劇場公開日 2018年11月24日

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「足が突っ張ってしまう感」恐怖の報酬(1977) kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0足が突っ張ってしまう感

2019年1月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 映画館ではなく、どこかで観た記憶があるのだが、やはり地上波で放送されていたのだろうか、多分カットされまくりバージョンを。オリジナル仏版は好きな映画の一つだけど、このアメリカ版も当時の時代を反映させていて、なかなかの社会風刺要素も含んでる。そして映画館で観ることができるということは、前の座席を蹴ってしまうかもしれないほど、ブレーキを踏む足に力が入ってしまうということ。CG満載の映画ではなかなか味わえなかったため、久しぶりの感覚。

 序盤は南米に集まる前の4人の男たちが描かれる(予告編でもわかる)。シオニストの殺し屋ニーロ、アラブの爆弾テロリスト、マルティネス、フランスの投資家セラーノ、アメリカのアイリッシュマフィア、ドミンゲスだ。特にロイ・シャイダー演ずるドミンゲスは神父殺しのギャング団の運転手をしていて事故を起こすこともトラウマとなっていたハズで、運転手心理がとてもシビアに伝わってくる。かと言って、ナビをする相方の方もちょっとした振動で大爆発するために慎重にならざるを得ないという状況なのだ。

 南米奥地の油井近くの町。ワケありのならず者たちが集まってしまう掃きだめのような町ではあるが、犯罪者が身を隠すにはうってつけの場所なのだろう。前述した4人の男たちも警察やマフィアのボスなどから逃げてきているのだが、逆に町から抜け出そうと必死に働いても金が全く貯まらない、タコ部屋みたいな閉ざされた空間なのかもしれない。そんな時、独裁者に対抗するゲリラによって採油現場で火災が発生し、ニトログリセリンによって爆発を起こして消火することが決まった。ヘリでは振動が大きく運べず、おんぼろトラック2台で200マイルほど先の火災現場まで輸送するのだ。報酬は一人1万ドル!渡航するには十分、さらに1年遊んで暮らせるほどの額だ。皆が立候補するのだが、こうして4人が選ばれた。

 おんぼろトラックの修理から始まるリアリティ。そして保険のためトラック2台に別けるという非情な作戦がおぞましい。出発前、殺し屋ニーロとテロリスト・マルティネスと諍いが起こる。オリジナルにはない、イスラエルとパレスチナの中東戦争の縮図がここに描かれていた。公開当時にはカットされていた、この宗教戦争の縮図も面白いが、こんな仲の悪い二人は別々にしてやれ!てなことで、あっさりAチーム、Bチームに分かれてしまった。

 こうした構図を踏まえた上で、Aチーム、Bチームの運転を観ていくとさらに心理戦が炸裂するように思える。「出し抜いてやれ」とか、間違った道を選びやがれ」とか、ならず者たちの醜い争いまでもが見え隠れする。特に豪雨の川の吊り橋のシーンは凄かったのだが、金がかかってる映画だと思えば、あの傾き方じゃ落ちてるだろ・・・などと、緊張感も凄まじいのだが、同時に一種の安心感も伝わってきた。そして待ち受ける次なるトラップは倒れた大木。絶望感漂うシャイダーの演技をよそに、爆破の専門家マルティネスは「これしかない」とつぶやく。信管と時限装置、原始的森林地帯でよくこんなことが思いつくもんだと感心しながら、爆破しても道が開かなかったら?などと突っ込んでもみたくなるが、この細かな芸がこの映画の中で一番好きなシークエンスだった。

 4人で切り抜けたために中東戦争も一時休戦。4人で金を分け合おうぜ!と仲良くなった途端にBチームのタイヤがバースト。虚しい。さらに現地ゲリラによる殺戮だ。虚しい。しかも、思想は違えどゲリラにやられてしまうところは皮肉としか言いようがないニーロ。最後に一人残されてしまったドミンゲスだったが、今度はガス欠!

 もう大満足なんだけど、やっぱりオリジナルの方が好きだな。こっちのリメイク作品はやっぱり映画館で観るべき体感映画なのかもしれません。

 また、どうしても気になる点も残ってる。

 神父を殺したら、それがボスの弟だったという運命のいたずらは面白いのですが、結婚式で花嫁の左目が殴られた痕が痛々しく映っていたのですが、これはそのボスに殴られたってことでいいのでしょうか・・・新郎がボスの子分かな?誰か教えてください・・・

 それと、フランスでポルシェで自殺した男も気になる。脱税の金額もポルシェを売ってしまえば、半分くらいになる気がしたのですが・・・

kossy
アンディ・ロビンソンさんのコメント
2023年9月23日

今更のコメントですが、この作品の全体に、象徴的に運と不運(裏目)、善と悪、表と裏、上辺と内心といった事が散りばめれれているのでしょう。
神聖な筈の結婚式の花嫁の顔に夫のDVの痕跡があらわに。
神の名の下の教会でのギャングと繋がったノミ行為。
主人公の運命も冒頭の“神聖な場所”に対する行いと無縁では無いとも

短縮版ではこれらが水の泡ですね….

アンディ・ロビンソン
NOBUさんのコメント
2021年9月15日

今晩は
 あくまで、推測ですよ。
 ストーリー展開は粗いのに、ヤッパリ引き込まれましたね。
 で、今日は寝不足です・・。では。

NOBU
NOBUさんのコメント
2021年9月15日

今晩は
 ”結婚式で花嫁の左目が殴られた痕が痛々しく映っていた”
 ここ、2回見ても、監督の意図が良く分からず。
 全編を通じて、良く分からない繋ぎが多いし、不思議な現地人のお祖母ちゃんが良くアップになったり・・。
 けれども、引き込まれる映画でした。
 尺の長さを感じない映画は、オモシロイ映画であると勝手に思っているので。では。

NOBU