LAMB ラムのレビュー・感想・評価
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見る人の解釈に委ねられます。
手短に言うと北欧クダン奇譚(頭と体逆ですが)
基本セリフ少なめ説明ホボナシ。人気のない山中てか高原?でひっそり山羊だか羊だか飼って生活してる夫婦の飼ってる羊から羊頭の化生が生まれる。それを我が子の様に育てて、、と話だけ聞くと牧歌的なファンタジーみたいですが、全編通して不穏な空気が漂う中衝撃のラストへ、、。
嫌いじゃないです。多分色々考察されるんだろーなと思いつつ気が向いたら他人の考察見てから二週目もありかなと。
納得の種明かし
ああいう子が生まれたからには、そういう原因だったという、納得の種明かしだった。
人と羊の間の子(獣人)が、アイスランドの大地に隠れ棲んでいて、そこにもきっと悲しい、恐ろしいドラマがあったと推測させるのだが、映画の冒頭で当然の事ながら牛には目もくれず、羊のメスに孕ませた子を、夫妻は神から与えられた子だと勘違いして、亡くした娘の代わりに育ててしまう。
キリスト教徒の白人は、神から自分達に与えられた土地だと解釈すると、新大陸でインディアンや、西海岸に先にたどり着いていた中国人も殺してしまった。
マリアが本物の母親である羊を射殺してしまうのも、神から自分達夫婦に与えられた子だという、キリスト教徒の西洋人特有の身勝手さを感じさせる。母親殺しの因果応報が描かれるラストを思うと、その所業を目撃していたのは、義弟だけではなかったのだろう。
最初は不気味だったアダが可愛く見えて来るのが見事で、それで義弟が射殺を止めてしまうのも理解出来た。
フラストレーション
が貯まる作品ですね。来るぞ来るぞって思ってたら、音楽だけで大きな事は起こらず、誰かが何か行動しても、何をしたかったのか不明なまま次に行くし…。最後に彼が出てきたのは、合点が行く事ではありましたが。
ワタシは一体何をみたのでしょうか? メリーさんの羊?メリノウール?...
ワタシは一体何をみたのでしょうか?
メリーさんの羊?メリノウール??
ハンサムなボーダーコリー。マッチョな猫。
リアルな羊の出産シーン。
耳標ばちーん!
女優さんすごい。
次々繰り出される映像から目が離せない。
赤ちゃんのアダは本物の羊?ミルクちゅぱちゅぱ可愛い。
途中から被り物。
娘を失った夫婦の妄想にも思えたが、夫の弟君が「あれは何だ?」と言ってるので
現実に「アダ」はそういう存在なのだろう。
最後のアレは何?
あまりに自然すぎて怖い。
父親がハーフとして母が羊だからアダは羊割合が高そうだ。
アイスランドが舞台だけど
ゆでガエルという例えがある。
熱いお湯だとカエルは、飛び出してしまうが
程よいお湯だとそのままで、結局、最後にはゆだってしまう。この映画を見てこの例えを思い出した。
アダ。どう見ても人間の子供と同じように扱うのはおかしい。しかし、この夫婦は幸福だという。羊の頭と人間の身体。それをペートウルがおかしいというと、否定にかかる夫婦。幼くしてなくなった娘の名前をつける。
たしかに、幸福そうに見える。見えるけれど、やはり異常なのは疑いはない事実で、結局、その異常さの大元が炸裂し悲劇的なシーンで終わる。
アイスランドという、自然の中に国があるようなそれも、僻地にある場所が舞台だが、どこかわれわれの社会にも、同じような本当は異常なんだけど、とりあえず、なんとか生きてるし、幸福と思い込んでるところがあるんじやないか?ゆでかえるで、ゆだる前に目覚めよと言ったメッセージをこめた映画という捉え方もありかな、と思った。
アダちゃんの祖父母って…???
