劇場公開日 2022年1月21日

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「其々の『さがす』を見つめる物語。」さがす コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0其々の『さがす』を見つめる物語。

2022年11月20日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

幸せ

内容は、日本三大ドヤ街の一つ大阪は西成区に住む二人の父・原田智と中学生の娘・原田楓を中心に、とりまく各人の得難いものをさがす物語。実際にあった事件の座間9人殺害事件・相模原障害者施設殺傷事件・リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件を基盤にじゃりんこチエちゃん要素を振りかけた様な作品。印象に残った言葉は前半の『先生!嘘くさいねん!(泣)』周りを取り囲む大人の汚さと偽善者具合に主人公楓が嫌悪する場面。中盤の『お父さんと同じ臭いがする(泣)』自殺志願のムクドリとの多目的トイレで死装束に着替える時に亡き妻を智が思い出し、ムクドリは父を思い出してお互い違う意味で泣く場面。終盤の『やっと見つけた!(泣)』主人公の楓が父のした事の全貌を理解し更に深い愛情で父親の智を認識する場面。非常に愛情たっぷりの表現と会話としての卓球シーンやこれから塀の中で過ごすであろう父に向けての愛情を掛けた呪いのシーンは、見ていて爽やかさと同時に苦しさをも内包して重量感のある終わりは良かったです。印象に残った場面は、小津安二郎監督を思い出す様なローアングルからの煽りは緊迫感があり苦しく見れて面白く見れました。其々の探し物を問われている物語。父は、最愛の母を自分の手で殺したかった程の苦しい思いをみつけた。娘は、父への愛情と狂おしい程の母への愛情と自分への隠された思いをみつけた。殺人鬼の山内は本当に死にたい人をみつけた。ムクドリは、確実な現実的死をみつけた。印象に残ったのは、自殺未遂をしていた妻を玄関越しにじっと見つめて安堵している自分に気が付き自殺失敗の後一息置いて駆けつけるシーンは胸にグッとくるものがありました。自殺幇助に関しては善悪の基準は人其々だとは思いますが、違法なので悪いと言われているだけだとは思います。死に対しては、慈悲の死や人助けになる国もあるので一方的に善悪を論じるべきではないと思いますが、一回は死ぬので其れ迄は生きてみるのも選択肢の一つでは無いかと思いました。でも殺人鬼に殺されて弄ばれるのはやだなー。人間喉元過ぎれば熱さ忘れる手段が目的に変わる浅ましさも上手く表現されてた様に思います。自分なら周りの人が死にたいと言っても自分の為に無理やり生かすかもしれませんし、結果自己満足で大人は嘘くさい矛盾で一杯なのかもしれません。映画を最後から作るプロットは基本通りに、内容を濃くしすぎて突っ込みどころが沢山有りますが、非常に上手く纏まった面白い作品でした。やはり大衆商業映画。最後には父と娘の心からの対話が、お互いの幸せを見つけ出せてる場面はホッコリさせていただきました。

コバヤシマル