「突き放されてモヤる」雨を告げる漂流団地 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
突き放されてモヤる
子どもたちの感情の起伏、その絵と声の演技など、実に豊かな表現はさすがの石田監督作品。
『ペンギン・ハイウェイ』の海の中や水だらけの街を進むシーンを120分みたいな異次元迷い込み冒険系で、世界はファンタジーなのに、子どもが次々と傷ついていき、生死ギリギリの冒険になっていくのが、『メイド・イン・アビス』にも似た残酷なリアリティを伴うものでした。
ただ、子どもを描いているから仕方ない部分もあるけれども、意地の張り合いや、気まずさからの逃避が長すぎる。
対して、団地が漂流した理由や、のっぽの正体などを説明せずに、「感じてね」と突き放したところが、「わからない」「モヤっとする」みたいな感覚を生んでしまう。
主題は、子ども同士がちょっとした言葉の行き違いで、お互い謝れずに気まずくなることと、それを突破して分かり合えることにあり、漂流の理由は明確じゃなくとも快感ポイントはあり、映画として成り立ってはいますが……
脚本の拙さ、刈り込みの甘さが際立ち、後半がダレてつまらなく感じてしましました。
感情のやりとり部分の段階を区別し、漂流の理由をきっちり描き(例えば「落下して死にかけた女の子を助けたいと願った『付喪神』の神通力とかでもいいんだ)、85〜90分に収めたら、多分名作になっていたと思う。
それだけに、もったいなかった。
このままだと配信で倍速再生向き。
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