「気持ち悪りぃ〜」アダちゃん本来の姿が映し出された瞬間近席の男性が声を出した…
「あら、可愛いじゃない」かたや笑みがこぼれちゃったわたくし…
こんな風に評価も受け取り方も観手により
かなり割れるんだろうなぁ
始終、アイスランドの広大で凛とした風景と野生の動物達の様に穏やかに物語は進む為か言われる程の衝撃度はあまり感じませんでした…
この夫婦の歪んだ絆と心の闇…マリアがしでかした事は人間のエゴそのモノ
…羊パパの報復は無理もない
人パパ&ママとの時間はアダちゃんにとっても幸せな瞬間であった事は間違いないのだろうが
羊パパに手を引かれ歩くアダちゃんが何故か1番愛らしくしっくり見えた
その後ろ姿を見てなぜだか安堵感も…
ホラーが苦手な方にこそ観ていただきたいシュールな大人の為のちょっぴり楽しきダークファンタジーでした
仕返しされた?
かつてここまで羊が登場する映画があっただろうか。。。
アイスランドの雄大な景色に目を奪われます。
飼っている犬が殺された時、側にいたアダの目にうっすら羊人間が写ったように見えました。
なぜここでアダを連れ去らなかったのか?
母親を撃たれたから、仕返ししてから奪ったってこと?
美しい自然や動物。半獣。そして人間。こころはどこへ向かう。
白銀の地に野生の馬の黒い群れ。
突然たじろぎ行き先を変える。
なにが?なにかがいる。。。
そしてまた
夜中の羊小屋に近づく音。
何かを感じざわめきたつ羊たち。
その澄んだ目が尋常ではない事への動揺をあらわす。
その後
よこたわる一頭の羊。
なにが?なにかがきたんだ。。。
見えなかった恐怖。
不穏で奇妙な空気を引きずりながら
スクリーン前の観客の時も過ぎる。
ここはアイスランド。
稜線の流れ、丘の起伏、雲の厚みや形、空の色あい、草の匂い、水や風の音、白夜に渡る気配、雪あかりに光る氷の粒…
息をのむほどの美しい大自然にぐるりと囲まれぽつんと暮らす羊飼いの夫妻。
一日の流れを淡々とこなす二人にはどうやら子を亡くした過去があるようだ。
しずかな食事中の何気ない会話。
夫はどこか諦め腹をくくった感があり現在を幸せと語るが、妻は何か消化できないような過去へのこだわりを隠せていない。
そんなふたりの日常が変わる。
ラジオからクリスマスを祝うメッセージが流れる夜だ。
いつものように、仔羊をとりあげた夫妻はその異形に沈黙の衝撃を受ける。
神からの授かり物と信じたのだろう、躊躇なく亡くした娘に因みアダと名づけ育てはじめたのだ。
我が子のようにやさしく抱き子守り唄であやす妻を部屋の前でみかける夫のシーンがある。
妻の迷いなき母性の復活と不安で気後れもあった夫の温度差を示しながらも、これが二人の間にあった風穴を塞ぐきっかけになるだろうと自分に安堵を言い聞かせていたように捉えられる大事なところではないかと思う。
この、夫の開き直りにより、アダへの情は増し、気持ちの足並みが揃ってきた夫妻。
突然、トラブルを起こし実家に戻ってきた弟に対して臆することなくアダを紹介してみせる姿だ。
前日たまたま見かけた兄嫁による母羊の銃殺をただごとではないと感じていた弟は当たり前に反感と不安を抱き訴えるが、兄はそれを幸せの邪魔と捉えるところまでの没頭ぶり。
再び子を得て幸せそうな妻の様子をみるのが彼の何よりの安心だったのだろう。
兄嫁にちょっかいをかける弟は母羊の件を引き合いにだしたが、妻はさっさと金銭を渡し家から追い払う。
もうアダと夫との幸せ以外はなにもいらない強さに満ちている。
思考の中心に他を寄せ付けなくなった末路は…
殺される夫
つれもどされる仔羊
たったひとりになる妻
あの美しく雄大な大地は
奪われた子を探し呼び続け殺された母羊のかなしみに震えたか
夫を撃ちぬくほど恨み仔羊を取返しにきた実父の思いを理解したか
はたまた
癒されていなかった空虚を
