました。
どちらの目線だか分からなくなる瞬間があります。
もしかしたら一人の人物だったのかも?と思える程。
自分が見ているようで実は見られているような感覚だったり。
不自然に感じる違和感は全てテーマに繋がってますので、あちらこちらに散りばめられた違和感を安心して拾っていってください。笑
しんのすけさんのトークは『はじまりのうた』の上映会以来でしたが、映画愛にあふれる監督への質問のお陰で作品への理解が深まり、「あぁ。あの違和感は感じて良かった違和感だったのだ。」と思えました。
左手の握手って、確か別れの握手ですよね?その事についても聞いてほしかったです。
『愛がなんだ』に続き視点人物となる主人公に共感性抜群な岸井ゆきのをキャスティングした時点で勝ってる
完璧にホの字、恋してる目で憧れ思い慕う。今回も見事なラウンドキャラクターっぷりで、誰かに恋い焦がれるキャラクターしたら一番じゃないかと思うほど等身大な魅力が、本作を真直ぐな恋愛映画にしていた。
作品前半・周囲の大学生ノリの軽薄な気持ち悪さが分かりやすく伝わってきた分、そこからの主人公2人のパートと会話が時に文学的な堅苦しい気がして、少し鼻についてしまっていた。だけど、車の中ですみれの彼氏・遠野が主人公・真奈に「小谷の中で止まってるんじゃないか」という旨のセリフを言って、真奈が車を降りて歩いているときの逆向き・対向車線から車が二台走り去る象徴的なシーンから、自分の中で一気に惹き込まれた感じがあった。そこからの(流れ的には自然だけど)衝撃展開含む一連のシーンの流れで主人公の気持ちが痛いほど伝わってくるようだった。
まるで海の底みたいな安らぎで僕たちを包んでくれる作品だった --- 行方不明になった友人と探す(?)というような導入部から、本作もいい意味でのミスリード。周囲が亡くなったことにして忘れようとしても自分はいつ(ま)でも彼女がある日突然ふらっと帰ってきたときに揺るがず迎えられる存在でありたいという気持ち。手の届きそうで届かない距離とこみ上げてくる切なさやふとしたときにやってくる哀しみ。一貫した監督の題材。
一方で謎めいた親友役は浜辺美波。主戦場がインディー(あるいはメジャーのサブ)とメジャーの二人が同じ世界で生きて、時を過ごす。私達は人間の片面しか知らない。普通の子じゃなかった…?そして、ネタバラシパート(?)を見たときもう片方の面が見えてくる。例えば『ノマドランド』などのクロエ・ジャオ監督のようにフィクションの中にリアリティというよりリアル現実そのものなドキュメンタリー性を持ち込む語り口。10年以上が経つ中、震災という題材を扱う上での真摯さ。なるほどタイトルの意味にも自分なりに向き合い咀嚼する。深い深い、海よりもまだ深く。
作中、大学キャンパス内での回りトラックや互いの服を着るなど様々な部分で差異を伴う反復が見られるが、特に印象に残ったが作中前半と後半で同じ構図のショットを繰り返すことで終わりが近いことを示唆するようなときの真上からのドローン空撮からの水平線ショット。朝日・朝焼けというのが分かりやすくもいい例えだなと沁み入った。冒頭につながる、帰結していく。生命(せいめい)は廻り巡る。…夢を見てた。
あの日のカメラや窓枠、あなたとの思い出 --- 忘れるんじゃないよ。思いを馳せてはいつか笑顔で見送れるように。"大切な人を失った哀しみからそれでも私/僕たち = 残された人々は前を向いて生きていく"みたいな、傷ついた人達がまた一歩踏み出すまでの再生を描いたドラマは多く、例えば『ドライブ・マイ・カー』なんかもそうだと思う。だけど本作はそうした普遍的題材に時代性も含め新鮮な視点を持ち込んでくれたのではと思った。
劇中、アニメの部分があるけど、実写においても写真・静止画のような画作りな気がした。人物を中心に据えたり、二人をバランスよく配置したり。
P.S. 生きてるとたまに思うのだけど、よくよく考えると"哀しむ(悼む)"って難しいよな。ずっと生きてると髪切りに行ったり、服買いに行ったり、はたまた自分の好きなことしたり、笑ったりしたりすることもあるわけで、それって正しく哀しんでないことになるのかな?四六時中考えてることだけが正解じゃないよな、きっと。むしろ去りし者からしても、大切な人がずっとそうやってるのを見るのは本意じゃないだろうし。…って生きてる人のエゴなんだろうか?なんて色々な考えが水玉・泡みたいに浮かんでは消え、また浮かぶように本作を見ていた。ちょっとしまうだけ、いつかまた取り出すために。あと、杉野遥亮はスーツのイメージ。
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