LAMB ラムのレビュー・感想・評価
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自然の摂理を壊すことの報復
物語は3編で構成される。
1:不可解な何者かによってクリスマスに身籠る羊と厩舎で生まれたのは人間と羊のハイブリッド。
奇跡の子供を自分たちの子供として育てる事にする。子供を返せと泣き叫ぶ母羊に毎晩うなされ、マリアは母羊を撃ち殺す。
バンドメンバーに路上に放り出される弟がその様子をたまたま見かける。
2:弟が一緒になる。羊人間に戸惑いながら一度は殺そうとするものの、結果馴染む。詩を教えながら釣りにも行く。
3:誘惑する弟を追放し安堵を手に入れたと思いきや、親羊人間が現れ夫が撃ち殺され、羊人間は親に連れて帰られる。マリアは撃たれた夫を観て放心状態になる。
○宗教的な解釈
クリスマスに生まれたこと(言わずもがなイエスキリスト)や、羊という動物を選んだことはキリスト教としての側面として取れる。
さらにはアイスランドという北欧の土地は、元々北欧神話が根付き、バイキングが盛んだったエリアである事は言わずもがな。土着化していた北欧に、キリスト教化するための拷問や殺戮があった過去がある。
すでに存在する宗教から無理やりキリスト教を捩じ込む事により結果として多くの血を流す結果となった。
○自然環境としての解釈
ギリシャ神話にサテュロスという半身半獣の精霊がいる。自然の豊穣の化身、欲情の塊と称され、葡萄と蔦で作った花輪を頭に裸の姿で描かれる。
弟の叩くドラムやシンセミュージックで踊るアダが描かれ、花冠を被り、セックスシーンが挿入されている事からサテュロスである事は間違いなさそう。
自然の摂理を壊す行為はこれまで人類は度々繰り返してきた。木材や土地を確保するために山を切り崩し結果干ばつや土砂滑りが起きたり、水族館のイルカショーの為にイルカを狩り、群れを皆殺しにする。またはフロンガスの大量使用により温暖化に拍車がかかり水面が上昇するなど挙げればキリがない。
○科学のタブーによる解釈
冒頭タイムマシンの話題がある。どうやら実現に向けて本格化するらしい。時間を捻じ曲げて人間の思う様にする事は破滅をもたらす事はターミネーターで良く知っている。また現実世界でも過去羊のクローンに成功している。全く同じ遺伝子構造の羊を実際に生み出してしまっているのだ。これも破滅をもたらす事は言わずもがな。
様々な解釈が出来るが、結果として言わんとしている事は人間が私利私欲によって摂理を脅かす行為は結果的に破壊をもたらす事に繋がる。
それは聖書で言うならばノアの方舟であり、バベルであり、十の災いである。
奇跡として産まれたハイブリッド羊人間を自分のものとし、母羊を殺し、自分達の暮らしを強要する行為は夫が殺されるという最大の悲劇をもたらした。
その深みには満足
個人評価:3.7
静かで不吉なオーラ。映画ウィッチの様な忍び寄る禍々さがある。
物語は積み重ねがなく物足りないが、映像に深みがあり、ホラーファンとしては楽しめた作品だ。
ただ羊から産まれた羊ではない何かとの生活を、もう少し怖く違和感のある世界観にしてほしかった。
羊を堪能した。
羊人間!
こわーい!!
役名が、Ram manで、まんまやーんっ!てツッコんだわ。
そして、よくわからなーい。
アイスランドの宗教的なものも絡んでるの???
それすら解らなかった…
みなさんの鑑賞録を楽しもう。
でも、嫌いじゃないのよね、この感じ。
不条理だけど考えさせられるのは悪くない
すごく演出が上手く、映像も綺麗でなかなかな監督だと感じました。意味ありげな冒頭のシーン。弟登場で一気に緊張が走る流れ。いい脚本家と組んだら傑作が生まれるかも!