理性を超えて埋めることに夢中になってしまった夫妻の顛末を憐れんだか
私としては
いちばんわからないままに手をひかれて行く仔羊アダの平穏な幸せを祈りたいところだが…
人間の作り出した銃を
自然界から来たあの彼は、おそらくはじめて使い
思いを通す経験をしてしまった。
妻のあの叫び。
きっと我が子アダを探しに出かける。
転結はここからだ。
不気味でシュール
普段洋画は見ないのですが予告を見て気になったので鑑賞しました。
最初から世界に発信することを前提としているのか、特に序盤はほとんどセリフなく、それがまた不気味さを強調している印象。
羊人間と食卓を囲んでいるシーンはシュール。でもちょっとだけ可愛い。
羊人間が誕生した理由など伏線を回収されることは一切なく後は個々で想像してくださいと言ったところでしょうか。
まんがISLAND昔噺し
面白いと言ったらかなりビミョウで淡白な筋立であり、伏線もミスリードに繋がる事が多々あるのだが、もしかしたら今作品は続きモノなのかもしれない と思わせるラストである。何せオチとすればもう一回ひっくり返っても良い筈だし、その決意としての母親の嘆きのワンショットの演出だと思うのだが・・・
日本の童話でどれが近いプロットなのだろうと思ったら”かぐや姫”なんじゃないかなぁと、しかしこのプロット自体、多分世界中にある話なのだと思う。奇しくも子供を亡くしてしまった親の映画作品が続いてしまい、”母性”という強烈な力をまざまざとみせつけられ、戦慄すら覚える昨今である。
只、今作品では子供?の視点も又重要であり、自我が芽生えてくる頃に親との容姿の違いを認識し、だからこそ初めは叔父になつき(自分が生きてる場所とは違う異世界から来た)、そして、ハッキリとその容姿も似た父親らしい怪物に付いていく姿は痛々しい程、しっかり大人なのである。
夫を殺され、子供?を奪われた母親は、どう落とし前をつけるのか、追い出した義理弟をもう一度呼び出し復讐の捜索を完遂するのか、いやいや、今作品のテーマではないのだろうね。あくまで寓話なのだから…
時間の感覚が無くなる陶酔的体験
アイスランドののどかなはずの田舎は微妙な緊張感を孕んで、弦楽四重奏の重層的音楽と相まって不穏な空気だ
最後に流れるパッサカリア(多分、シャコンヌかもしれない。聞いたことがあるがこれとはっきり言えない)がこの寓話的なホラー(と思います)を締めくくるにはぴったりだと思いました。予測のつかない体験的空間。無音と有音、自然音と羊の鳴き声、白夜のせいで時間の感覚が失われ、長くもあり短くもあるような(実際は105分程度のやや長めの映画)不思議な感覚を感じましたね。どこか異世界の雰囲気を纏いつつ二重の不幸をこの夫婦に負わせる意味とは何かと翌日になっても少し重い気持ちを引きずりましたね。
ここからは映画の内容に踏み込みます。
冒頭のホワイトアウト。ズームするまで何があるのかさえ分からないほどの息詰まる空気感。本当ここは息ができないほどの緊迫感だ。三章仕立ての第1章ではセリフはほとんどなく、羊が鳴くのみである。しかし、主人公の羊牧場(羊飼いだと誤解を招く)を経営する夫婦(イングヴァルとマリア)にそこはかとなく漂う緊張感が胸苦しい。ここでは諦観に満ちた生活を丁寧に描く。この辺り、日本人俳優の不自然な自然体演技とは一線を画す。第1章の最後に生まれてきた羊の子がターニングポイントとなる。
なぜか、夫婦は子羊を母親羊から離し自宅に連れて行ってしまう。ミルクを飲ませベッドに寝かせ、抱き上げてはまるで子供のように扱う。この辺りで「手足のない仔羊が生まれたのかな」と思ったよ。アダと名付けられた仔羊はある日母親羊にさらわれてしまった・・・。あの程度の四つ足の獣がさらうのは変な話なので、後で出てくる「あいつ」がそうしたのか?
