「最高(に残酷)な映画」恐怖の報酬(1977) ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
最高(に残酷)な映画
めちゃくちゃ面白かった。
序盤、出発するまでが長いしトラックの気配もないので混乱し、つい「ニトロ 運ぶ 映画」で検索してしまうほど。。
でも油井大爆発からの運転手試験、そして乗車、と次第に盛り上がっていき、次から次へとどうクリアしていいかわからない試練が立ち塞がってくると、もう完全に引き込まれていた。
ゴブリンを思わせる謎のシンセ曲(タンジェリン・ドリーム)も謎に画面にマッチして特異なイカレ感を醸成してくる。
そのムードと裏腹に、カースタントの精度がやばい。
車が回転するようなスピーディな今風のとはまた違う、ゆっくりノロノロが生み出すサスペンス。すごい技術なんだな。
克明な描写の裏にある苦労を想像するだに、この監督は本当にドSなんだなと確信。
吊り橋の場面とか、ついジュラシックパークを思い浮かべてしまうけど、また違う独特のテンポ感。
スリルを煽るカメラワークと非情なまでにキレのあるカッティング。
南米の日雇い現場は建物も服も車も徹底的に粗末で、それだけで人の命の軽さが伝わる。カイジを思わせるような圧倒的どん底感。
筋書きはごくごくシンプルで、西部劇とか戦争物にありそうな「実現不能なミッションをクリアする」タイプのストーリー。
しかも、それがただ目的地まで荷物を運ぶだけで、こんなにずっとかぶりよりにさせるのがすごい。
銃の存在とか爆薬の知識とか、序盤で起きたことが無駄なく意味を持っているのもよかった。そういう部分はめちゃくちゃロジカル。
もっとも、社運をかけたプロジェクトなのに、なんでトラックがボロすぎない?とか、そもそも爆薬をあんな環境の悪い場所に保管してるのはおかしい気もするけどまあ気にならない。
そして登場人物は容赦なく追い込まれるわけだけど、たぶんそれは画面の外、現場でも相当なものだったんじゃなかろうかと。
男同士が仲良く馴れ合うこともなく、糖分ゼロの心底ドSな映画でした。。