「薄味」ラーゲリより愛を込めて LSさんの映画レビュー(感想・評価)
薄味
実話を基に、シベリア抑留日本兵たちの収容所生活と家族との繋がりを描く。主人公の前向きな態度が周りに生きる希望を与えるが、本人は病に倒れる。仲間が密かに記憶し持ち帰った遺書を家族に伝えるシーンは泣ける。戦争を語り継ぐ意義もあるだろう。
一方、過酷で理不尽な抑留生活を描きながら、人物描写が総じて薄味と感じた。特に主人公の、楽観主義や広い視野、生への渇望、病気への無念といったものは描かれるが、その根底にある彼の行動原理が伝わってこない。
(話が終戦後のため戦争そのものの描写はほぼないが、それでも)他の登場人物に多少とも垣間見える、トラウマティックなエピソードから来る憎しみ、痛み、絶望などの感情の表出があまりない(特務機関での上官(ヤスケン)が偽証して自分を売ったと知ってもそれほど葛藤なく受け入れてしまう)。淡々としすぎていて感情移入しづらい。
原作(未読)ありなので人物設定にも縛りがあるのかもしれないが、フィクションでなく実際の戦争の歴史を扱っているのだから、もう少し掘り下げて何があったのかが語られるとよかった。
コメントありがとうございます。
「ペルシャン・レッスン」を観て、たまたま収容所映画が連続しました。強制労働やバラック内の描写など、あちらが本物らしく感じました(あくまで私が思う「らしく」ですが)。一方で、「トゥルーノース」(これも収容所映画ですね)でリアル過ぎると観客が受け入れられなくなる旨を監督が語っているように、伝えたいことに応じて、拒否感を抱かれないリアリティのレベルを設定しているのでしょう。実際、興行成績も悪くないようですし、広く観に来てもらえているのはよいことだと思います。
他作へのイイねありがとうございました。本作、人間の汗臭さ泥臭さ強制労働の極寒の地獄、全て薄味でした。なんか丸太🪵が軽そうでした。【実際軽いのですけれども】