無事取り戻したが、この時、アダの秘密がようやく(映画の半分くらい)明らかになる。正直、気持ち悪い。しかし、どうやらこの夫婦にはアダという一人娘がいてなんらかの理由で失ってしまったようだ。(墓や父親の描写で明らかになる)。
ここからは未見で、今後見る予定の人は読まないほうがいいと思います。
平穏な暮らしに闖入者あらわる。
パンク風のおっさんが現れ、夫婦の家に忍び込んでくる。
観客はみんなハラハラしたことだろう。こいつ誰やねん。
辺鄙な田舎だから誰にも見つからないと思っていたら、異常な存在であるアダは誰にも知られてはならないはずだからだ。
しかも、こいつはマリアが母親羊を撃ち殺すところを目撃してしまう。(この時点ではアダの母親だとは気づいていなかったと思うけど)
家族として迎えられたが、当然アダと夫婦には不審の目を向ける。実際、アダを撃ち殺そうとするしね。
夫婦の愛情は本物だったし、人間のアダを失った悲しみを知っているからこそ受け入れるところはよかった。アダと共にソファに寝ているところなど打ち解けてほっこりした。
第3章
万事うまくいくかと思われたある日、アダを連れておっさん(実は旦那の弟)が湖に漁に行く。その後ろ姿を見ながら幸せそうに愛を交わす夫婦。帰ってきてからも食事やスポーツ観戦(アイスランドではハンドボールが盛んなんだね)をして楽しく過ごすが、寝てしまったアダと夫を横目に、クズ弟はマリアに不貞を迫る。怒ったマリアは追い出すことを決意し、バス停まで送り届ける。
その頃、不審な死を遂げる犬。??????????
目を覚ましたアダとインクヴァルは朝ごはんを食べて、故障したトラクターを治しに行こうと連れ立って家を出る。いつもだとすぐに飛んでくる犬はいない。マリアが帰ると誰もいない。探し回るマリア。響く銃声!
首を血まみれにして苦しむインクヴァル。それを悲しそうに見つめるアダ、その傍には・・・。
そもそも、半人半獣の生物が産まれた時点でファンタジーではあるのだけれど、寓話としては意味するところがわからない。この夫婦が何をしたというのか。なぜ殺されなければならないのか。アダを連れ去るあいつは誰なのか。これでは全くの暴力ではないかと不条理さに打ちのめされる。最後の曇天を背景に悲しみに打ち勝つように立つマリア。全てを失った彼女はこれからどうするのか?などと考えながら長いワンショットでエンディングを迎えた。謎だ。
自然の摂理を壊すことの報復
物語は3編で構成される。
1:不可解な何者かによってクリスマスに身籠る羊と厩舎で生まれたのは人間と羊のハイブリッド。
奇跡の子供を自分たちの子供として育てる事にする。子供を返せと泣き叫ぶ母羊に毎晩うなされ、マリアは母羊を撃ち殺す。
バンドメンバーに路上に放り出される弟がその様子をたまたま見かける。
2:弟が一緒になる。羊人間に戸惑いながら一度は殺そうとするものの、結果馴染む。詩を教えながら釣りにも行く。
3:誘惑する弟を追放し安堵を手に入れたと思いきや、親羊人間が現れ夫が撃ち殺され、羊人間は親に連れて帰られる。マリアは撃たれた夫を観て放心状態になる。
○宗教的な解釈
クリスマスに生まれたこと(言わずもがなイエスキリスト)や、羊という動物を選んだことはキリスト教としての側面として取れる。
さらにはアイスランドという北欧の土地は、元々北欧神話が根付き、バイキングが盛んだったエリアである事は言わずもがな。土着化していた北欧に、キリスト教化するための拷問や殺戮があった過去がある。
すでに存在する宗教から無理やりキリスト教を捩じ込む事により結果として多くの血を流す結果となった。
○自然環境としての解釈
ギリシャ神話にサテュロスという半身半獣の精霊がいる。自然の豊穣の化身、欲情の塊と称され、葡萄と蔦で作った花輪を頭に裸の姿で描かれる。
弟の叩くドラムやシンセミュージックで踊るアダが描かれ、花冠を被り、セックスシーンが挿入されている事からサテュロスである事は間違いなさそう。
自然の摂理を壊す行為はこれまで人類は度々繰り返してきた。木材や土地を確保するために山を切り崩し結果干ばつや土砂滑りが起きたり、水族館のイルカショーの為にイルカを狩り、群れを皆殺しにする。またはフロンガスの大量使用により温暖化に拍車がかかり水面が上昇するなど挙げればキリがない。
○科学のタブーによる解釈
冒頭タイムマシンの話題がある。どうやら実現に向けて本格化するらしい。時間を捻じ曲げて人間の思う様にする事は破滅をもたらす事はターミネーターで良く知っている。また現実世界でも過去羊のクローンに成功している。全く同じ遺伝子構造の羊を実際に生み出してしまっているのだ。これも破滅をもたらす事は言わずもがな。
様々な解釈が出来るが、結果として言わんとしている事は人間が私利私欲によって摂理を脅かす行為は結果的に破壊をもたらす事に繋がる。
それは聖書で言うならばノアの方舟であり、バベルであり、十の災いである。
奇跡として産まれたハイブリッド羊人間を自分のものとし、母羊を殺し、自分達の暮らしを強要する行為は夫が殺されるという最大の悲劇をもたらした。
不条理だけど考えさせられるのは悪くない
すごく演出が上手く、映像も綺麗でなかなかな監督だと感じました。意味ありげな冒頭のシーン。弟登場で一気に緊張が走る流れ。いい脚本家と組んだら傑作が生まれるかも!