キリスト教と繋がりを考えましたが繋がる部分と繋がらない部分があり消化不良です。単なる寓話と考えるのも浅いような気がしてます。時間旅行の話、弟の存在、母羊だけ羊小屋から出て来れるのなんで?アイツがアダが生まれてから何をやっていたのか?なんでそれなりの(銃を盗み撃つくらいの)知性があるのか?よくわからない事だらけです。
でも、あんな子が生まれたら誰でも普通の羊と同様に羊小屋で育てないと思います。
それと弟は観客、第三者視点での配置なのかもしれませんね。クズだけど1番ナチュラルな感情を持つ存在だったのかも。
アダちゃんのグッズ欲しい
いかにもA24が欲しがりそうな作品だ。過去にも複数あった評価がきっぱり別れる作品になるだろう。一応ホラーと名打たれる本作だが、分かりやすく怖いと思うシーンは一切なく、静かながら不気味な世界観となっている。いわゆる「雰囲気系」のホラーであり、ビクつきながら観るエンターテインメントとは違う感覚となる。だが、決してホラー初心者向きとはならない作品だろう。恐らく、トラウマにも似た感覚を覚えるか、人生の2時間を無駄にしたと思うかのどちらかになるに違いない。不気味な演出と広大なアイスランドの自然(住んでみたい)を芸術的な表現で描いている本作だが、上映開始から30分程はほとんど台詞が無く、ひたすら羊を育てる夫婦の日常が淡々と描かれている。続く静寂の中で夫が放った最初の台詞が、記事に書いてあったタイムリープの話。こちらは張り詰めた空気を感じていたのだが、その滑稽とも言える一言目に思わずガクッとずっこけそうになった。だが、この様な何気ない会話の中や演出の中でふと気になる物が挟まれる。そのシーンが何を意味しているのか、どう後半に生きてくるのか、理解する前に暗転していく。この様に細かいパーツを回収していくかのように淡々と日常が描かれていき、それらが張り裂けそうな不気味さで包み込まれ、非常に息の詰まる思いだった。冒頭に響く誰かの荒い息遣いから、今にも八つ裂きにされそうに思える羊たち。観客としては来るか来るかと身構えていると見逃しそうなシーンが複数存在する。個人的には映画は1人で楽しむべきと考えているが、本作は鑑賞後に答え合わせをしたくなる作品である。本作のジャンルを表すのにホラー以外の物が見つからないが、「怖くないのに怖い」や「何も無いのが怖い」と思ったのは本作が初めてである。テレビCMでは問題の子羊、"アダ"に服を着せ、二足歩行をする姿が写っている為、大抵の人が羊人間なのではと思うだろうが、本編ではその姿がなかなか写らず、しかもチラッとしか見せないという何とも意地悪な描き方を披露する。ネタバレしているものをこういう描き方をしたのも素晴らしい。映画においては説明不足というのは致命的な欠点だと思うが、その弱点を生かした構成には驚かさせる。そんな何かと初めてづくしだった本作だが、かなり実験的な作品にも思える。これは是非とも手元に置いておきたい作品だ。
人間は自然に生かされている
人間のからだをした羊が生まれるという特殊な設定の作品。
劇中の自然はどれも圧倒的なスケールで美しくもおぞましさがあるような切り取られかたをしており、人間がいかにちっぽけな存在なのかを度々感じさせられた。
様々な解釈ができる作品であると思うが、私には、人間は自然や動物を生かす存在ではなく、生かされてる存在なのである。というメッセージなのではと捉えた。
このような脳裏に刻まれるような鋭利な作品を体験するのも良いなと思えた。
何者?
羊の出産に立ち会った夫婦。異形、奇形の羊を自分たちで育て始める。はじめのうちは羊の顔しか映らず、どんな姿なのか興味を誘う。だんだんとどうやら身体はヒトだとわかってくる。夫の弟が突然帰ってくるが、驚いたでしょうね、いきなり羊が服を着て、普通にご飯食べてるんだから。異常に感じた弟はライフル片手にアダを連れ出し殺そうとするが、すでに愛情を感じてしまったようで殺せない。
ところで、この弟、どうもよく分からない。帰ってくる時に仲間がいたようだが、車から放り出されていたけど、どういった状況だったのか、兄嫁に色目を使うのもよく分からないし、夫婦の娘のアダが死んだことと関わりがあるのかないのか、どうもはっきりしない。
夫婦に可愛がられて育ったアダ。おじさんとも仲良くなって楽しそうなんだが、ふと3人から離れたり、鏡を見たり羊の絵を眺めたり、自分と他の人が違うことをどうやら感じ始めている様子。
ラスト、アダの父親が姿を表して、、、悲しむアダだが、本当の父親に手を取られて一緒に帰る。
そのまま終わってしまったので、あの後1人残されたマリアはどうしたんだろう。1人泣き暮らしたのか、アダを取り返しに向かったのか。アレはいったい何者なのか、他に仲間はいるのか?などなどちょっと消化不良。
予告編で観て、すごく興味が湧き、絶対観ようと思っての鑑賞。観終わった感想は、面白くなかったわけではないが、風船が萎んでしまった気分。消化不良だからかな。
【良かった点】 なんといっても画面いっぱいに広がる広大な自然描写。...
