「「本当に死にたい人はいなかった。」」さがす せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
「本当に死にたい人はいなかった。」
連続殺人犯を見たと言ったその次の日に失踪した父を探しに、職場に行ったところ青年が父の名前で働いており、娘の父親大捜索が始まる話。
まずサスペンススリラーとしてとても優秀で、冒頭のカナヅチ(?)を振る父親のシーン、父親の服を着た足が倒れているシーン、白い靴下が全部繋がるところ気持ちよかった。それだけじゃなく、その先にもちゃんと結末があるのも良かった。
そして実際にあった事件をモデルにしてるのも◎。この映画を見るまで座間事件のことは完全に忘れてたけど、SNSを使って自殺志願者を集めていた犯人が「死にたい人なんて1人もいなかった」と言っていたのはめちゃくちゃ鮮明に覚えている。
死にたいとSNSに書いていても、マイナスの気持ちを外に出していることである程度自分の気持ちを浄化する儀式になってる人も多いはず。SNSの投稿だけを見て自殺志願者の自殺を手助けすることが良い事だと信じきってしまった父が、何ともSNSネイティブ世代じゃないおじさん感。SNSはその人が外に出したいものを出してるだけで、全てではないのに。
あと、性的欲求の気持ち悪さも表現されてて良かった。犯人は恐らく"白い靴下を履いた死体の足フェチ"でそれに性的興奮を覚えるタイプの人間。それ自体は全く理解できないけど、私にはエロDVDを大量にコレクションしてる田舎のジジイも付き合ってるならおっぱい見せてと言ってくる少年も同等に気持ち悪かった。
でも、田舎のジジイは誰も傷つけてはいない。それはちゃんとポルノをポルノとして消費しているからで、その欲求を現実世界に持ち込んじゃいけないのに持ち込んでるのが犯人と娘に片思いをする少年。
そう思うと、自殺欲求をSNSに書くという行為は、田舎のジジイみたいに欲求をその中で解消させてるようなもので、SNSでの自殺欲求を現実世界に持ち込ませようとするのは、ポルノの境界が分かっていない性犯罪者と同じようなことじゃないかと思った。