キリスト教と繋がりを考えましたが繋がる部分と繋がらない部分があり消化不良です。単なる寓話と考えるのも浅いような気がしてます。時間旅行の話、弟の存在、母羊だけ羊小屋から出て来れるのなんで?アイツがアダが生まれてから何をやっていたのか?なんでそれなりの(銃を盗み撃つくらいの)知性があるのか?よくわからない事だらけです。
でも、あんな子が生まれたら誰でも普通の羊と同様に羊小屋で育てないと思います。
それと弟は観客、第三者視点での配置なのかもしれませんね。クズだけど1番ナチュラルな感情を持つ存在だったのかも。
アダちゃんのグッズ欲しい
いかにもA24が欲しがりそうな作品だ。過去にも複数あった評価がきっぱり別れる作品になるだろう。一応ホラーと名打たれる本作だが、分かりやすく怖いと思うシーンは一切なく、静かながら不気味な世界観となっている。いわゆる「雰囲気系」のホラーであり、ビクつきながら観るエンターテインメントとは違う感覚となる。だが、決してホラー初心者向きとはならない作品だろう。恐らく、トラウマにも似た感覚を覚えるか、人生の2時間を無駄にしたと思うかのどちらかになるに違いない。不気味な演出と広大なアイスランドの自然(住んでみたい)を芸術的な表現で描いている本作だが、上映開始から30分程はほとんど台詞が無く、ひたすら羊を育てる夫婦の日常が淡々と描かれている。続く静寂の中で夫が放った最初の台詞が、記事に書いてあったタイムリープの話。こちらは張り詰めた空気を感じていたのだが、その滑稽とも言える一言目に思わずガクッとずっこけそうになった。だが、この様な何気ない会話の中や演出の中でふと気になる物が挟まれる。そのシーンが何を意味しているのか、どう後半に生きてくるのか、理解する前に暗転していく。この様に細かいパーツを回収していくかのように淡々と日常が描かれていき、それらが張り裂けそうな不気味さで包み込まれ、非常に息の詰まる思いだった。冒頭に響く誰かの荒い息遣いから、今にも八つ裂きにされそうに思える羊たち。観客としては来るか来るかと身構えていると見逃しそうなシーンが複数存在する。個人的には映画は1人で楽しむべきと考えているが、本作は鑑賞後に答え合わせをしたくなる作品である。本作のジャンルを表すのにホラー以外の物が見つからないが、「怖くないのに怖い」や「何も無いのが怖い」と思ったのは本作が初めてである。テレビCMでは問題の子羊、"アダ"に服を着せ、二足歩行をする姿が写っている為、大抵の人が羊人間なのではと思うだろうが、本編ではその姿がなかなか写らず、しかもチラッとしか見せないという何とも意地悪な描き方を披露する。ネタバレしているものをこういう描き方をしたのも素晴らしい。映画においては説明不足というのは致命的な欠点だと思うが、その弱点を生かした構成には驚かさせる。そんな何かと初めてづくしだった本作だが、かなり実験的な作品にも思える。これは是非とも手元に置いておきたい作品だ。
【良かった点】 なんといっても画面いっぱいに広がる広大な自然描写。...