【良かった点】
なんといっても画面いっぱいに広がる広大な自然描写。ここは異世界?と思うほどの優雅で美しい背景をバックに、異形を愛する異常な夫婦、というだけで面白い。中盤旦那の弟が観客と同じ視点で話してくれるところはだいぶコメディ。説明をこれでもかと省略し、観客に想像させてくれる余地があるので観ながらあーでもないこーでもないと楽しめる作品。
【良くなかった点】
VFX技術がそこまで高いわけではなく、羊の娘の全貌が明らかになるところは人によってはノイズになるかも。また、全体的に静かに淡々とストーリーが展開するので、寝不足だと寝落ち必至か。
期待値のハードル
アイスランド映画、あまり多くは観られていませんが、中でも同じ「羊」を題材にした『ひつじ村の兄弟(15)』という作品が思い出されます。おそらく、アイスランド人の生活を支えるこの生き物は、映画などの作品にも「インスピレーション」を与えてくれる大事な共生者なのだと感じます。
割と長い期間、映画館でこの映画のトレーラーを観る機会が多かったような印象があります。それはおそらく、トレーラー内でチラチラと現れる「何か」のインパクトと、その「何か」への興味からなのでしょうが、実際本編を観終わってみると「期待値のハードル」をやや上げ過ぎた感が否めません。
3章からなる物語。まず第1章は、夫婦の営む牧場と生活、そしてその背景である広大な自然を、口数少なく、想像力を掻き立てる見せ方で期待を高めつつ、ある晩、ん?何かが起きたか??と、ミステリアスな展開です。うん、悪くないと思う。
そして話が動く第2章。一頭の羊からいよいよ「何か」が生まれます。そしてある晩、如何にも意味ありげに表れる「第三者」。1章のスピード感とは変わり、物語が動き出すとあまりにダイナミックな展開。いや、むしろあまりに説明がなく、当たり前のように見せられる強引さが。。(あ、前の男性イビキかき始めた)
いよいよ第3章。クライマックスですが、勿論ここでは触れないものの、、、そんな終わり方、ちょっとズルくない?
非常に雰囲気はあります。アイデアも見せ方悪くないと思うのですが、これを「完成品」だと言われるとかなり物足らず。ちょっと残念です。。。
母性愛
フライヤーの画が、キリスト教の聖母子像をかたどっているようなので、たぶん宗教的ネタが入っているんじゃないかと思っていた。羊飼いとか子羊のワードは聖書に出てくるし、主人公の名はマリアだし、クリスマスの日から始まるし。でも、物語の中でどう関わりがあるか、具体的にはわからなかった。
母性愛がやはり根っこにあるのかな。アダを生んだ母羊は、子供を探してしつこく鳴く。その気持ちは子供を失ったマリアも理解できるはずなのに、アダを自分のものにしたいがため、母羊を追い払う。マリアの夫も傷ついており、マリアがアダによって幸福を感じるとともに、彼も満足感を得る。この夫婦は、なぜアダが生まれたのかも、先々のことも考えない。愛ゆえに狂ってきてるのかも。
夫の弟の来訪で、平穏な暮らしが終わるのかと思いきや、意外に楽しくやっていた。ただ、兄の妻だというのにちょっかい出すから、強制送還。ええっ、弟なんのために登場したの〜? ついでに、デンマークとのサッカーだかハンドボールだかの試合観戦シーンと、ミュージックビデオは必要だったのかな。
アイスランドのラグナル・ヨナソン作「閉じ込められた女」という小説で、冬の情景が描写される。アイスランド山間部の冬は、ほとんど吹雪で、数ヶ月家に閉じ込められる。ほんの数メートルでも、遭難しかねない。アイスランドでは殺人事件は滅多に起こらないが、行方不明者と自殺者は多い。事故、遭難はもちろん、殺したとしても人里離れたところに埋めてしまえば、そうそう見つからない。それくらい厳しい土地で生きるのは、なかなかしんどいだろうな。ほんのちょっとの油断でも、生命が脅かされる。アダ(人間の方)が、何故死んでしまったか、川を探すという言葉に鍵がありそう。
本当は不吉な存在のはずのアダだが、やはりかわいい。花冠をかぶったところや、ぴょんぴょん跳ねるところ、猫がぴったり寄り添ってゴロゴロ言ってるところなんて、きゅんとするわ。この映画、動物のショットが効いている。本当は意味なんてないはずなのに、意味ありげに撮る。騙されてしまう。
天からの贈り物だと思っていたが、実は地獄からだったんじゃないだろうか。受け取らなければ良かったのかも。
予想を上回る謎だらけの展開。
アイスランドの羊飼い夫婦、イングヴァルとマリア。ある日、飼っている羊から、首から上は羊で身体は人間の雌の羊人間が産まれた。夫婦はその子にアダと名付け家族として育てる。
えっ!2人はその子、キモくなかったの?それから続く家族の生活は本当に普通の子育て。流石にアダは喋れないんだけどね。途中から現れるイングヴァルの弟ペートゥルが、色々やらかすのかと思ったら、兄嫁狙いくらいでアダとはいい関係。誰が父親なのかを明らかにしてラストかと思っていたら、まさかの!?
