「うーむ、一味足りない。コクが足りない。」さがす バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
うーむ、一味足りない。コクが足りない。
「岬の兄妹」の片山監督の作品でダーク(っぽい)二郎さん。期待しないはずがありません。この期待感は二郎さんの監督作品「はるヲうるひと」のそれに似ています。そして、観賞後の「あぁ、残念、足りない」って気持ちも似ているとは。
オープニングからは想像もできないような結末への展開は、物語としての醍醐味が非常にあります。おー、そんな展開かぁって。それに設定・背景がなかなかの暗闇設定。私好みの人間臭くて、ドロッとしたやつです。さらに見進めていくと作品がちょっとずつ、ちょっとずつ味変していくんですね。巧みですよ、その展開。さらに、見せ方(答え合わせ方式、または検算方式と僕は呼んでます(笑))が意外性を演出できているかなぁって。またユーモアの差し込み方もうまかったなぁ。笑の裏側のシビア描写とかね。
でもなぁ・・・でもなぁ、最も大事な心情描写を怠ってませんかね?ジェットコースター展開だからでしょうかね?出来事に人物が振り回されているからなのか?心情の上に成り立つ行動に見えないのです。一番キーになる父親の気持ちが少しも伝わってこないのです。最も大事な彼の心情が!もちろん、その展開は驚愕ではありますが、「なぜ!?」が無いから薄いのです。すごく。だからかなりの不満なんです。
(以下不満の根本を書きますが、ネタバレ中のネタバレですので、これからご覧になる方は絶対に読まない方がいいです。)
父親が殺人の手引きをし、結局再度手を出すというところの根拠が見えないのです。快楽殺人に目覚めたってことだと推測しますが、そこを描かなかったのはなぜなのか?わからないのです。なぜ彼は再びSNSにアクセスしたのか?少なくとも狂気に目覚める、快楽に目覚める描写は必要だったのでは無いでしょうか?そうでなかったら、厄介な過去を捨て、そこそこの懸賞金を入手し、愛する娘との生活を大事にするはず。そーいう父親として描かれてきたと考えます。でもなぜアクセスしたのか?わからん・・・
さらに、父娘の関係描写が薄いんだよなぁ。ラスト、父の関与を知った娘のとる行動がわからん。それを選択する娘かなぁ?って。自ら通報し、父親への親愛も示す描写はただ「感動シーン作りたいだけ」に見えるんです。うっすいよなぁ。
さらにさらに家族が描かれていないところも違和感。母の介護に忙殺され心を削っていく父親と娘の描写が全く無いのが不自然なのです。母のおかしな死を娘はおかしいと思わなかったのだろうか?死にたいと願う妻を介護し心が張り裂けていく父を娘はどう見ていたのか?いや、母を娘はどう思っていたのか?てかさ、娘は看護していなかったの?わからん・・・。母がいなくなってから父娘の関係性はどうなったのだろうか?全く見えない・・・・わからん。
父親のスマホの顛末もなんか違和感です。見られたら困る内容やりとりしてるのにパスワードロックしてないって・・・ありえるかな?スマホ見つからなかったら、やばい情報あるんだから回線停止しないかな?・・・何よりも、なぜすぐに父親にスマホ渡さないの?なんでずっと娘が保管してるの?おかしくない?わかりやすく事実発覚させるための手段にしか見えないなぁ・・・なんか安易。
兎にも角にも、父と娘の心情、娘の心情が全く見えてこなくって・・・唯一見えるのは父親のことを娘は大好きってことだけ・・・ただただ、ジェットコースターヒューマンドラマにしか見えなかったってことです。悲しい結末だなぁ〜って思うけど、心が動かない作品でした。人物の心情が伝わらない故。商業映画だから後味を悪くさせなかったのかな?狂気を見せなかったのかな?
「エグい風」映画でした。残念。期待していたのになぁ〜。