【良かった点】
なんといっても画面いっぱいに広がる広大な自然描写。ここは異世界?と思うほどの優雅で美しい背景をバックに、異形を愛する異常な夫婦、というだけで面白い。中盤旦那の弟が観客と同じ視点で話してくれるところはだいぶコメディ。説明をこれでもかと省略し、観客に想像させてくれる余地があるので観ながらあーでもないこーでもないと楽しめる作品。
【良くなかった点】
VFX技術がそこまで高いわけではなく、羊の娘の全貌が明らかになるところは人によってはノイズになるかも。また、全体的に静かに淡々とストーリーが展開するので、寝不足だと寝落ち必至か。
母性愛
フライヤーの画が、キリスト教の聖母子像をかたどっているようなので、たぶん宗教的ネタが入っているんじゃないかと思っていた。羊飼いとか子羊のワードは聖書に出てくるし、主人公の名はマリアだし、クリスマスの日から始まるし。でも、物語の中でどう関わりがあるか、具体的にはわからなかった。
母性愛がやはり根っこにあるのかな。アダを生んだ母羊は、子供を探してしつこく鳴く。その気持ちは子供を失ったマリアも理解できるはずなのに、アダを自分のものにしたいがため、母羊を追い払う。マリアの夫も傷ついており、マリアがアダによって幸福を感じるとともに、彼も満足感を得る。この夫婦は、なぜアダが生まれたのかも、先々のことも考えない。愛ゆえに狂ってきてるのかも。
夫の弟の来訪で、平穏な暮らしが終わるのかと思いきや、意外に楽しくやっていた。ただ、兄の妻だというのにちょっかい出すから、強制送還。ええっ、弟なんのために登場したの〜? ついでに、デンマークとのサッカーだかハンドボールだかの試合観戦シーンと、ミュージックビデオは必要だったのかな。
アイスランドのラグナル・ヨナソン作「閉じ込められた女」という小説で、冬の情景が描写される。アイスランド山間部の冬は、ほとんど吹雪で、数ヶ月家に閉じ込められる。ほんの数メートルでも、遭難しかねない。アイスランドでは殺人事件は滅多に起こらないが、行方不明者と自殺者は多い。事故、遭難はもちろん、殺したとしても人里離れたところに埋めてしまえば、そうそう見つからない。それくらい厳しい土地で生きるのは、なかなかしんどいだろうな。ほんのちょっとの油断でも、生命が脅かされる。アダ(人間の方)が、何故死んでしまったか、川を探すという言葉に鍵がありそう。
本当は不吉な存在のはずのアダだが、やはりかわいい。花冠をかぶったところや、ぴょんぴょん跳ねるところ、猫がぴったり寄り添ってゴロゴロ言ってるところなんて、きゅんとするわ。この映画、動物のショットが効いている。本当は意味なんてないはずなのに、意味ありげに撮る。騙されてしまう。
天からの贈り物だと思っていたが、実は地獄からだったんじゃないだろうか。受け取らなければ良かったのかも。
北欧スリラー
ボーダー、ハッチングときてこれも異形のものが出てくるけどそこに本質は無さそうな感じの作品。
とにかく情報が少なくて想像するしかない…
夫婦の間には娘がいた。
何かしらの理由で子供が作れない。
何か手術したから?流産?子供が亡くなった事でのショックでセックスレス?
とにかく時間を元に戻したいと思っている。
弟とは元々恋人関係にあった様に思う。
夫より前か後かはわからない。
母としての嫉妬からくるストレスで本当の母を殺してしまう。異形のモノと知らないふりで穏やかな家族生活が始まる。
そこへ弟登場。不穏な空気が流れ始める。
何かありそうな弟を追い出したタイミングでアレの父が戻ってくる。ワンちゃんと優しい旦那が…
弟が来たタイミングといなくなるタイミングで事が起きたのは何か引っかかる。
ただ単に因果応報な話じゃなさそうな気がするが、
これ以上はちょっと読み取れませんでした…
でも狂った母という部分ではハッチングと似てるなとも感じた。あとロケ地が美しかった。
家族とは?正義とは?
