劇場公開日 2022年6月3日

「ククルス・ドアンの島が劇場版になるという時点で謎で、劇場に行くほど...」機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5ククルス・ドアンの島が劇場版になるという時点で謎で、劇場に行くほど...

2022年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ククルス・ドアンの島が劇場版になるという時点で謎で、劇場に行くほどじゃないなと思っていた。primeまで待とうかと思っていたが、友人が劇場でBlu-rayを買ったということだったので、せっかくなので視聴することに。

その前にアニメ版を見直すことにした。10年以上前に見た記憶があるものの、全然覚えていなかったのだが、作画が酷いなんてもんじゃない。どこを見ているのか分からないリュウ。顔だけでなくボディも崩れまくったガンダム。旧ザクのように細いザクII。出撃したガンダムの手持ちがビームライフル→バズーカ→ビームライフルと目まぐるしく変化するシーンはさすがに二度見した。普段作画なんて気にしない自分でも「え?」と思うレベルである。

しかしまぁ1話完結にしては綺麗にまとめられていて、特に作画以外は違和感なく観ることが出来た。

ところがどっこいこの劇場版はどうだ?

子供が多すぎてこんな岩だらけの島でどうやって自給自足してるんだ?という疑問が沸いて来る。
滝まであったアニメと違って、スコールで喜ぶなど水すら希少そうな環境。
呑気にアニメ同様クワで土を耕してる場合じゃない。

せっかく尺が5倍くらいになってるのに無駄なシーンが多すぎる。これだけ時間があるのだから、ドアンが脱走兵になるまでのシーンをもっと入れるとか、意味深に何度も「ドアン」と呟かせていたセルマ・リーベンスとの関係を出すとかもっとやりようがあっただろう。しかも小説版ではキャラクターに深みがあり、サザンクロス隊というやられ役でしかない連中にも魅力があるようだ。特にエグバなんかは何故ドアンを憎むのかその理由も明らかになっている。その情報を知り、自分は小説版の方に興味を抱いたくらいである。

無駄に多いヤギの描写シーンや、井戸を直したり、灯台を直したり、そんな日常生活に尺を割いたせいで戦闘シーンは控えめな上に、ホワイトベース隊の扱いが酷い。いくら歴戦のサザンクロス隊が相手と言っても、それはないだろという散々な状況。また、「一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか!」のシーンを実際にやってしまうのは正直ドン引きもの。なんでこのシーン入れたんだ?

アニメ同様の「あなたの体に染み付いている戦いのにおい」も、脱走兵の追撃というお題目があったアニメと違い、島の秘密なんて要素を足したばっかりに要らない感じになっている。そもそも環境的に恵まれた場所でもないこの島に連邦、ジオン双方に敵対してまで留まる意味あるの?という感じだ。まぁ脱走兵の追撃が目的なら、ジオンが見ていないところでザク沈めても意味無いじゃんってのはアニメもそうなのだが。

ネタバレしない範囲で書いたが、全体的に残念なんてもんじゃない。設定に整合性が取れていないのだ。アムロが行方不明で何が起こるか分からないのに、そんな島にフラウ・ボウだけじゃなく、カツ、レツ、キッカまで連れて行く。シャアがどうのなんて丸々カットでいいし、島の秘密や戦略のことを考えたら少なくともサザンクロス隊だけに任せるレベルじゃないだろう。最終決戦はヤギに誘われて全員で観戦。流れ弾とかちょっとは考えろよと思ってしまう。という訳で個人的には残念極まりない出来だった。

森林熊