劇場公開日 2022年1月21日

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「3人は何を「さがした」のか。」さがす にゃろめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.53人は何を「さがした」のか。

2022年5月23日
PCから投稿

すばらしい演出でした。
まずは、佐藤二朗という役者。
イメージとしてはコミカルな役者と、ダークなテーマ。
そして、大阪という街。
ダーク過ぎず、コミカル過ぎず、絶妙なバランス。

「映画は映像で説明するもの」として絶妙な演出。
音楽と、ホームランバーと、モルツと、卓球。
特に卓球ですよね。
家族の絆としての卓球。
母の命を奪う、閉じられた卓球台。
妻への未練を断ち切る、山内に踏まれた卓球玉。
ダークサイドとノーマルサイドを隔てる卓球ネット。

登場人物を「善と悪」に単純に分けていいのか。
父親は元々ダークサイドの人間なのか、
妻と娘がとどまらせていたのか。
元々ダークサイドの犯人山内は、
父親原田やムクドリとの出会いにより、
ノーマルサイドに移行する機会はあったのか。
いろんな場面でダークサイドに落ちずに
踏みとどまった娘は、(この後)シスターのもとで
無理やりに善を押し付けられ、反発でダークサイドに
落ちはしないだろうか。

描かれていない(あえて描いていない)部分を
あれこれ考えられるのがいい映画だとしたら、
本作の演出は絶妙としか言いようがない。

ひとつだけ救いがあるとしたら、
やはりラストシーン。
卓球ネットのクローズアップ。
娘の「勝った」というセリフ。
今後、何があってもネットの向こう側
つまり父親が引き込まれてしまったダークサイドに
落ちずに生きられる強い人に成長した。のだ。

という、私なりの解釈。

にゃろめ