それにしても、この映画に出ていた、羊、ワンコ、ネコ、馬達、ちゃんと演技してたよね。表情見てるのが楽しかったです。でもストーリー的には伏線無回収で、疑問点はすべて謎のまま終了。終わった瞬間、ウソッ!て声が出ちゃった。
これぞ羊たちの沈黙、てか
リーアム・ニーソンの映画だったら、ここからスタート!てところで終わる。
(奪還!)
つまりエンタメ映画で分類すると何も始まらないまま終わった事になる。
この後どうやって話を展開させるか、映画学校の宿題にもってこいですね!
羊たち、犬、動物の表情があんだけ深淵で豊かなのに、
CGがスカスカで驚きを隠し切れませんでした。大減点!
んでこの格好って、つまりキリスト教が言うところの悪魔の姿をしていると言う事??
タロットの悪魔のカードもこんな感じだったような。
そして悪魔崇拝といえばイルミナティ
悪魔ちゃんの復讐(キリスト世界への)て事でよろしいですか?
深読みですね、だってそんな信心深い描写もなかったし。
じゃ、こんな山間部もイルミナティ支配しました!
て言う、めっちゃコスパの悪いデストロンの世界征服計画的な?
うーん、色々と思いを巡らす映画ではあります。
だって余白だらけなんだもん!
とりあえず家で見てたら倍速!
違和感を否定し、幸せを手に入れようとすることの不自然
予告編にネタバレ要素つめちゃった感じだけど、最後は予想できなかった。
家族と羊しかいない、アイスランドの静かで厳しい自然の中の全編にわたる不気味な雰囲気は素晴らしかった。
アダちゃんの登場は予想できていたのに、初めて全身が映るシーンはギョッとしてしまった。なかなか見せなくてうまいなあ。
ラストのマリアは不思議とスッキリしているように見えた。
アダちゃんは笑えもするし不気味でもあるしかわいくもある。
ある意味子供とはみんなそうなのか?
サッカーではなくハンドボール?
ほとんど外部の世界が描かれない中でああいうシーンにはホッとする。
実は一番共感できるのはクズかもしれない弟なのかもしれない。
アイスランド行きたい。
遠いけど言語難しいけど行きたい。
羊飼い夫婦の『スプライス』かと思ったら『パンズ・ラビリンス』でした
羊飼いの夫婦イングヴァルとマリアが飼っている一匹の雌羊から産まれたのは羊ではありませんでした、という話。“アダ“と名付けられた少女はすくすくと成長し、という辺りまではヴィンチェンゾ・ナタリ監督の『スプライス』みたいかな程度の期待をしていたのですがそれにしては様子がおかしい。ちょっとしたサスペンスはあるもののすぐに解決してしまうし、途中から物語に加わるイングヴァルの弟ペートゥルが物語をまぜかえすかと思いきや全然そんなこともない。雄大にも程があるアイスランドの牧羊地での淡々とした生活をボーッと眺めていると微かな前振りの後に訪れる唐突な展開にビックリ・・・要するに、これは説明的な描写を一切排除した『パンズ・ラビリンス』。アダはオフェリアなんですね。これはビックリしますわ。
マリアを演じるノオミ・ラパスの存在感が圧倒的ですが、それと拮抗するのが馬、羊、犬、猫といった動物達。彼らの“演技“の重厚さにも呆気に取られます。
とにかくアイスランドの風景が壮絶なので、スクリーンで観るのは大正解でした。
北欧スリラー
ボーダー、ハッチングときてこれも異形のものが出てくるけどそこに本質は無さそうな感じの作品。
とにかく情報が少なくて想像するしかない…
夫婦の間には娘がいた。
何かしらの理由で子供が作れない。
何か手術したから?流産?子供が亡くなった事でのショックでセックスレス?