見なれない雄大な自然の中で、言葉少なに進むファンタジーはまるで海外の絵本のよう。だからこそ、マリアやイングヴァルの佇まいからはもちろん、羊や犬や猫の表情からも何かを読み取ろうと凝視してしまう。子を失った夫婦の過去を知り、アダの可愛さも手伝って、彼ら家族を歪ながらも幸せな形と捉えてしまう。
そして、明らかな違和感を平然と受け入れて進む展開に、観る側もどこかネジが外れてしまうのだろう。
(以下ネタバレという名の妄想)
「俺は羊と“ままごと"なんかしないぜ」なんて兄の妻に関係性を迫る弟のセリフや、何かを後悔するような素ぶりを見せる兄。アダを天からの贈り物だと濁すからこそ、その出自がミスリードされてしまう。セリフが少ないからこそ、その一挙手一投足から余計な思いを巡らせてしまう。
半人半獣。母が羊なら父は誰?
アダの手がイングヴァルからすり抜けていくシーンに「可愛そう」なんて思ってはいけない。実の父が拐われた娘を取り戻しに来たのだ。
人間じゃないから悪いやつ?
いや違う。母を殺し、羊にウールのセーターを着せ、美味しそうに食べる草を取り上げる、掴むのはいつもアダの左手。そんな自分勝手な夫婦から我が子を救ったヒーローだ。半獣界のジョン・マクレーンじゃないか。
自らの正義は、相手からすると意外と悪だったりするものだ。迷える子羊は、まるで悪魔のような見た目の父の大活躍で本来の家族のもとに帰った。妻の仇も同じ銃で討った。それだけの実にシンプルなお話が、人間のエゴと偏見によって理不尽で不条理なストーリーに変わり果てる。人って怖い。そしてその緻密な構成に拍手。
【”異形・・”子を亡くした若夫婦に突然訪れた束の間の”幸せ”と、自然が産み出した人智を越えた”畏怖すべきモノ”の所業を荒涼たるアイスランドの山間地を背景に描いたダーク・ファンタジー作品。】
ー 近年の”異形”映画と言えば”ボーダー 二つの世界”(スェーデン映画)を思い出すが、北欧は長き冬により、昔からファンタジー作品が多数作られてきたのは、御承知の通りである。
トーベ・ヤンソンによる”ムーミン”も、ムーミン・トロールという異形の生き物たちを描いた作品なのである。-
◆感想
・冒頭から、台詞は暫くない。
荒涼たる雪原の中、羊の世話をするイングヴァル(ヒルミル・スナイル・グズナソン)と、マリア(ノオミ・パラス:ある意味、異形・・。スイマセン・・。)夫婦には笑顔はない。そして、画面は灰色の自然を写し出すとともに、異様な不穏感が漲っている。
ー 二人の数少ない会話から、彼らの子が亡くなっている事が分かる。そして、後半はその娘アダの墓も映る。-
・クリスマスの晩、白い羊が倒れる。扉は開いている・・。
そして、一等の羊が、”異形”を産み落とす。
ー だが、イングヴァルの表情は和らぎ、”異形”にアダと亡くした娘の名を付け、可愛がる。-
・そこに戻ってきたイングヴァルの弟ペートゥルは、”アダ”を見て驚く。(そりゃ、そーだ)そして、彼は”アダ”を連れ荒野に出て、撃ち殺そうとするが・・。
ー 今作で残念なのは、ペートゥルの位置づけが良く分からない所である。マリアに言い寄ったり、彼を何のために映画に出演させたのだろう・・。-
・”アダ”を産み落とした羊は、毎日我が子がいる部屋の前に来て鳴き続けるが、マリアは容赦なくその羊の眉間を撃ち抜く・・。
<そして、故障したトラクターを修理しに行ったイングヴァルの前に現れた、自然の産み出した”畏怖すべきモノ”。
”それ”は、無慈悲に彼を撃ち殺し、”アダ”と共に山へ戻る。
今作は、自然界には人間の知らない異形が多数いるという事を暗喩する、ダーク・ファンタジー作品である。>
■隣席の若者が、”アダ”の姿にクスクス笑っていたのが、自然の産み出した”畏怖すべきモノ”が現れた途端に、静になった事を思い出します・・。
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