とにかく時間を元に戻したいと思っている。
弟とは元々恋人関係にあった様に思う。
夫より前か後かはわからない。
母としての嫉妬からくるストレスで本当の母を殺してしまう。異形のモノと知らないふりで穏やかな家族生活が始まる。
そこへ弟登場。不穏な空気が流れ始める。
何かありそうな弟を追い出したタイミングでアレの父が戻ってくる。ワンちゃんと優しい旦那が…
弟が来たタイミングといなくなるタイミングで事が起きたのは何か引っかかる。
ただ単に因果応報な話じゃなさそうな気がするが、
これ以上はちょっと読み取れませんでした…
でも狂った母という部分ではハッチングと似てるなとも感じた。あとロケ地が美しかった。
リバーオブファンダメント
マシューバーニーの前述作品を見た時と視聴後の感覚が同じ。というのは言い過ぎだろうか?本質的には過ちを犯している白人世界もしくはキリスト教世界への警鐘だと僕は感じた。そもそも本作を見る上で、キリスト教における羊の意味合いを知っている方知っていないかでも全然受け取り方は変わるのであろうが、そもそも人間には純然たる羊飼いにはなれない。と言うことを伝えているのだと理解すると結末までの経緯もくっきりはっきりわかって味わい深いはずだ◎良い悪いは別で見ておいて損のない映画だと感想を残したい。
人間は喪失を産めるために代わりとなるものを見つけると盲目的にそれを受け入れきっちりと埋め合わせを行うが、その埋め合わせが本当に正しい埋め合わせで有るのかは見直す必要が有る。これが本作から僕が得た格言
キリスト教的なモチーフが潜んでいる不気味な超自然北欧ホラー
この映画は何かとキリスト教的なモチーフが散りばめられていたように感じました。
まず、羊と羊飼いという時点でかなりキリスト教っぽい。
さらに、主人公の名前がマリアだし、生まれた半羊半人の子どもの名前はアダ(おそらくアダム)だし、とにかくキリスト教のモチーフとして読み取れそうな要素が多く散見されていたように思います。
この映画はストーリーもかなり衝撃的でしたが、やはり作り込まれた絵画的な画作りを楽しむ作品な気がしました。
まず、左右対称のシンメトリーを意識した構図。
被写体にカメラがじわじわにじみ寄っていくような不気味なショット。
横スクロールで移動する被写体の真横にピッタリ付きながら撮影しているドリーショット。
そして、雄大な山岳を映し出した超ロングショット。
まるで美術館で展示されている絵画のように作り込まれた画作りを見ているだけでも元は取れた気がします。
最初はあれほど不気味な存在だったアダくんが、終盤に進むにつれて段々と可愛らしく見えてくるのが不思議でした。
ちょっと大人しめの男の子って言われても違和感がないレベルまでには半羊半人であることを意識しなくなっていました。
あとは何と言っても、ラストの衝撃的な登場人物。
えっ、こうゆう映画だったの?って、結構普通に度肝を抜かれたのでまだ観ていない人がいたら是非劇場でこの衝撃を楽しんでください。
家族とは?正義とは?
見なれない雄大な自然の中で、言葉少なに進むファンタジーはまるで海外の絵本のよう。だからこそ、マリアやイングヴァルの佇まいからはもちろん、羊や犬や猫の表情からも何かを読み取ろうと凝視してしまう。子を失った夫婦の過去を知り、アダの可愛さも手伝って、彼ら家族を歪ながらも幸せな形と捉えてしまう。
そして、明らかな違和感を平然と受け入れて進む展開に、観る側もどこかネジが外れてしまうのだろう。
(以下ネタバレという名の妄想)
「俺は羊と“ままごと"なんかしないぜ」なんて兄の妻に関係性を迫る弟のセリフや、何かを後悔するような素ぶりを見せる兄。アダを天からの贈り物だと濁すからこそ、その出自がミスリードされてしまう。セリフが少ないからこそ、その一挙手一投足から余計な思いを巡らせてしまう。
半人半獣。母が羊なら父は誰?
アダの手がイングヴァルからすり抜けていくシーンに「可愛そう」なんて思ってはいけない。実の父が拐われた娘を取り戻しに来たのだ。
人間じゃないから悪いやつ?
いや違う。母を殺し、羊にウールのセーターを着せ、美味しそうに食べる草を取り上げる、掴むのはいつもアダの左手。そんな自分勝手な夫婦から我が子を救ったヒーローだ。半獣界のジョン・マクレーンじゃないか。
自らの正義は、相手からすると意外と悪だったりするものだ。迷える子羊は、まるで悪魔のような見た目の父の大活躍で本来の家族のもとに帰った。妻の仇も同じ銃で討った。それだけの実にシンプルなお話が、人間のエゴと偏見によって理不尽で不条理なストーリーに変わり果てる。人って怖い。そしてその緻密な構成に拍手。
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